安い価格で購入できる築古物件は人気があり、民泊営業を行うにあたっても、早期の投資回収を見込める可能性があります。値ごろな物件は人気が高く競争が激しいものの、良い物件をうまく購入できれば、その時点で事業の成功確率は大きく上がると言っても過言ではありません。
しかし、築古物件が安いのには、様々な欠陥があるなど相応の理由があります。そのため、チェックしておくべきポイントを事前に押さえ、正確にリスクを算出して事業性を検証しなければなりません。
ここでは、築古物件を購入する際に確認しておきたい主なポイントについて、簡単にまとめていきます。
違法増築箇所がないか
築年数の古い物件には増築未登記部分があるケースが散見されます。さらに、その増築部分により建ぺい率や容積率をオーバーしてしまった違法増築部分を持つ物件も存在します。
そのような物件では、違法部分を減築などして改善しない限り、民泊新法・旅館業法による営業いずれも行うことができません。
窓のない部屋があったり、明らかに隣地に越境している無茶な増築部分があったりする物件は要注意です。不動産会社によく確認する必要があります(時折、違法部分を「既存不適格」と誤って説明する担当者もいますが、これらの意味は異なるため要注意です)。
建物の欠陥を調べる
築古物件は建物のどこかしらに欠陥があるのが常です。外壁、屋根、配管、基礎といった重要な部分は、必ず状態が悪くないかどうかを確認しましょう。例えば以下のようなポイントを抑えておくことが必要です。
- 外壁:触って粉がつかないか、大きなひび割れや損傷がないか、雨染みがないか
- 屋根:瓦やスレートがずれたり割れたりしていないか、草木やコケが生えていないか、トタンやガルバリウムが錆びていないか、穴が開いていないか
- 配管:水漏れの形跡がないか、錆びた水が出ないか、上下水やガスの引き込みがない場合、どれだけの費用がかかりそうか
- 基礎:大きなひび割れや横に入った亀裂がないか、地盤沈下によって建物が傾いていないか
他にもシロアリが食害していないか、木材や金属に腐食している部分がないか、サッシやふすまの建付けが悪くないかなどのポイントを確認しましょう。
越境していないか
築古物件は建物や設備、外構の一部が隣地に越境している、あるいは越境されているケースもよく見られます。また、基本的には公簿売買(登記簿上の面積情報を正として行う取引)となり、実測面積との差異が生じうるほか、境界が不明確なまま取引が行われる(境界非明示)ため、トラブルになる可能性は否定できません。
越境の有無については、重要事項を事前に確認しておくほか、目視および隣人へのヒアリングによって確認することが有効です。また、配管の越境もよく見られるため、こちらも合わせて重要事項説明書や配管図を確認しておきましょう。
水回りのグレード
キッチンやトイレ、浴室といった水回りは、ゲストの満足度を大きく左右する要素です。 新しくて綺麗なものであれば高い評価が期待できますが、築古物件ではそれを望めないケースが多いため、リフォーム費用も含めて確認が必要です。
特に和式便所やバランス釜の浴室、料理をするのに十分でない広さのキッチン台などは、そのまま使用するのは避けるのが賢明です。
騒音リスクと断熱性
築古物件は築浅物件に比べて遮音性と断熱性に劣ります。 そのため、音が外に漏れていないか、外からの音がどれくらい聞こえるかをよく確認し、近隣の環境と合わせて騒音リスクを検証することが大切です。
断熱性については、建物の内外の温度差を確かめることが有効です。建物の中のほうが「夏は涼しく、冬は暖かい」のが理想ですが、断熱性能に乏しい築古物件ではあまり望めないかもしれません。滞在の快適性に加え冷暖房コストにも反映される要素なので、意識して確認してみるとよいでしょう。
確認済書・検査済証があるか
旅館業法の許可を取得する場合は、確認済証と検査済証のある物件を選ぶのがスムーズです。しかし、築古物件ではそれらが無い物件も多く、中には検査済証自体の提出がなされていない(台帳記載事項証明書が発行できない)ものもあります。
その場合、一級建築士に図面を作成してもらう費用と手間が発生するため、確認しておきましょう。
修繕計画はしっかり立てて収支に盛り込む
築古物件は修繕の頻度が多いのも特徴です。躯体、設備、内装いずれも古い状態のままである物件が多いため、最初にリノベーションを行って綺麗な状態にするか、つど破損箇所の修繕を行うかで対処しなければなりません。
これらの修繕計画はリノベーション計画と併せて慎重に精査し、むこう数年の想定収支に反映したうえで物件を検討することが必要です。修繕時期の参考に、修繕履歴があれば可能な限り貰っておくと良いでしょう。
レビューは築浅物件より低くなる
フルリノベを行うなどで新築同然の状態にしない限り、どこかしらに古さや劣化がある築古物件は、どうしても築浅の物件と比べてレビューが低くなる傾向にあります。
Airbnbでスーパーホストを狙っている場合など、アカウント全体のレビュー点数を高く保ちたい場合には、しっかりとお金をかけた状態の良い物件のみで民泊を行うほうが良いでしょう。
まとめ
築古物件は取得価格が安く済むため、上手に選べば民泊で利益を上げやすくなるほか、適切にリノベーションを行えば売却益も狙えます。
一方、あちこちに劣化や欠陥が生じていたり、中には違法状態の物件も存在したりするため、物件選びは簡単ではありません。チェックすべき主なポイントを押さえたうえで、慎重に精査しましょう。