民泊の開業許可(届出)の取り方と候補物件のチェックポイント

不動産活用

良さそうな民泊物件が見つかっても、内覧後すぐに申込を入れるのはリスクがあります。なぜかと言うと、民泊のような宿泊業は許可制であり、旅館業法に基づく許可もしくは住宅宿泊事業法による届出の受理がなければ営業することはできず、許可等のために必要な要件を現実的に満たせる物件かどうかを確認しなければならないからです。

ここでは、民泊の許可等を取得するにあたって、具体的に候補物件のどのようなポイントを見れば良いのかをまとめています。

※2021年4月時点の法令に基づいて執筆しています。必要な要件は各自治体によって異なるほか、関係各庁の担当者によっても見解が分かれるため、当記事は基本的事項の参考のみとして頂き、実際に許可等を取得できるかどうかは、必ずご自身で関係各庁もしくは許可等の申請業務を委託する行政書士等へご確認ください。

開業許可取得の手順

民泊を開業するためには、旅館業法に基づく許可の取得あるいは住宅宿泊事業法による届出の受理を済ませる必要があります。いずれも関係各庁への訪問と相談が必要になるため、相応の手間がかかります。

平日に各庁へ赴く時間が取れない方や、自分で許可等の手続きを済ませられる自身がない方は、行政書士等に外注することも可能ですが、以下では自身で許可等を取得する場合の手順について解説していきます。

旅館業法許可の取得

まずは候補物件の所在地を管轄する保健所へ事前相談に行きます。まずは電話でアポを取ってから訪問し、担当者から許可申請の手順等を教えてもらいましょう。この際、各自治体が作成しているマニュアルも受け取っておきます。

なるべくこの段階から寸法(内法面積:壁から壁までの寸法)の入った図面を持参しましょう。許可取得の際にはこの図面をもとに協議を進めることになりますので、建築図面を管理会社から受け取るか、あるいは築年が古いなどで図面や検査済証が存在しない物件の場合には、自ら採寸して図面に書き込んだものを使用します。

保健所での事前相談を終えたら、次は管轄の消防署に行き、図面をもとに、どこにどのような消防設備を備えつければいいか等を教えてもらいます。具体的には自動火災報知設備・誘導灯・非常用照明・消火器をどこに設置すれば良いか、避難経路は問題なく確保できそうか、といった点を確認することになります。

消防法においては、様々な条件緩和規定があります。例えば通常の自動火災報知設備では、一戸建てに備え付けると100万円以上の投資が発生することが普通です。しかし、延床面積300㎡以下で階数が2以下の木造住宅など、一定の要件を満たす小規模な物件であれば、数十万円の投資で済む「特定小規模自動火災報知設備(通称:特小)」の設置で足りることがあります。また、避難経路を容易に視認できる間取りであれば誘導灯や非常用照明の設置も免除される場合があります。これらの緩和規定についてももれなく確認しましょう。

その後は自治体の建築課に赴き、建築基準法に適合しているかどうか、また用途変更は必要ないかどうか、旅館業が取得できる用途地域にあるかどうかといったことを確認します。注意しておきたい点は、保健所・消防署との協議では図面の寸法を内法面積で記載する必要があるものの、 建築基準法においては壁芯(壁の中央から計測した寸法)での記載が必要になるため、それぞれの図面を用意する必要があるということす。

壁芯寸法を自身で正確に計測するのは難しいですが、少々大まかでもさほど問題はありません。しかし、出来れば建築図面や、設計士に書いてもらった図面を持参した方が話が早く進みます。担当者によってはそれらが無いとまともに相手をしてくれない場合もあります。

これらの事前協議において許可取得に問題がないことが確認できたら、実際に保健所と消防法の要件を満たすための改修や寝具・備品類等の設置を行います。また無人で運営する施設の場合は、所定の時間内に施設に駆けつける体制を作る義務が規定されるため、その要件を満たすためのオペレーションも構築する必要があります。自身で民泊に駆けつけられるようにするか、あるいは民泊運営代行業者や清掃業者などに駆けつけを依頼するか決めておきましょう。

また、自治体によっては、施設の開業前に近隣住民に向けて旅館業開業のお知らせを物件に掲示しておかなければならなかったり、説明会もしくは戸別訪問にて事業概要を説明する義務が規定されていたりします。許可申請日から数えて2~3週間ほどの告知期間が必要になるため、早めに準備しておくことが大切です。

消防設備の導入が完了したら消防署に現地調査を依頼し、問題がなければ消防法令適合通知書を交付されます。その後、必要書類を整え、保健所に申請費用を支払って許可申請を行い、現地調査を行って問題がなければ許可を取得できます。

住宅宿泊事業法による届出

住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法においても旅館業とほぼ同様の流れになります。ただし建築基準法上は住宅の扱いのままとなるため、用途変更や旅館用途に準じた改修が原則として必要なくなるなど、建築課との協議はさほど難しくない点はメリットになります。

また旅館業とは届出の方法が異なり、必要書類も異なります。旅館業許可の場合は保健所の窓口で許可申請を行う必要がありますが、住宅宿泊事業法については総務省の民泊ポータルサイトから必要書類をアップロードして自治体に届出を行うという形になります(使いづらいので少々根気が必要です)。

届出を提出した後には書類審査が行われ、問題がなければ届出が受理されます。後日保健所の職員が現地調査に入り、そこで問題がなければ営業を開始できます。このように、「届出」と銘打っているものの、実質的には「許可」が求められるため、慎重に手続きを進めましょう(特に消防法は旅館業と同一の扱いとなり、物件によってはハードルが高いと言えます)。

許可が取得できる物件の見分け方

以下では、問題なく開業許可等が取れるかどうかを判断するための物件の見方について、主なものを解説していきます。

なお、これら以外にも確認しておくべきポイントは様々あったり、自治体や担当者によって判断が異なる場合もあったりするため、必ず物件を契約する前に保健所や消防署等への事前相談を行い、許可等が取得できるかどうかを判断する必要がある点には注意してください。

違法建築ではない

違法建築状態にある物件は、旅館業・住宅宿泊事業法ともに開業することはできません。特に築古かつ増築が行われている物件は違法建築物であるケースが比較的多いため注意が必要です。

違法建築となる代表的な例としては、行政に許可を得ず無断で増築を行ったことにより、建ぺい率や容積率がオーバーしてしまった物件や、外気に面した窓のない居室が発生した物件(該当の部屋を納戸として利用するなら可)、必要十分な採光が確保できなくなってしまった物件、建築確認を取得した際の設計図面とは異なる内容で施工され、建築基準を満たせていない状態で完了検査も受けていない物件(耐震偽装マンション等)などがあります 。

もし検討中の物件が違法建築状態にあると判明した場合には、オーナーに違法状態を是正してもらうしかありません。それが出来なければ、その物件での開業は不可能です。

市街化調整区域内ではない

市街化調整区域では、基本的に旅館業法・住宅宿泊事業法ともに開業許可等を受けることはできません。自治体によっては住宅宿泊事業法であれば開業可能とする場合もありますが、建設課との調整が必要となります。

市街化調整区域は「市街化を抑制する区域」を指し、農地や山林などが開発されずに残っている地域です。田舎ならではの民泊を開業をしたい場合には、市街化調整区域ではないかどうかを確認しましょう(非線引区域や都市計画区域外の物件は狙い目です)。

玄関帳場を設けられる区画があるか

旅館業法においては、原則として玄関帳場(ホテル等のフロントのこと)を設け、対面でゲストのチェックイン対応をする必要があります。ただし、監視カメラの備え付けや宿泊者名簿の記入・チェックインの案内フローの整備などを行い、かつ緊急時に施設へ所定の時間内に駆けつけることができる体制(ICTによるチェックイン体制)を構築する場合には、玄関帳場が不要となる自治体がほとんどを占めます。

玄関帳場の設置が必須となる自治体では、チェックイン受付や事務作業ができる専用の区画を設ける必要があるため、物理的にその用意が可能かどうか、そしてゲストの滞在中、帳場内などにスタッフが常駐できるかどうかを検討しなければなりません。なお、これは無人型をベースとする民泊の業態にはそぐわない規定であるため、該当の自治体(東京都千代田区、中央区など)で民泊開業を検討する際は注意が必要です。

駆けつけスタッフが見つかるか

上記のように、無人型民泊を運営する場合には、緊急時に所定の時間内に施設へ駆けつけられる体制を構築する必要があります。一般的に、旅館業においては10分(移動手段問わずが基本。自治体によっては「徒歩10分以内」などの指定あり)以内、住宅宿泊事業法においては30分~60分以内を要求されることが多いようです。

自分自身あるいは自社スタッフ、業者への外注によってこれらの要件を満たせるかどうかを確認する必要があります。外注の場合は月額費用+駆けつけ対応費用が発生することが一般的です。なお、郊外や田舎などでは駆けつけ対応が可能な業者が見つからないというケースもあるため、特に旅館業での営業を考えている場合は注意しましょう。

マンション・アパートの場合の見分け方

以下ではマンション・アパートといった共同住宅で民泊を行う場合に確認しておきたいポイントをまとめています。

営業許可に加え管理規約も確認する

マンションやアパートといった共同住宅においては、民泊を開業するにあたって管理組合もしくは管理会社・オーナーの許可を書面でもらい、それを保健所に提示する必要があります。そのため、管理組合などに営業を許可する旨の書面をもらえるかどうかは必ず確認しておきましょう(管理規約の写しや契約書等で足りる場合もあります)。

消防設備の設置状況を確認する

また共用部と専有部にそれぞれ自動火災報知設備が設置されているかも確認しておきます。一定規模以上の共同住宅には自火報の設置が義務付けられているため、該当の物件であれば消防法の要件をクリアできるかどうかという心配は大きく減るうえ、初期費用も少なくなります。

注意したいのは専有部・共用部ともに自火報の設置がない場合です。この場合、建物全体における民泊の合計使用面積などから、専有部のみに消防設備を設置すれば足りるか、もしくは建物全体に設備を導入しなければならないかどうか等が変わります。もし建物全体への消防設備の設置が必要になった場合、現実的に旅館業等の取得は不可能だと考えた方が良いでしょう。

他区画での営業面積(宿泊、特殊建築物)を確認する

上記のように、宿泊用途やその他店舗などの特殊建築物用途に使用される面積がどれくらいあるかどうかを確認することも必要です。特殊建築物とは不特定多数の人が出入りするために通常よりも厳しい建築要件を適用しなければならない建物のことで、用途としては宿泊施設や商業施設、共同住宅などが挙げられます。建築基準に加え、消防法の規定も通常用途に比べ厳しくなります。

許可申請の際には、建物内に民泊施設や飲食店、サロンなどの店舗がどれくらい入居しているかを把握しておきましょう。できれば対象テナントの合計面積を把握するため、管理会社に書類等を確認できないかと打診しておくことも必要です。

戸建の場合の見分け方

戸建て物件の場合、共同住宅よりも見るべきポイントが増えるので少々難易度が上がります。物件によっては許可取得のためにかなりの費用が発生する場合もあるため、注意しながら確認していく必要があります。

トイレの手洗い場を確保できるか

保健所に求められる要件としてネックになりやすいのがトイレの手洗場の確保です。トイレの横や内部に洗面台などの手が洗える設備が必要になるのですが、築古物件を中心にこれを設けていない住宅もあります。その場合新たに洗面器などを設置しなければならず、数万円程度の投資が必要になります。自治体によってはトイレタンクについた手洗い設備でも許可がおりる場合はありますが、少数派のようなので保健所に確認しましょう。

階段は急でないか

また、築古物件では階段が現行の基準に合わない寸法であるケースもあります。建築基準法では階段の幅・踏面(ふみづら:足を置く部分の縦幅)・蹴上(けあげ:1段の高さ)についてそれぞれ必要とされる寸法があり、昔ながらの急な階段ではその要件を満たすことができません。

この場合、建築基準法に適合しないため、階段を現行基準に適合させるように改修する必要があります。ただし、費用は数十万円程度かかるほか、物理的に改修が不可能な場合もあるため要注意です。

接道と避難経路を確認する

加えて、前面道路などの接道が法令に適合しているかどうかも確認が必要です。具体的には、再建築不可の物件では旅館業の取得は基本的に不可能だと考えた方が良いでしょう。また東京都では条例により、土地が道路に接している幅が4メートル以上なければ旅館業の開業は不可能となります。これらの要件を満たせない物件の場合、住宅宿泊事業法でのみ開業が可能となるため注意しましょう。

その他、物件のチェックポイント

要件を満たさなければ営業ができない、というわけではないものの、今後の収益やオペレーションに影響するためにチェックしておきたい点についても挙げておきます。

収容人数は客室面積と水場で制限がかかる

民泊は収容人数が多い物件ほど高単価で運営でき、利益率が向上します。そのため一人でも多く宿泊できるように許可等を取得したいところですが、ゲストが狭い空間にすし詰めになったり、宿泊する上で不便を感じたりしないよう、旅館業法・住宅宿泊事業法では客室面積とトイレ・浴室の数によって収容人数の上限が変わります。

具体的には、客室(ゲストが利用できる床の面積を指し、押入や床の間などを含めない)面積に関してはゲスト1人あたり3.3㎡以上(簡易宿所)もしくは1室7㎡以上(旅館・ホテル。ベッドを置く場合は9㎡以上)といった要件が規定されます。

またトイレと浴室は、旅館業法施行令等によれば「適当な規模のものを設ける」ことが必要とされており、具体的な数の規定は各保健所により大きく異なりますが、一般的には以下のような目安で規定されることが多いようです(あくまでも目安であり、実際に必要な数は図面をもとに保健所に確認してください)。

  • 定員5人以下:トイレ、浴室とも1以上
  • 定員10人以下:トイレ2以上、浴室1以上
  • 定員15人以下:トイレ3以上、浴室2以上

十分な収納があるか

意外と盲点なのが「十分な収納があるか」という点です。押入や物置、納戸が少ない場合、替えのリネン類やタオル、補充用の消耗品、その他備品などが収まりきらなくなる可能性があるため注意が必要です。

また、旅館業法においてはリネン室(リネン庫)を設ける必要があり、さらにゲストが勝手にリネンを持っていかないよう施錠する必要もあります。この要件を満たすには、専用の押入やクローゼットにカギを設けるのが一般的なやり方ですが、リネン庫として一つ収納を使用しても、まだ十分に備品等が収納できるかどうかは考えておいた方が良いでしょう。

まとめ

民泊の開業許可等を取得するためには、様々な規定をクリアしなければならず、そのため現実的に民泊が開業できそうな物件かどうかをチェックしなくてはなりません。

確認が必要なポイントは数多く、また旅館業法・住宅宿泊事業法でそれぞれ規定が異なります(旅館業法は厳しい)。特に注意すべき点として、法令に違反した物件でないかどうか、消防設備への投資額がどれくらいになるか、水回りの改修・追加は必要になるか、建築基準法に適合していない(既存不適格)箇所はないか、といったものが挙げられます。

最初のうちは覚えるべきことが非常に多く苦労しますが、行政書士などに許可等の申請作業を依頼することもできるほか、慣れてしまえば物件の内覧時に許可が取れそうかどうかをザックリと判断することも可能になります。

具体的な許可・届出に必要な要件は自治体ごとに異なるものの、保健所や消防署等が手順書をもとに教えてくれるため、物件を借りる(購入する)前に相談を重ね、開業に必要な要件を満たせるかどうかを調べましょう。自身で相談や許可申請・届出を行うのはさほど簡単ではありませんが、平日に時間の作れる方はぜひチャレンジしてみてください。

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