民泊や宿泊施設事業を推進することで得られる、地方創生へのメリット

民泊

インバウンド観光がアツいと全国的に注目を受けてから2~3年ほど経ちますが、その煽りを受けて、今はどこでもホテルとゲストハウスの建設ラッシュです。

さすがに今はバブル期だけあって乱立気味に思いますが、宿泊事業は勢いのある市場なので、数年スパンで見れば軌道に乗る宿もかなりの件数にのぼるんじゃないでしょうか。

今は民泊新法の糞みたいな制度が邪魔をして下火になってしまいましたが、今のホテル建設ラッシュになるまでは、民泊(Airbnb)が盛んでした。

なのでここ数年、京都や東京(特に台東区)などはどこもかしこも宿泊施設の話題が絶えません。あちこちで新規開業のニュースや批判を取り上げるニュースが取りざたされ続けています。

しかし、まだまだそんな宿泊施設ラッシュは地方には来ていません。新しい宿泊施設ができる話はどうしても観光都市に集中しており、まだ田舎の観光地の新規開業は目立つほどの軒数がありません。

一方、アクセスの悪い田舎の集落部にある一泊3万円以上の宿泊施設が好調だったり、地元のおじさんが日本語だけで集客する民宿に外国人観光客が訪れたりと、地方でもインバウンド観光の機運が出てきています。

これは裏を返せば「地方の宿泊施設にはもっとチャンスがある!」ということです。

 

そして、このチャンス、つまり民泊やゲストハウスなどの宿泊施設を地域にどんどん作っていくことは、地域おこしを考える地方自治体にも非常に大きなメリットがあります。

今回の記事では、自治体が宿泊施設の開業を推進することで、地域や自治体経営にどんな良い影響があるのかを解説していきます。

 

宿泊施設が増えれば税収が増える

まず一つ、宿泊施設が増えると自治体の税収が増えるため、赤字幅を縮小できたり、公共サービスの提供がしやすくなるという影響があります。

詳しくは後述しますが、宿泊施設を開業しやすい=住民の稼ぐ手段が増えるわけなので、そのぶん住民の平均年収が上がり、結果として所得税収が増える、などの理由があります。

また、宿泊施設は観光や飲食店など周辺産業にも経済効果を及ぼす特性があるため、地域でお金が循環し、住民も自治体も稼ぐことができる、ありがたい業態なのです。

その上、宿泊施設はインバウンド観光市場の継続的な拡大により追い風なため、中長期的にも安定した経営ができるというポイントも非常に大きいです。

 

宿が増えること自体が観光促進に繋がる

観光客が全然来ない地域の人は、「うちの街は観光地じゃないから、宿なんてあっても意味ないよ」と考えることも多いでしょう。

ですが、それは違います。観光客が泊まれる宿(泊まりたい宿)があるから観光客が来るんです。初めから諦めてはいけません。

その証拠に、観光地でも何でもない集落で話題を集めている高単価の宿は各地に存在しています。例を挙げると、徳島・祖谷の「ちいおり」、兵庫・篠山の「集落丸山」、山梨・芦川の「芦川LOOF」、京都・南丹の「美山FUTON&Breakfast」等です。

神戸から車で1時間の農村にある「集落丸山」

神戸から車で1時間の農村にある「集落丸山」

引用:http://nipponiastay.jp/hotel-maruyama.html

これらの宿は、「一見何もないと思われる田舎の風景」こそが貴重な観光資源だと捉え、昔から変わらない素朴な街並みや現地住民との触れ合い、新鮮な食事や自然体験を提供しています。

こうした観光は主に「グリーンツーリズム」と呼ばれ、ドイツやフランスなど西欧を中心に人気を集めています。

もちろん「うちは際立った自然環境もない単なる地方都市だ」という声もあるでしょう。しかし、要は宿さえあればやり方次第で観光客は来るのであって、逆に宿が無ければ滞在できないので観光客は来ないということです。

ただの街歩きやグルメツアー、町工場の見学だけでも立派な観光資源になりますからね。

 

競争が進み、宿の質が上がる

また、地域に宿泊施設が増えることで競争が生じ、結果として良い宿は残り、ダメな宿は淘汰されて廃業します。このことで地域全体の宿泊施設の質が向上し、観光地としての素地が出来上がります。

もちろん、宿泊施設の新規開業を自治体が推進するとなると、既存の地元民宿やホテル業者から「潰す気か!」と反発を受けるでしょう。ですが、潰す気で推進しないといけません。

日本は資本主義社会なのだから、健全な競争の結果、ダメな所が潰れるのは当然です。そんなダメな宿の反発に応えていたら、結局「この街の宿には外れが多い。あまり観光客をもてなそうとしていない」と観光客は考え、離れていってしまいます。

地域の健全な成長のために、地元業者の競争を促すのは非常に効果的でやるべき施策だと言えます(とはいえ、さすがに直接そうは説明できないので、上手にはぐらかしつつ進めるべきでしょうが…)

 

観光業、飲食店、内装屋なども儲かる

上述の通り、宿泊施設は周辺産業をも活性化できる特性があるため、地域経済の復活が最重要となる「地域おこし」の手段としては、新規開業を支援することが優れた施策となります。

宿があれば観光客が地域に訪れ、観光客は現地でツアーやアクティビティに申し込んだり、地元のレストランや宿内で名物を食べたり、お土産を買ったりして街にお金を落としてくれます。

また、宿を開業する時には内装屋さんが儲かりますし、運営していれば壁紙の張り替えなど継続的な仕事も降ってきます。

このように、宿泊施設を起点として地域でお金が巡り、「外貨を稼ぐ⇒地域で回す」という理想的な経済状態を作ることができるのです。

 

宿の経営が住民の仕事を作る

地方では高齢者が多いですが、彼らが必ずしも再雇用などで満足いく収入を得られるとは限りません。また、手に職を持っている人も「忙しくはないけど、もっとお金が欲しい」と言う声が多かったりします。

ですが、街で宿泊施設が開業しやすくなれば、そういった人達が宿の経営に乗り出し、年金や本業にプラスした収益を上げていくようになる可能性があります。

こうなれば彼らの生活も楽になるし、自治体は税収も上がるし、良いことずくめです。

 

移住促進にも繋がる

開業した三重県の宿先で

さらに、これは移住促進にも繋がります。地域での仕事にネックを抱える移住希望者が宿の開業という選択肢を選びやすくなるし、地元の宿に雇われたり仕事を貰ったりできる選択肢も増えるので、移住を決意しやすくなります。

また、良い宿・個性的な宿がどんどん生まれることで、移住に関心のある人には「なんかこの街頑張ってるな。面白そうだな、行ってみるか」という心も生まれてくるため、移住促進の良いPRにもなります。

そして、そもそも「実際に地域に訪れる」ということが移住の第一のステップなので、観光などその街に訪れる基盤を作ってくれる宿泊施設は、移住促進をする上でも欠かせない要素なのです。

僕も地方創生の界隈にいて「ゲストハウスをやりたい」という若い人の話はしょっちゅう聞くので、特にそういう人には刺さりますね。

 

空き家対策にも有効

さらに。宿泊施設がたくさん増えれば、そのぶん物件が必要になってくるわけで、結果として空き家のまま放置されている物件が有効活用される事例が増えます。

特に戦前に建てられた古民家なんかは人気が高いので、もし今あなたの街にそういった物件が放置されていたら、それをお宝のごとく確保して宿泊施設に活用する人が出てくるでしょう。

また、こうした中で「宿を開業して儲けた!」という成功事例が生まれ、地域に波及すると、住民や外部事業者がいっそう「宿を開業しよう」と躍起になり、物件探しが活発になります。

すると市場の物件はどんどん成約し、だんだん賃料や売買価格の相場も上昇します。これにより不動産の市場が形成されるため、不動産屋や大家さんも稼ぐことができるようになるのです。

 

まとめ

つまり、地域で民泊を推進することで「産業活性化」「移住促進」「空き家対策」「観光開発」「税収増」全てを達成できる可能性があると言えるのです。

もちろん、近隣住民や既存事業者との調整は課題になりますが、それも自治体あるいは宿泊事業活性化事業の受託者が支援に入れば解決できる問題です。

世界的にこれだけ民泊や観光が盛り上がっていて、日本や地元地域の市場も成長している大きなチャンスなのだから、地域おこしをしたい自治体が宿の開業を推進しない理由は無いと思うんですが、どうでしょうか。

少なくとも国はガンガン推しているし、今年から楽天やLIFULL HOME’Sなどの大手企業も「民泊×地方創生」を大きく掲げて事業をスタートしているので、実績を上げるには非常に良いタイミングだと思います。

 

具体的な宿泊施設開業の支援策としては「補助金・助成金の交付」「民泊届出or旅館業許可取得の支援」「制度融資」「コンサルタントの派遣」「ホテルや民泊のプロによる相談窓口の設置」等などが考えられます。

基本的に宿泊施設の開業にあたっては「採算が取れるか」「どう準備・経営したらいいか分からない」という二点が最大のネックになるため、そこをカバーしてあげるのが望ましいと思います。

ただ宿泊施設を増やすだけじゃなく、実際に宿泊予約がきちんと入り、事業者が補助金無しでも事業を継続できる体制をどれだけ早く、多く整えられるかが一番の課題なので、実際に事業を成功させているプロを入れること推奨です。

 

実際、すでに農泊など宿泊施設を多く新規開業させている自治体(三重県大紀町とか)は実際にいくつかあって、その取り組みは非常に素晴らしく思っています。

次はそこに宿泊予約サイトを使った集客やインバウンドの受け入れ、具体的な経営ノウハウの伝授あるいは業務委託ができる体制を提供できれば、きっと上述のような多大なメリットを自治体や住民の皆さんも享受できることでしょう。

 

余談、僕が田舎で宿を開いた結果

最後に僕の話を。僕は今年9月まで三重県尾鷲市で地域おこし協力隊として活動しており、その活動の一環で、8月に人口400人あまりの漁村集落に一棟貸しの宿泊施設を開業しました。

宿泊予約サイト経由での予約を受けず、主に移住希望者に細々と貸しているのみなので採算性は低いですが、移住促進や地域おこしの面からは成果が見て取れます。

移住希望者が一泊からでも気軽に現地で暮らすような体験ができたり、遠方から移住のための物件を探しに来る方がすぐ泊まれたりできる場所が出来たので、移住のクロージングに役立っているというのが一つ。

また、宿での滞在に合わせて、集落での釣り体験やダイビング体験、魚で燻製を作る体験を提供したり、喫茶店と提携して食事付き宿泊のような形をやってみたりと、地域と連携しつつ移住希望者をもてなせる体制を作れたのも一つです。

 

事業者サイドの話で言っても、宿を作ったのは大きくタメになりました。

売りに出た物件を自ら購入し、不動産屋を通さず売買契約を結んで登記移転まで行い、DIYで改装したり清掃したり、家具備品を買い揃えてレイアウトを整えたり、行政や住民との調整、イベントの企画などなど、学べたことがたくさんありました。

大変なことも多かったし後悔した部分もありますが、まがりなりにも一つ事業を作れた経験によって成長できたし、「地方には色んな可能性がある」と改めて実感できました。

 

この経験から、「宿泊施設が増えることは地方創生の非常に良い手段だ」という考えを持つに至り、東京に戻った今でも都内や地方で新たな宿をやるチャンスを探しています。

地域おこしの良い施策をお考えの自治体の方や、観光推進、産業活性化、移住促進のご担当者の方々も、ぜひ宿泊施設の開業を支援する施策をご検討くださいませ。

個人的にもそういった自治体さんには何かしら協力したいし、見に行ってみたいです。

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