古民家で民泊をする際の注意点、内覧時のチェックポイントは?

古民家は日本の伝統的な建築や生活様式を味わえるため、外国人観光客を中心に人気があります。古民家をきれいにリノベーションした一棟貸し宿には一定の人気があり、高単価を狙えます。

しかし古民家ならではの注意点がたくさんあるため、物件選びは慎重に行うほか、計画も綿密に立ててチャレンジする必要があります。この記事では、古民家を民泊に活用する際の主な注意点やチェックポイントについて解説していきます。

※この記事における古民家は、「建築基準法が施行される前に竣工した戸建住宅」という定義としています。

建築基準法に適合していない可能性が高い

建築基準法が制定される以前に建築された戸建住宅は、法律の改正により現行法の規定に適合しなくなった「既存不適格」、もしくは必要な届出や許可を経ずに増改築を行った場合などの「違法建築」である場合も珍しくありません。後者の場合は、違法部分を是正しなければ民泊営業を行うことはできないため、十分に注意が必要です。

以下、民泊新法(住宅宿泊事業法)で民泊を開業する場合の主な建築基準法の確認ポイントなどを解説します。

居室には窓がなければならない

居室とは「居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室のこと」です。民泊においては、寝室やリビング、キッチンなどが当てはまります。

この居室には、外気に接し、光が一定量以上入る窓を用意しなければなりません。窓のない部屋は「無窓居室」という扱いとなり、家主やゲストが寝泊まりする寝室などとして利用することができなくなります。そのため、納戸(倉庫)として申請する必要があり、当然ながらそこにゲストを宿泊させることもできません。

階段の寸法

古い家で、非常に急で昇り降りが怖い階段を見たことはないでしょうか。建築基準法では階段の幅や蹴上げ(一段の高さ)、踏面(一段の縦幅)のそれぞれの最低限のサイズを決めていますが、それがない時代は狭い空間に無理やり階段を設けることが多かったため、はしごのような急階段が多かったのです。

建築基準法上適法だとはみなされない階段は、改修し必要な寸法を確保することが必要です。ただし物理的に改修が困難なケースもあるほか、まともにやり替えると高額な投資になってしまうため、物件の内覧時には実際に階段の寸法を計測しながら注意して確認することが必要です。

違法な増改築があるかどうか

面積が10㎡を超える増改築は、行政に確認申請を行うことが必要です。しかし、それ以下の面積の増改築だからといって好きにやって良いわけではなく、建築基準法の規定に基づいて行う必要があります。

しかし、古い家ほどよく見られるのが、違法性のある増改築です。10㎡超の増築にもかかわらず確認申請や登記を行っていなかったり、居室の窓を潰すように増築することで無窓居室が発生していたり、増築によって建ぺい率や容積率をオーバーしてしまったりするケースなどが見られます。

また隣地に越境して増築がなされるケースもあり、その場合には民泊以前に隣地所有者とトラブルになる危険性もあるため、物件取得前に必ず確認しておきましょう。

旅館業の場合は建築士に相談する

民泊新法では建物の用途が住宅扱いになるため、上記のようなポイントを押さえておけば、後はそこまで気にするポイントは多くないと言えます。 しかし、旅館業法の許可を得ようとした場合は話が難しくなります。

旅館業法の場合、建物用途は「ホテル又は旅館」に該当するため、通常の住宅の構造設備では要件を満たせない場合があります。用途変更(200㎡以下の場合は、行政への申請自体は不要)に必要な要件は数多く、また建築課へ説明に行く際にも詳細な建築図面を持参して相談しなければならないため、素人で太刀打ちするには非常に困難です。

費用はかかってしまいますが、リノベーションを行う工務店などの建築士に相談して、建築基準法関連の相談や手続きも行ってもらうようにすると良いでしょう。

消防法の規定もチェック

古民家物件は消防法についても確認が必要なポイントがあります。

キッチンコンロはIHが無難

あまり多く見られるケースではありませんが、キッチンの床壁天井が準不燃以上の材料で施工されたものになっていない物件もあります。この場合、火が出るガスコンロを使用することができないため、IHヒーターを使うことになります。

なお、床壁天井が準不燃材等であるかどうか定かでない場合もIHヒーターにしておく方が良いでしょう。消防署は明確に基準を満たせていると判断できない限り、ガスコンロの使用を認められる立場にはないからです。

ただし、古民家ではIHヒーターの存在を考慮していないケースが大半なので、専用コンセントの増設なども必要になる場合があります。

その他の開業に必要な構造・設備

その他、例えば旅館業を取得する場合には、トイレに手洗い設備が必要なほか、ボットン便所では営業が不可能となるなど、注意すべき点がいくつかあります。以下、一例です。

  • 誘導灯、非常用照明導入時に電気工事費用がかさみがち
  • 建物が未登記の場合、表題登記を求められる場合がある
  • 井戸水の場合は水質検査や行政への届出が必要

建物としてのマイナスポイント

その他、古民家ならではの建物の構造上の問題点についても解説します。

断熱性・気密性が低い

古民家の断熱性や気密性は現代の建物に比べて低くなります。そのため夏は暑く冬は寒い、暖房や冷房が効きづらい、と言うデメリットがあります。

対策としては、全てのサッシを気密性の高いものに取り替えたり、天井や土壁などを剥がして断熱材を施工したりする必要がありますが、これらを全て行うと投資額はかなりのものになります。

遮音性が低く振動にも弱い

また古民家は木造であり、壁も重みがあるものではないため、遮音性が低く、隣の部屋や上階からの音が響きます。 また振動にも弱いため、子供が走り回るなどした際にはどうしても音と振動が気になります。

もちろん耐震性能も現在の建物と比べて低く、現行の耐震基準を満たしていないため、耐震改修工事も行いたいところです。

修繕コストが高い

どれだけ丁寧に使っていたとしても、古民家は頻繁に修繕が必要になるものです。 どんな建材も年数が経てば劣化しますし、建物は傾いたりもするので、つど修繕や改修を行う必要があります。物件を内覧した時点では大丈夫そうでも、その先すぐに修繕が必要になるケースも多くあります。

古民家で民泊を行う際は、修繕計画をかなりシビアに立てて、余裕をもったキャッシュフローを意識するとよいでしょう。

害虫に注意

古民家は木造かつ至る所に隙間があるため、害虫が入り込みやすい作りになっています。特に注意したいのが蚊、ゴキブリ、シロアリ、ムカデなどです。

中でもシロアリは非常に厄介で、放置しておくと床がたわんでいったり、建物の強度が下がったりするため、もし建物に巣食っていたら、すぐに駆除し防蟻工事も行う必要があります。その他の防虫対策に比べるとかなり高額になってしまうため、シロアリがいないかどうかは内覧時にチェックしておくことが欠かせません。床下や柱に蟻道が無いか、床のきしみがあるか、などを漏れなく確認しましょう。

なおその他の害虫対策としては、建材の隙間をテープなどで塞いだり、防虫剤を撒いたり、ホウ酸団子などの群れごと害虫を退治できるアイテムを設置したりするなどで対処しましょう。蚊がいなくなるスプレーブラックキャップゴキジェットプロはお勧めです。

まとめ

古民家は日本の伝統的な建築や雰囲気を楽しめるため、外国人を中心に高い体験価値を提供できます。 きれいにリノベーションした美しい古民家は、日本におけるハイグレードな宿泊施設の中でも定番のアセットタイプの一つです。

しかし、古民家には民泊を行う上で注意すべきポイントがたくさんあるため、物件選定は慎重に行う必要があるほか、信頼できる工務店などのプロや、様々な修繕やトラブルに対処できるだけの潤沢なキャッシュを用意しておく必要があります。

古民家民泊の難易度は高いのですが、インバウンド観光客が復活した際には再び大きく稼げるセグメントにもなり得るため、じっくり計画を立てながら進めてみてはいかがでしょうか。

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