民泊営業が可能な物件は、その多くがマンションもしくは戸建です。 大都市ではマンション物件のほうが供給が多いため、民泊可能なマンション物件を目にする機会も多いことでしょう。
この記事では、民泊運営において、戸建物件と比較したマンション物件のメリットとデメリットについてお伝えします。
マンションで民泊を行うメリット
消防設備の導入費用がかからない
一定規模以上のマンションであれば、すでに自動火災報知設備などの消防設備が整っているため、民泊を行うにあたって新規に消防設備を導入する必要がなくなります。
戸建物件の場合、通常は消防設備が導入されていないため、新規導入に30万円~100万円程度かかります。この投資を省けるのはマンション民泊の大きなメリットです。 ただし後述のような例外もあります。
戸建に比べて間取りが使いやすい
二階建て・三階建てが多い戸建に比べて、マンションは一部のメゾネットタイプを除き、一つの会に専有部分が集中するため使いやすい間取りになっている点もメリットです。
マンションと戸建では、同じ「60㎡」でもそれぞれ居室として使用できる面積は異なります。というのも、戸建物件の場合は階段などの面積も床面積に含まれるため、マンションに比べると実質的に居住空間が小さくなるのです。この点も物件選びのポイントとして押さえておくと良いでしょう。
造りが無難なのでデザインしやすい
また、マンションは基本的に、暮らしやすい間取りかつ奇をてらわないデザインや設備を導入しているため、家具の配置などのデザインが設計しやすいというメリットもあります。
マンションで民泊を行う際の注意点
騒音クレームが来やすい
マンションでは上下左右の隣接区画から騒音クレームを受ける可能性がどうしても高くなります。 特に左右の部屋からは騒音、下の階からは足音や振動のクレームが多くなるでしょう。
壁伝いに防音素材を貼ったり、重い家具を置いてみるなどして防音対策を図るほか、カーペットなどを敷いて下への振動や音を軽減するという対策が必要です。
民泊を開業不可能な物件も多い
分譲マンションの場合、区分所有オーナーが「民泊可能」として賃貸を行っていたとしても、管理規約で民泊を行うことが禁止されていたり、消防設備が設置されていなかったりして事実上民泊の開業が不可能というケースもあります。
この事実を知らない区分オーナーや不動産会社も多いため、契約前に必ず管理組合に民泊運営の可否を確認しなければなりません。また、消防設備が共用部などに設置されていない共同住宅は、許可を取得できない可能性があるため、事前にプロに図面を渡して確認してもらうと良いでしょう。
また、共同住宅には容積率の緩和規定がありますが、旅館業テナントが入った場合にはその適用が受けられなくなるため、それにより指定容積率がオーバーしてしまう場合は、旅館営業許可を取得することはできません。事前に建築課に確認を取る必要があります。
このように、マンションでの民泊営業が可能かどうかは確認に少々専門知識が必要になるため、できれば行政書士や一級建築士などのプロに相談しながら進めたほうが良いでしょう。
他にも、入居してから管理規約が変わり民泊営業が不可になるケースも珍しくありません。民泊に関するクレームが多い建物の場合には要注意です。
分譲マンションの場合、改装に制限がある
分譲マンションの場合は、ドアや窓、床、壁などの改修を行うのに管理組合の許可が必要になることが一般的です。 そのため大きな手を加えることは難しい場合もあります。
中にはお風呂が昔ながらのバランス釜のままにもかかわらず、現代の給湯システムに変更することができない物件もあると聞きます。 物件の契約を行う前に、事前に専有部分の改修の条件についても確認しておきましょう。
デザインによる差別化は難しい
上記の理由もあり、マンションは戸建に比べると改修の余地が少ないため、デザインによって他の民泊と差別化することは少々難しくなります。特徴的な造りでもないことから、お金をかけてしっかりとリノベーションしなければ、デザインは画一的になりがちです。
あらかじめ、どこまでどのように改修できるか、予算内でどれだけバリューアップできそうかを確認したうえでコンセプトやデザインを詰めていくことが大切です。
まとめ
マンションは戸建物件に比べて立地の良い場所にも多いことから、条件の良い物件を探せる可能性があります。 また消防設備の設置やデザインなどに手間と費用がかからないというメリットがあるため、開業のしやすさは戸建物件よりも上となります。
一方で、民泊可能と謳っているにもかかわらず、実際には管理規約などにより開業が不可能なケースもあったり、騒音リスクの高さや改修に制限があったりするリスクもあるため、契約前に注意して確認することが必要です。
マンション物件・戸建物件はそれぞれ一長一短ありますが、一概にどちらが民泊運営に良いとは言えません。その物件自体の良し悪しを冷静に判断して、収支が合いそうかどうか、クレームによる営業停止の懸念がどれくらいあるかを冷静に検証して判断すると良いでしょう。