民泊やレンタルスペース、カフェ、コワーキングスペースなど、何らかの店舗を構える時に考えなくてはならないのがインターネット環境です。一見大したことないように見えて、実は重要かつ悩みがちなのがこのインターネット周りの手配だったりします。
主に悩むポイントとしては「安くて手軽なモバイルWifiか?それとも高速な固定回線か?」「どこのプロバイダーが良いのか?」の2点でしょう。インターネット周りは情報量が多い一方、何がベストの選択肢か分かりにくく迷いやすいのが現実です。
そこでこの記事では、上記2点について迷うことがないよう、業態別にモバイル・固定どちらが向いているのか、それぞれのメリットと注意点はどんなものか、おすすめのプロバイダーはどこか、といった点を共有します。
モバイル・固定回線、店舗にネット引くならどっち?
まず結論から述べます。ズバリ弊社の見解は以下の通りです。
- 民泊>固定回線もしくはモバイルWifi
- それ以外の業態>固定回線
基本的には固定回線を引き、民泊であればゲストの利便性を考慮してモバイルWifiを選ぶという選択肢もアリ、という形になります。
以下、その理由を解説していきます。
固定回線のメリットと注意点
固定回線とは、光ファイバーなどの通信回線を引き込んで利用する、昔から続く一般的なインターネット回線形式のことです。NURO光やフレッツ光、光コラボといったものが、固定回線に当てはまります。
固定回線のメリットは何よりも「通信速度が速い」ということで、これは店舗に来るお客様(ゲスト)の利便性に直結するため、非常に大切なポイントです。
その他のメリットは以下の通りです。
- モバイルWifiと違って盗難の危険性が低い
- 通信速度が比較的安定している
- 複数端末を同時接続しても遅くなりにくい
- 通信制限が基本的に無いため、ギガ(通信容量)を気にしなくて良い
モバイルWifiはゲストに盗まれてしまう可能性が否定できません。しかし、固定回線は建物内の設備や電柱からケーブルを引っ張ってインターネットを利用するため、そもそも盗めない構造になっています(Wifi電波を飛ばすためのルーターが盗まれるリスクはありますが)。
また、通信速度が速いため、複数端末を接続しても遅くなりにくく、モバイルWifiのように時間によってはなかなか繋がらない、ということもなく安定感が高いという点や、通信制限がないのでオンラインゲームやVOD(Prime VideoやNetflix等)を存分に楽しめるというメリットがあります。
民泊やレンタルスペースでは、お客様が滞在中にオンラインゲームや動画鑑賞を楽しむことも多くあります。また動画配信やビデオ通話を長時間行う方もいます。そのため、固定回線が持つこれらのメリットは大きく、ゆえに弊社では基本的に全て固定回線としています。
一方で固定回線には注意点・デメリットもあります。
- モバイルWifiに比べると初期費用、月額費用ともに高め
- プロバイダーが多く、どれを選べばいいか悩みがち
- 高速接続のために「IPv6オプション」の申込が必須
- 初回は設定に悩みやすい
- ネットに接続できなくなった際のリカバリー方法も覚える必要あり
- 導入には工事の調整が必要なため時間がかかる+立会が必要
- 賃借物件の場合、工事には管理会社もしくは家主の許可が必要
モバイルWifiはインターネットに詳しくない人やPCが苦手な人でも簡単に利用を開始できますが、固定回線は申込から工事対応、インターネット接続、接続後の対応など、少々慣れが必要です。
とはいえ、検索すればいくらでも情報が出てきますし、心配することはありません。PCに慣れるよりよほど簡単ですし、インターネットの最低限の知識は何らかのビジネスをやる上では必須なので、初めてでも積極的に選びたい選択肢だと言えます。
気を付けたいのは開通までに時間がかかる点と、開通工事に管理会社もしくは家主の許可が必要になる点です。開業までのスケジュールを逆算して、物件の契約前にプロバイダーへ申込を行ったり、仲介業者さんにネット工事の許可を貰えるよう打診したりすることが必要です。
また、固定回線は工事やルーター購入などがあるぶん、モバイルWifiに比べると初期費用・月額費用ともに少々高額になりますが、お客様に与えるメリットがそれ以上にあり、かつ民泊やレンタルスペースなど長時間滞在する業態であれば予約率にも影響が大きいため、必要な投資と割り切りましょう。
その他、固定回線の高速インターネットを享受するためには、プロバイダーの申込時に「IPv6オプション」を設定する必要があるので、よく確認しておきましょう(デフォルトでIPv6接続のプロバイダーもあります)。申込がない場合はIPv4通信となり、回線の混雑により通信速度が遅くなってしまう懸念があります。
なおIPv6接続は無料のプロバイダーが多いのですが、例えばソフトバンク光の場合には「光BBユニット」の有料契約が必要であるなど例外もあるため、注意が必要です。
固定回線、おすすめのプロバイダーは?
私は自宅へのインターネット導入および民泊・レンタルスペースの開業にあたり、これまで何度も固定回線の開通手続きを行ってきました。そのたびに複数の比較サイトを確認し、何時間も迷って迷って、ようやく皆さんにおすすめと言えるプロバイダーを掴んだので、以下共有したいと思います。
※上記判断はあくまで2021年1月時点での筆者見解です。キャンペーン実施状況などにより最適なプロバイダーは変わりますので、意思決定の前にはご自身でも申込内容をご検討下さい。
個人事業主と法人とで分けた理由は、法人申込が不可能なプロバイダーもあるためです。一応、個人専用のプロバイダーでも「会社名+代表者名」の名義で申し込める場合はあるのですが、決済は代表者名義のクレジットカードや口座に限られる点に注意が必要です。また、法人の申込は対象外となってしまうキャンペーンも多い点にも注意しましょう。
さて、個人事業主であれば選択の幅が広く、NURO光、auひかり、光コラボの3つの選択肢の中からまずは検討する、ということになります。どれを選べば良いかは下記を参考にしてください(2021年1月、筆者見解。フレッツ光は光コラボに費用面等で劣るため除外)。
- NURO光:回線速度が非常に早いので、オンラインゲームを楽しんでもらいたい場合には検討。しかも安い。一方で工事内容が特殊なため、他回線に比べて開通に時間がかかるほか、物件によっては工事が出来ない可能性も高くなる
- auひかり:フレッツ光・光コラボより利用者が少ないぶん高速。携帯がauの場合割引あり。ただしauひかり対応のコンセントが設置されている物件は少ないため、工事費用は満額かかるケースが多い。プロバイダーはGMO、So-net等
- 光コラボ:最も一般的。光コンセントが設置されている物件も多いため、工事費が安く済むケースもある。プロバイダーが多く悩みがちだが、ドコモ携帯ユーザーならドコモ光、ソフバンならソフトバンク光、格安SIM利用者ならBIGLOBE光がおすすめ)
一方、法人契約の場合は会社名義の口座から引き落としが可能になったり、請求書払いを利用できたりするメリットがありますが、契約可能なプロバイダーは多くありません。こちらは回線速度の早いNURO光か、キャンペーンにより料金が安価なSo-netがおすすめです。
モバイルWifiのメリットと注意点
上述のように、店舗のインターネットは基本的には固定回線のほうが望ましいという考えですが、民泊など貸切宿泊施設の場合は、日本で利用できるSIMカードを持っていない外国人ゲストのために、持ち運び可能なモバイルWifiを置いておくという手段もあります。
モバイルWifiは固定回線に比べて契約の手間がかからず、費用も比較的安いというメリットがありますが、一方で固定回線と比較して回線速度が劣り、同時接続によってインターネットが遅くなる、平日の昼休みなどネット利用者が多い時間帯に遅くなるほか、通信制限がある、ゲストに端末ごと盗まれるリスクがある、といったデメリットもあります。
モバイルWifiでは比較的回線速度が速いWIMAXが使いやすいのですが、田舎に行くと繋がらないなど3大携帯キャリアに比べて対応エリアが少々狭いため、事前にエリア確認を行う必要があります。
まとめ
以上、民泊、レンタルスペース、カフェ等々、店舗物件に導入するインターネット回線について解説しました。
弊社見解では基本的に固定回線を引いて、お客様に高速インターネットを楽しんで頂ける環境を作るのが良いと考えています。モバイルWifiに比べて手間や費用はかかりますが、特に民泊やレンタルスペースといった長時間利用を前提とした業態では、それらのコストをペイできるほど予約率にプラスの影響を与えられるかと思います。
固定回線はプロバイダーが多く、さらに各プロバイダー・代理店で提供しているキャンペーンが異なり、負担する費用も変わってくることから、どこで契約すればいいのかは迷いがちです。この記事ではおすすめのプロバイダーも併せて紹介していますが、時期によって料金やキャンペーン内容は変動しますので、最新情報も確認のうえご参考にして頂ければと思います。