新型コロナウイルスが蔓延するまでは、民泊は副業としても大きな人気を集めていました。
民泊新法が施行され、営業許可を取得していなかった違法民泊が一掃されてからは一時的に勢いは衰えたものの、インバウンド観光市場の急成長によって、営業を継続した事業者は引き続き安定した利益を上げることができていました。
コロナ禍が明けて外国人観光客が日本に来られるようになれば、再び民泊は注目されるビジネスとなり、副業の手段としても改めてその魅力が見直されることでしょう。
今回はなぜ民泊が副業に向いているのか、そのメリットと、運営する上でのリスクや注意点、そして始め方について解説していきます。
副業としての民泊のメリット
まず、副業で民泊を行う際の主なメリットを解説します。
毎月収入が得られる
民泊では、予約が入る限り毎月収入を得ることが可能です。Airbnbなどの宿泊予約サイト(OTA)に登録すれば、自分で集客の手間をかけなくても自動的に予約が入るため、「クライアントを見つけて、作業して、対価をもらう」形のビジネスよりも労力が少ない点が大きなメリットになります。
この「毎月収入が得られる」というポイントは大きく、特に将来独立したい、FIREしたいと考える方にとっては非常に大切です。
自分が作業をしないと報酬を得られない「納品型」の仕事だと、毎月頑張って働かなければなりません。もし自分が体調を崩したり、本業とプライベートが忙しくなってしまったりすると、急に収入が無くなる可能性があり、不安定です。
しかし、民泊は放っておいても毎月継続的に(むしろAirbnbなら予約後数日で入金されるので「毎日」になる場合も)予約が入って、売上を立てることが可能なので、自分でシャカリキ働かなくても稼げるのです。この収入の安定性こそ、将来の独立やリタイアに大切な要素となるのです。
※もちろん、いくら収入が発生するとはいえ、それ以上に支出があればマイナスになってしまうので、毎月しっかり利益を出せる物件選びと作りこみ、ゲストのニーズに合わせたテコ入れを継続的に行う努力は必要です。
運営代行会社に委託すれば不労所得になる
民泊の大きな特徴は、運営代行会社に運営を委託できる点です。ゲストとのやり取りや予約の管理、日ごとの価格調整、清掃作業などを全て代行会社にお任せすることで、自身ではほとんど何もしなくても収入を得られる不労所得モデルが出来上がります。
業務の手間がほとんど無くなり、さらに毎月継続的に収入が得られることから、同じく不労所得を得られる代表的な手段の一つである不動産投資の一環として考えられることもあります。
運営代行は基本的に売上歩合制です。利益は圧縮されるものの、本業で平日の時間をまともに取れない方にとってはとても心強い味方になるでしょう。ただし、事業者によってサービス品質には差があるため、信頼できそうな事業者かどうかは慎重にチェックしましょう。
別荘・セカンドハウスが手に入る
民泊はゲストに貸さない日には自分で利用することもできます。例えばリゾート地の別荘で民泊をすれば、予約の入っていない休日には自分たちで楽しむことも可能なので、収益以外の魅力もあると言えます。
民泊なら収益が入るので、別荘につきものの維持費の負担は実質的に無視できますし(事業経費として考えるため)、ゲストの出入りごとに清掃を手配することになるので、管理の手間もかからないのが大きなメリットです。
ただし、別荘地では分譲規約によって宿泊営業が禁止されているところも多いので、物件を契約する前に必ず確認しましょう。
外国語や異文化の勉強になる
時間が作れる方は、運営代行会社に依頼せず自身で民泊を運営するのも良い選択肢です。その場合、世界中から日本に訪れるゲストと交流できるため、英語をはじめとした語学力をつけられたり、外国の人々がどういった文化や常識を持っているかを学んだりできます。
語学を学びたい方や海外旅行が好きな方にとっては面白い体験になるのではないでしょうか。
副業として民泊を行う際の注意点
一方で、民泊にはデメリットや注意点もあります。これらのリスクに適切に対処することが、安定して収益を上げるためのポイントになります。
近隣トラブルや法改正などのリスクがある
民泊は基本的に現地スタッフ不在で運営するため、ゲストの悪質な振る舞いによって近隣から苦情を受けるケースも多くあります。
民泊新法の制定以前から、ゲストのマナーなどの問題によって様々なトラブルが生じており、社会的問題にも発展しました。 今でも民泊に対して悪い印象を持つ人は数多くいるため、騒音やゴミ捨てなどのトラブルが発生しないよう、十分な対策を講じることが必要です。
参考記事:民泊の騒音対策5つとクレームへの対処方法、騒音に強い物件の選び方
また民泊新法や旅館業法、消防法や建築基準法といった、民泊の開業に必要な法律は年々改正されています。緩和される規定もあれば厳しくなる規定もあり、場合によっては新規開業や既存施設の営業に対して悪い影響も及ぼしかねません。
こうした外部要因によるリスクは民泊が持つデメリットのひとつです。近隣トラブルが発生しないようにオペレーションに気を遣ったり、法律の大改正が起きても大丈夫なように設備を整えたり、余裕資金を用意しておいたりすることでカバーする必要があるほか、早期に初期投資を回収することが有効です。
まとまった初期費用が必要
民泊の開業には、最も安く抑えても50万円程度、ハイグレードな施設を作ろうとしたら数千万円の初期投資が必要になります。 弊社の物件ではだいたい150~300万円程度の初期費用を見込んでいますが、ファミリータイプとしては安い水準です。
投資額を大きくしてハイグレードな物件を作るほど長期的に営業は安定します。一方で投資回収までの必要期間は伸びるほか、融資を受けなければ多額の投資は難しいため、100万円以上の自己資金を用意して、一部のみ借り入れを活用しながら民泊を開業する形が現実的かと思います。
参考記事:民泊物件への投資額と投資回収期の関係性から考えるポジショニング戦略
いずれにしてもまとまった初期費用が必要なため、ハードルが低い副業であるとは言えません。そのぶん参入障壁が高くなるため、適切な物件選びさえできれば、供給過多による収益の逓減リスクは小さくできるでしょう。
毎月利益が出るとは限らない
民泊の収支は宿泊産業の例にもれず不安定です。繁忙期の8月などと閑散期の1月などでは倍以上の売上差があることも珍しくなく、閑散期やコロナ禍の影響が強いシーズンには赤字に転落することもあります。
毎月継続的な収入が入るのは確かですが、利益が約束されているわけではないので注意が必要です。
民泊で失敗しないためのポイント
民泊で失敗する確率を下げるための具体的なポイントについても解説します。
リサーチと物件選びは慎重に行う
民泊事業の成否の大部分は「良い物件を探せるかどうか」にかかっています。 予約の入り方は立地に大きく左右されるため、どれだけ需要の高い場所に出店できるかがカギとなるのです。
ニーズのある立地かどうかを調べるためには綿密なマーケティング調査が必要です。年間どれくらいの観光客や宿泊客が訪れるのか、どの国籍の人たちがどれくらい訪れているのか、などのデータを調べたうえ、近隣の競合になりそうな宿泊施設がどれくらいの稼働率なのか、どういった要素が好評なのかを可能な限り調べて、採算が取れそうかどうかを判断する必要があります。
また物件自体も、汚くてゲストか泊まりたいと思えないような物件はNGです。一方で、広くて開放的なリビングのある物件などは予約が伸びる傾向にあるため、間取りや内装なども意識してチェックしたいポイントです。
立地は後から変えられませんし、建物も大きく改装するとなれば非常に高額な費用が発生してしまうため、最初の物件選びにはとことんこだわってください。民泊営業が可能な物件を見つけること自体が難しいので(賃貸の場合)、かなり骨は折れますが、焦っても失敗確率が上がるだけなので長期戦を覚悟して臨みましょう。
お金をかけすぎない、節約しすぎない
民泊は、お金をかけるだけ施設としてのグレードを高くでき、経営が長期的に安定するという話をしましたが、基本的にはコスト意識を徹底し、投資するところと節約するところのメリハリを上手につけることが大切です。
具体的には、サムネイル画像に設定することも多く、ゲストが長い時間をそこで過ごすリビングについては、家具やダイニングセットなどに良いものを使用したり、高級なマットレスなどの寝具を導入したり、おしゃれな照明を用意するなどして、ゲストの満足度や写真の見栄えが良くなる空間を作りましょう。
一方で、リネンや消耗品などは、安くてもそれなりの品質のものがあるので、うまく組み合わせることで投資額を抑えながら満足度の高い民泊施設を作ることを目指しましょう。
コスト意識だけに捕らわれて、安上がりな施設にはしないことが重要です。 全ての備品を安価なものにしてしまうと、見た目や機能性が劣って快適性が落ちてしまうため、ゲストの満足度が下がり、レビュー評価に響いて中長期的に収益性が低くなってしまいます。
ゲストの快適性や写真映えに影響するところにはしっかりお金をかけて、そうでない部分で上手に節約することを意識すると良いでしょう。
民泊の始め方
副業で民泊を始める際には、最初に自分が民泊を開業したいと考えるエリアに対応している運営代行会社にコンタクトを取ってみると良いでしょう。どれくらいの予算があるのかを伝えたうえで、どのような物件を探すべきかを提案してもらうのが近道です。そして、可能であれば不動産会社を紹介してもらい、条件に近い民泊可能物件が出るまで気長に待つことが必要です。
物件の提案があったら、積極的に内覧に行きましょう。内装はもちろん、物件周辺の環境やお店、可能であれば近隣住民の民泊に対する考え方を細かくチェックします。内覧前に各種法規制の勉強も行っておくとベターです。
良い物件に出会えたら、行政書士にコンタクトを取り(運営代行会社が紹介してくれるはずです)、候補物件で民泊営業ができそうかどうかを確認します。可能そうであれば物件を契約、行政書士に民泊新法もしくは旅館業法の届出認可・営業許可取得に動いてもらいましょう。
運営代行会社へのコンタクトから民泊の開業までには、半年~数年ほどかかる場合も珍しくありません。気長に準備することが必要です。また物件の契約諸費用や行政書士に支払う報酬などの出費もあるため、少なくとも100万円程度の現金は準備しておきたいところです。
まとめ
民泊はその他多くのビジネスと異なり、毎月継続的に収入が入るうえ、運営代行会社に委託することで不労所得と言えるモデルを構築できる点が非常に大きなポイントです。この特長から、会社員の方の副業などにも相性が良いビジネスなのです。
しかし、開業までにはまとまった費用と時間が必要になるほか、近隣トラブルや法改正など様々なリスクも存在するため、焦らず慎重に検討を進めることが大切です。
コメントを投稿するにはログインしてください。