Airbnbには複数のキャンセルポリシーがあり、施設ごとにどれを適用するかを選択できます。他のOTAに比べると設定の幅は狭い一方で分かりやすいのですが、各ポリシーごとに良し悪しがあるため、迷うホストも多いポイントです。
ここでは、執筆時点で設定されている各キャンセルポリシーの一覧と、それぞれのメリット・デメリットについて解説したいと思います。
キャンセルポリシーの種類
Airbnbに用意されているキャンセルポリシーの一覧と、それぞれのメリット、デメリットを下記します。
柔軟
到着1日前までは全額返金
最も緩いキャンセルポリシーで、「とりあえず予約しておこう」と考えるような軽いゲストからも予約を受け入れやすいため、予約率は最も高くできるポリシーです。一方、相応にキャンセル率も高いため、必ずしも収益の向上に寄与するというわけではありません。
メリット
- 予約が入りやすい
- リスティング順位にプラス
Airbnbでは、キャンセルポリシーが厳しいリスティングよりも緩いリスティングを優先して上位表示するアルゴリズムが設定されています。具体的にどれくらい影響があるのかは明示されていませんが、リスティングの認知度を上げたい場合にはキャンセルポリシーを柔軟に設定しておくのも良いでしょう。
デメリット
- キャンセルされやすい
一方、予約をキャンセルされやすいため、毎月売上の着地予想をするのが難しくなり、経営計画を立てるのに支障が出る可能性もあります。また当然ながら予約が入っている間はその他の予約を受け付けることはできないため、キャンセル率の高さは機会損失コストの高騰にも直結すると言えます。
普通
到着5日前までは全額返金
最も多くの人が設定していると思われるキャンセルポリシーです。宿泊施設全体から見ると少々緩めのポリシーですが、後述の返金不可オプションと組み合わせることでキャンセル率と予約率のバランスを取ることができます。
メリット
- デフォルト設定なので無難、ポリシーでトラブルになる可能性は低い
「普通」と銘打つほどなので、ゲストがこのキャンセルポリシーに不満を覚えて抗議してくることは少ないでしょう。 なるべくトラブルを無くしたい方には良い選択肢になりえます。
デメリット
- キャンセルされやすい
「柔軟」ほどではありませんが、比較的キャンセル率は高いと言えます。
やや厳格
チェックインの30日前までにキャンセルすれば全額返金されます。チェックインの30日前から14日前までの間に確定した予約は、予約後48時間以内のキャンセルに限り全額が返金されます。その後は、チェックイン7日前までにキャンセルすれば50%が返金されます。これ以降のキャンセルは返金不可となります。
2021年6月に導入された新しいキャンセルポリシーです。後述の「厳格」を元に、少し返金条件が緩和されています。執筆時点ではまだ導入事例が少ないのですが、今後採用する施設も増えてくるでしょう。
メリット
- 厳格より予約が入りやすい
- 厳格よりリスティング順位に悪影響は無さそう
デメリット
- 直近の予約が入りにくくなる
厳格
到着7日前までは50%返金、それを過ぎると返金不可。予約後48時間以内の解約では全額返金(これは到着14日前まで適用)
最も厳しいキャンセルポリシーで、キャンセル率を低く抑えられるほか、キャンセル料も回収しやすくなります。一方ゲストの予約のハードルは高くなる傾向にあります。
メリット
- 想定収支が安定する
- キャンセルに予定を狂わされない
キャンセル率が低ければ、現在の予約状況が大きく変動する可能性も低いでしょう。そのぶん、 収支の着地想定も組みやすくなり、今後の事業展開を考えやすくなります。また清掃会社などとの日程調整といった手間も省けます。
デメリット
- リスティング順位に悪影響
- 予約が入りにくくなる
一方でゲストが予約をするには少々心理的ハードルが高くなるため、予約率は下がります。またキャンセルポリシーが厳しいリスティングは上位表示にビハインドするため、競合が多いエリアにあるなど物件によっては設定を避けた方が望ましいと言えます。
返金不可オプション
「返金不可」オプションを設定することで、料金10%割引と引き換えに、ゲストがいつキャンセルしてもホストは受取金を確保できます。
返金不可オプションは上記のキャンセルポリシーに加えて、ゲストがそれを選べるようにするものです。宿泊料の10%割引を受ける一方で、キャンセル料が常に100%になるという条件もしくは通常のキャンセルポリシーの適用をゲストが任意で選べるのです。
メリット
- ゲストの意向でポリシーを決めてもらえる
ゲストが自らの意思でキャンセルポリシーを決定できるため、トラブルになる可能性は非常に低いといえます。また返金不可オプションを選んだゲストが多ければ、収支は比較的安定した状態になります。
デメリット
- 割引が入る可能性を鑑みて料金設定する必要がある
一方、返金不可オプションを設定することで、10%割引が適用される可能性があるため、その可能性を見越して料金設定をする必要があります。
キャンセルポリシーのおすすめは?
一概にどのキャンセルポリシーが良いとは言えないのですが、私個人的には「柔軟」はあまりお勧めできません。
検索順位を高めたり予約率を高めたりしてゲストに認知を広げたい場合には「普通」を、収支の安定を重視したい場合には「厳格」あるいは「やや厳格」から検討すると良いでしょう。キャンセルポリシーは簡単に変更できるため、複数のポリシーを試して検証するのも一つの手段です。
ちなみに弊社では現在、コロナ禍による宿泊市場全体の予約率の低さや、ゲストが予定を読みづらい状況であることから、キャンセルポリシーは「普通」をベースに、返金不可オプションも設定しています。この設定が正しいかどうかは実際のところ分からないので、機を見て他のポリシーの適用も検討していきたいと思っています。
まとめ
Airbnbのキャンセルポリシー設定は、あらかじめ用意された内容から選ぶだけという簡単でシンプルな内容です。しかし、それぞれにメリット・デメリットがあるため、自身の物件の状況や市況を鑑みてポリシーを決める必要があります。
とはいえ、どの設定が正しいのかは設定前も設定後もなかなか分かりにくいため、つどポリシーを変えながら検証し、良いスタンスを見つける必要があるでしょう。
基本的にAirbnbは「宿泊事業の経験者でなくても、簡単に部屋を貸し出して収益を得られる」ことをテーマに置いて管理画面を作っているため、キャンセルポリシーの設定の仕方も同様にシンプルかつ簡単です。迷うポイントではありますが、自社で0からルールを決めるよりは楽なので、宿泊事業初心者の方や民泊デビューの方は積極的にAirbnbを利用してみてはいかがでしょうか。