弊社では2020年11月より、神奈川の箱根(強羅駅前)で戸建民泊を開業しています。
箱根といえば首都圏を代表する観光地の一つであり、様々な宿泊施設がこれでもかと立ち並ぶ日本有数の温泉街でもあります。また高原・温泉リゾート地として別荘も大量に存在しています。
コロナ禍によって今まで王道とされていた都市部での民泊が壊滅し、GOTOトラベル効果によって郊外のリゾート地への宿泊が増えたことを受けて弊社も進出したのですが、実際のところ、リゾート地で民泊をやるとどういうメリット・デメリットがあるのか?という点は気になる方もいるかと思います。
別荘や保養所を持て余している方や法人のご担当者様、リゾート地で民泊をやってみたい方など、どうぞご参考に。
リゾート地民泊のメリット
まずは実際に体感したメリットから解説します。
都市部とは異なる宿泊需要にアプローチできる
上記のように、弊社が箱根での民泊に進出したのは、感染症を嫌気する市場の中で、都市部の宿泊施設の予約状況が壊滅的になった一方、都市郊外のリゾート地に宿泊需要が集中している、という状況になったことが理由です(20年9~10月頃)。
元来、民泊は東京23区や大阪市などの都心に近いエリアで開業されるのが一般的でした。これらの地域は国内外の消費者いずれの宿泊需要も高く、比較的安定して予約が取れるからです。
しかしコロナ禍で状況は一変。人口密度が高くコロナ感染リスクが高いと見られる都市部では、20年3月頃から国内消費者が宿泊を避けるようになり、21年1月現在でもほとんど宿泊予約が入らない悲惨な状況が続いています。
対して、リゾート地では人が少なく、また自然の中という環境も相まってか、GOTOトラベルが開始してからは順調に宿泊予約が増えるようになりました。高価格帯の宿泊施設を中心として、平時よりも予約が好調な施設の話も聞かれるほどです。
このように、リゾート地は都市部とは明確に異なる宿泊需要があるため、それぞれ運営することで民泊における立地リスクを分散することが可能になります。一方の需要が減少しても、もう一方では利益が出せる体制を構築できれば、事業基盤は安定しやすくなります。
別荘として利用できる
これ、個人的にはかなり大きいです。民泊に予約が入っていない日は、自分で別荘として利用しても良い、というのは気分がいいものです(もちろん都市部での民泊でも可能ですが、リゾート地にあると気分がいいですよね)。
他にも、営業許可取得のために何度か現地に足を運ぶ必要もあるので、そのタイミングで勉強がてら食事や温泉、観光を楽しんだりすることもできます。そういうのが好きな方には面白いと思います。
ちなみに弊社では、民泊を開業した際には、必ず一回は自分で泊まるようにしています。可能であれば一人よりも仲間と一緒に。これによって、実際にゲストの目線で滞在でき、施設に不備や不満が生じないかをチェックすることができるためです。この点では、別荘として利用しやすいのは民泊運営上もメリットになります。
知人に紹介・利用してもらいやすい
リゾート民泊は上記の通り別荘にもなるため、知人・友人に泊まってもらいやすいというメリットもあります。実際、当方にも複数の方から「泊まらせて!」と打診があり、実際に宿泊も頂きました。
オーナーとして宿泊の機会が増やせることに加え、知人に泊まって頂くことで仲をより近くできるメリットもあるでしょう。私の場合、しばらく連絡を取っていなかった友人との再会のきっかけにもなりました。
このように、収益を得ながら別荘を持つことのメリットを享受できるのもリゾート民泊の強みです。
リゾート地民泊のデメリット
一方でいくつかデメリットも感じたのでシェアします。
清掃業者が見つけにくい&高い
民泊の清掃業者は基本的に都市部に集中しており、その他の地域で見つけるのは難易度が上がります。
リゾート地でも多分に漏れず、箱根は東京に比べて事業者数が著しく少ないです(弊社では良い業者さんに巡り合えたので万歳ですが…)。むしろ事業者がいるのが救いで、自分でアルバイトなどの求人を募らなければならない地域も多く存在するほどです。
また、リゾート地の清掃作業は車移動が前提となり、加えて拠点から民泊まで距離もあるため、どうしても都市部より清掃費用は高くなりがちです。民泊物件の規模(床面積・収容人数)が大きくなるほど、清掃費の負担はさらに増加します。
民泊では家賃・代行費用・清掃費用といった固定費をいかに削減できるかが肝要なので、この点は対策が必要です。具体的には「一組あたりの単価を上げる=平均宿泊日数及び宿泊料を上げる」ことが大切ですが、コロナ禍で外国人観光客の宿泊が見込めない現状では連泊需要が少ないため、利益率が悪い状態が続くことになります。
宿泊目的が旅行に限られる
リゾート地は都市部とは異なる宿泊ニーズを掴めるという話をしましたが、その具体的な宿泊ニーズは「ほぼ旅行」となります。
都市部では旅行以外にも、出張や受験、コンサート、トランジット、近隣住民のレジャー目的など様々な宿泊ニーズが存在します。そのため年間を通して比較的安定した宿泊需要が存在します。
対してリゾート地は旅行に宿泊理由がほとんど限られるため、繁忙期と閑散期の差が激しく、またマンスリー予約を呼び込む・デイユースを広げる、といったリスクヘッジ営業が困難になるという欠点があります。
繁忙期は安定した宿泊需要が見込める一方で、いかに閑散期に利益を出せるかがリゾート民泊の勝負どころです。値付けや販促施策をうまく考えて乗り切らなければなりません。
ちなみに昨今ではテレワーク需要の増加を受け、これを狙った施策も見られるようになりましたが、実際にはわざわざリゾート地まで赴いてテレワークをする人はかなり少ないため、あまり期待できる施策とは言えません(もちろん実施した方が集客には繋がりますが)。
地域によっては災害・気候リスクが高い
リゾートといえば海や山、雪といった自然を思い浮かべるものです。しかし、大自然は時として人に牙を剥く、というのは、昨今の台風や地震による被害で痛感した方も多いでしょう。
災害や気候に伴う民泊への被害を考えると、どうしてもリゾート地は都市部に比べるとリスクが高くなります。海沿いでは塩害や高潮・津波、山間部では土砂崩れ、寒冷地では水道管や路面の凍結などに注意しなければなりません。また湿気やシロアリ被害も警戒すべき部分です。
箱根も大涌谷の噴火や台風による土砂崩れ(登山鉄道が長期運休に…)によって宿泊需要が減退した事例があります。そして冬は寒いので常に水道管が凍結していないか心配になります。
土地によってリスクの大きさや種類は異なるため、リゾート地で民泊物件を選ぶ際は、周辺の状況をよく観察しておくことが重要です。また火災保険・テナント保険の補償範囲や申請手続きについても、事前に押さえておくと良いでしょう。
まとめ
リゾート地で民泊を行うことで、都市部とは異なる宿泊需要を獲得できるため、合わせて運営をすることでリスクヘッジ効果が期待できます。また別荘としても利用できるので、それに魅力を感じる方には面白いでしょう。
一方、旅行目的の宿泊しか期待できないこと、災害リスクや清掃業者を探すのが難しいといった欠点もあるため、事前によく事業性を検討しておくことが重要と言えます。
個人的には、競争過多になりがちな都市部での民泊だけでなく、リゾート地で快適に滞在できる民泊のほうが面白いなと思います。事業性では都市部に軍配が上がりますが、やはり滞在して心地の良い宿は自分で運営しても楽しいものです。