レンタルスペース投資の始め方と初期費用、物件の探し方を徹底解説

時間単位で物件を賃貸する「レンタルスペース」への投資が、にわかに個人事業者の注目を浴びています。コロナ禍により宿泊事業などが立ち行かなくなる中で、民泊よりも初期投資が少なく、開業許可申請も必要ないことから、不労所得モデルの副業として新たな選択肢の一つとなっています。

弊社でも民泊とレンタルスペース両方を運営していますが、現在はレンタルスペースの方が安定して売上が見込めるため、今後の投資計画も進めているところです。

今回は、レンタルスペース投資に関心のある方向けに、物件の探し方・所有物件の活用方法や初期投資など、始め方についてまとめて解説します。

レンタルスペースとは?

レンタルスペース事業は、時間単位で空間を貸し出す不動産賃貸業(一時使用賃貸借による)を指します。該当物件を掲載できる予約サイト「スペースマーケット」の登場によって、にわかに市場が拡大した分野です。

レンタルスペースには様々な種類があり、撮影や演奏などに利用できるスタジオ、貸会議室やホール、ライブハウス、カラオケ、スポーツ施設、公民館などの公共施設、イベント利用できる広場、催事店舗スペースなど多岐にわたります。

その中でも個人事業者による投資が盛んな業態として、小規模な「パーティールーム」「撮影スタジオ」「貸会議室」などがあります。個人オーナーによる施設の場合は、テナントとして入居しお客様に転貸する契約に基づくものがほとんどで、弊社でも、パーティーと個人撮影などに利用可能な貸床30㎡未満の施設を転貸借の形態で営業しています。

この記事では、個人事業者から注目されている上記の業態にフォーカスして話を進めていきます。

レンタルスペース物件の探し方

転貸借形式でレンタルスペースを開業する場合、物件の取得費がかからないため、投資額を低くでき、事業検討のハードルも大きく下げることが可能です。一方、転貸借を許可してもらえる物件は数が少ないことから、以前の民泊と同様に需要と供給が釣り合っておらず、物件探しは難航しがちです。

まずはどこでどんなスペースを開業するか決める

レンタルスペースを開業する際には、一番最初に「どこで・どんなレンタルスペースをやるか」を決めておくのが最も効率的です。パーティールーム・会議室・スタジオなど、何をやるかによって必要な物件の条件は大きく変わるためです。

スペースの種類については、はじめは興味でも構わないと思います。初期投資が少ないのは会議室ですが、作りこみが楽しいのはパーティールームやスタジオでしょう。

レンタルスペースは店舗型ビジネスなので、立地選定は非常に大切です。これも開業するスペースの種類によって狙うべきエリアは変わるのですが、「とりあえず人手の多い新宿・渋谷・池袋駅周辺を見てみよう」など最初にザックリ決めておいた方が望ましいです。

立地に関しては、基本的に「人が集まる場所の駅近く」に出店するのが定石です。上記の新宿・渋谷・池袋は日本でトップクラスに人手が多く、遊びやビジネス等々に無数の人々が訪れる街です。駅利用者も非常に多いため、3駅の徒歩圏内に出店すれば底堅い需要は見込めます(ただし供給も多い)。

駅徒歩は近いほど望ましく、私個人としては5分以内、最低でも7分以内の条件で物件を探すことが多いです。とにかく、需要と供給のバランスを見ながら、いかに需要を発見できるかが場所選びのカギになります。そのためにはエリアの人通りや属性、動線、駅の乗降客数などを見る必要があります。

ポータルサイトで物件もしくは仲介業者を探す

ざっくり立地とコンセプトが決まったら、実際に物件を探す段取りに入ります。基本的には不動産ポータルサイトで事業用物件を探すか、レンタルスペース物件を仲介してくれる会社に連絡するかの二択となります。

ポータルサイトでは様々な物件情報があるものの、その中からレンタルスペース業態を許可してくれる物件は一握りです。オーナー・管理会社・仲介業者いずれもOKでなければ申込ができないため、気になる物件を見つけたら片っ端から問い合わせるようにしましょう。

あるいは、レンタルスペース可能物件を専門に仲介してくれる業者もいくつか存在しますので、そこに問い合わせて物件情報を送ってもらえるようにするという手段もあります。ただし、業者によって良し悪しがあり、自社の利益しか鑑みない会社が幅を利かせている現実もあるので、初心者のうちは評判を辿って慎重に業者選びをすることが肝心です。

物件選びのポイント

用途によって望ましい物件は異なりますが、レンタルスペース用物件を選ぶ際は、以下のような点を満たしているものであれば検討しやすくなります。

  • 駅から近い(徒歩7分以内が目安)
  • 最寄り駅の利用客が多い(最低乗降客数5万人~/日。Wikiで調べるのが早い)
  • 繁華街の中にある
  • 採光が十分にある
  • 洋式トイレ
  • パーティールームであれば、風呂付き(バランス釜は△)
  • 2つ以上の用途で利用してもらえそうな造り(採光面が多く、パーティーと撮影に兼用できる等)

賃料などは安いに越したことはありません。レンタルスペースなど事業用物件は、消費税もかかるうえ居住用物件より賃料等が少々高くなるため、採算が合いそうな物件を探すのは少々大変です。

候補物件の収支計算

気になった物件があれば、賃借の申込を行い(法的拘束力はありませんが、物件を仮抑さえするために必要です)、レンタルスペースを運営した際にどれくらいの収支になりそうかを計算します。

収支計算については、スペースマーケットで競合物件の予約状況と時間単価を確認し、どれくらいの売上が出ているかを推定することから始めます。

レンタルスペースは直前の利用が多い傾向にあるため、私はむこう一週間のみの予約状況を確認し、それを4倍した額を競合物件の売上高として仮定しています。そして、複数の競合物件の想定売上を平均し、そこから予約サイト手数料30%(高い…)を引いた額を実質想定売上として収支表にプロットします。

また、レンタルスペースは業態によって繁閑の差が激しく、パーティールームであれば繁忙期の12月と閑散期の1月とでは倍近く売上の差が出るケースもあるようです。収支計算においては厳しめに見ることが鉄則なので、「閑散期でも利益が出るかどうか」を判断軸にすると良いでしょう。

費用として発生するのは以下のようなものがあります。これもコンサバめの数値を入れたうえで事業性を検証しましょう。

  • 賃料共益費
  • 家具備品 ※後述
  • 消耗品費
  • 清掃費(20㎡台なら毎回2,000円前後が目安)
  • 水光熱費(用途と想定稼働日数から考える)
  • ネット代
  • 不動産契約の初期費用(敷金、礼金、仲介手数料、保証料、保険料、その他費用)
  • テレビ受信料

一つの目安として、想定売上が賃料共益費の2倍程度が損益分岐点と考えておくと良いでしょう。収支計算は最初のうちは難しく面倒かと思いますが、事業の成否には欠かせないポイントですので、全力で取り組んでください。

馴れれば物件を見ただけである程度の感覚値が掴めて、収支計算も含め一日でゴーサインを出せるようにはなります。また、運営代行会社に物件選定から依頼すれば、プロの目からザックリそろばんを弾いてもらえるので、検討しやすくなります(もちろん自身でも収支計算は必須ですが)。

代行会社に任せると売上の10%程度が費用として発生しますが、運用をお任せできて楽だったり、プロの立ち上げノウハウを間近で学べたりするメリットもあるため、弊社では代行会社さんに依頼する選択肢も取っています。

物件のセットアップを行う

収支の合う良い物件を契約できたら、いよいよコンセプトに沿ってレンタルスペースの作りこみを行います。

作りこみに際しては、図面を引いたうえで、壁紙や電飾などの内装、テーブルなどの家具のしつらえ、調理器具や家電、清掃用具、テレビといった備品、撮影機材やパーティーグッズなど、まずはどんどん必要なものをリスト化していきます。

購入するものが決まったら発注をかけ、図面に基づいて各家具備品のセットアップや内装工事を行います。この際、なるべく原状回復に費用がかからないものを選ぶと後が楽です。

セットアップ費用はスペースにより大きく異なりますが、会議室なら最低数万円から始められます。小規模なパーティールームなら30~100万円程度は見ておく必要があります。パーティールームに必要な備品は弊社物件も参考にして頂けます。

なお、セットアップは代行会社に依頼することも可能です。初期費用はかかりますが、プロの目線でコンセプトワークや内装の決定、発注、セットアップ作業を行ってくれます。加えて後述の写真撮影やリスティング作成も行ってくれるサービスが一般的です。

スペースの写真撮影

セットアップが完了したら、見栄えの良い写真を撮影します。プロのカメラマンに発注するのが望ましいですが、自身で撮影するのならば、最低限、ミラーレス一眼もしくは一眼レフカメラに超広角レンズを付けて撮影することをおすすめします。

撮影に際しては、部屋の様々なアングルからのショット、水回り、備品類、調理器具、建物外観などを何パターンか撮っておくと良いでしょう。また、例えばパーティールームであれば、利用中のイメージが湧きやすいように食器類をテーブルに並べるなどして撮影するのも有効です。

写真を撮影したら、PhotoshopやLightroom等の加工ソフトで見栄えを強化します。自分でできない方は、ココナラ等で加工作業のみ外注することも可能です。

予約サイトでリスティング(物件情報ページ)を作成する

写真の加工まで終わったら、最後にレンタルスペースを予約サイトに登録します。基本的には「スペースマーケット」と「インスタベース」の二つに登録すれば良いですが、その他にも貸会議室であれば「スぺイシー」等、いくつか予約サイトが存在します。

リスティングの登録は手順に沿って、写真のアップロード、紹介文の記載、どんな備品があるかの登録などを行い、料金設定をして公開という流れになります。

肝心なのは紹介文と料金設定で、ここには時間がかかります。まずは競合物件を参考にしながらそれぞれを作成すると良いでしょう。これに関しては一概にアドバイスできる類のものではなく、マーケティング力がものを言う分野ですので、じっくりリサーチと勉強を重ねて公開後もブラッシュアップを重ねてみてください。

リスティング公開後も見直しを続ける

リスティング情報を整え、予約サイト上に公開すれば、ようやく予約を受け入れられる体制になり、収益が発生する状態となります。予約が入ると、ゲストとは予約サイト上のチャットでやり取りすることになるので、予約通知メールが入ったらなるべく早めに対応するようにしましょう(自動送信メッセージで入退室のマニュアルを送るのがおすすめ)。

運用を続けていくと物件にレビューが貯まり、どの点がゲストに評価されているのか、あるいは不評なのかが分かってきます。この情報をもとに備品などの追加や料金設定の見直しなどを図り、より予約の入りやすいスペースへとブラッシュアップしていきます。

また上述のようにレンタルスペースは繁忙期と閑散期の差が激しいケースが多いことから、シーズンによって価格調整を行うことも大切です。

まとめ

レンタルスペースは民泊に次ぐ新たなビジネスとしてにわかに注目されており、「代行会社に依頼すれば不労所得モデルを構築できること」「営業許可の取得なしに営業できること」「民泊より初期費用が安いこと」等から新規参入も増えてきています。

どんなスペースを作るかにもよりますが、初期費用100~200万円程度(物件賃借に伴う初期費用込)という比較的少額からスタートでき、代行会社に依頼すれば運用の手間もかからないため、サラリーマンの副業としても相性の良いビジネスとなっています。

一方、予約サイト手数料が非常に高いこと、売上に対する賃料の割合が高くなりがちなことから利益率はあまり高くないため、大きく稼ぐには向いていなかったり、参入障壁が低いために競争激化による収益性の悪化リスクが高かったりする側面もあります。

要するに必ずしも簡単にできるものではなく、副業でも本業でも「事業」として真摯に向き合い、PDCAサイクルによる改善を地道に図って収益性を担保していくことが求められるというわけです。レンタルスペースに限った話ではありませんが…。

とはいえ、初期費用の少なさや手間のかからなさを考慮すると、店舗型ビジネスの中では比較的始めやすいと言えますし、まだ成長段階の市場でもあるので、興味のある方は参入を前向きに検討しても良いのではないかと思います。

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