弊社では、2020年7月より福岡市で、11月より箱根で宿泊施設の運営を開始しました。
皆さんご存じの通り、今や新型コロナウィルスの影響で宿泊業者は大ダメージを受けており、GOTOトラベルの実施を受けてもなお厳しい経営状況が続く宿泊施設は珍しくない状況です。
そうした中、完全に逆張りと言えるようなタイミングで民泊に参入したのですが、その途中結果をまとめたいと思います。
民泊業界は依然厳しく、収支は軟調
まずは市況から。宿泊予約サイト(OTA)での予約状況を見てみても、また自身の感覚値としても、民泊ビジネスは全体的に低調な傾向にあります。
GOTOトラベルの影響が大きく、週末の予約が入る施設は多いのですが、外国人観光客がいないぶん平日の宿泊や連泊が入らない状況が痛手です。特に都市部では感染リスクを嫌気する流れがまだ強いのか、高級ホテル以外の稼働は依然として厳しい状況です。
元々民泊は1戸で運営されるスキームであるためスケールメリットを活かせず、売上に対する清掃費の割合が高くなります。そのため、連泊ゲストを集めることによって一組あたりの売上を高め、清掃費の割合を低くすることが利益確保には欠かせません。
しかし、日本人観光客は「近場から一泊」という予約を行うことが多いため、民泊は宿泊施設の中でも最も利益率を削られており厳しい業態だと言えます。
ゲストは宿泊地から遠い場所に住んでいるほど宿泊日数が伸びるという統計があるため(JNTOの資料が分かりやすいです)、外国人観光客、特に欧米のゲスト予約が復調するまでは、民泊は「赤字を出さない」ことが目標となるような状況が続くのではないでしょうか。
弊社民泊の状況
弊社の箱根・福岡市の民泊は上記の市況通りの運営状況で、「いかに赤字にならず持ちこたえるか」が現在の目安になっているのが正直なところです。
箱根は首都圏内での週末予約が強いのですが、一方で土曜日以外の予約はほとんど入りません。外国人観光客がおらず、旅行を自粛する高齢者も多いことから、平日に宿泊できるゲストはどうしても少ないのです。大学生の冬・春休みに期待したいところです。
福岡は依然厳しい状況が続きますが、パーティ用途などの時間貸し予約、マンスリー賃貸などの引き合いもあるため、何とか赤字幅を抑えることができています。都心部にあるため、宿泊以外にも多毛作ができるのは大きなリスクヘッジになると実感しました。
総じて、収支は厳しいものの十分に来年まで運営できる見込みです。インバウンド回復にしたがって少しずつ連泊予約も増え、収支も改善していくと期待しています。
コロナ禍でこれから考えるべきこと
宿泊業界はどうしても感染症や台風のような災害、あるいは戦争や国交断絶などの国家リスクによって予約状況に大きな打撃を受けやすい傾向があります。ゆえに、コロナ禍が続く現在においては、リスクヘッジが鍵になってくるのではないかと思います。
民泊の具体的なリスクヘッジ策としては、具体的に以下のようなことが考えられます。
- SNSやオウンドメディアで宿や地域の魅力を発信し、将来顧客を開拓する
- 宿泊だけでなく日帰り・時間貸し利用やマンスリー賃貸、他用途への転用なども併走させる
- ターゲティングを変更し、新たな設備などを導入する
- しばらく自宅として住む
このうち最も再現性が高い(実施しやすい)のは2と3でしょう。都心部などの利便性が高い立地であれば、マンスリーやレンタルスペースとしての引き合いは期待できるので、積極的に検討すると良いかと思います(レンタルスペースとの併用は面倒も多いのですが…)。
また「ターゲティングを変更」という点に関しては、例えば今まで外国人観光客向けにコテコテの和風なしつらえの民泊を経営していた場合、和風テイストが好きな日本人や、鬼滅の刃ファンにターゲットを変え、彼らが喜びそうな設備を導入する、といった感じです。
といっても、ガッツリ設備投資にお金をかけても回収が見込みづらい状況ではあるので、「少額で効果のありそうなものは何か?」をじっくり考える必要があります。弊社では福岡民泊に対して、地元民や団体出張者に向けたバリューアップを図っています。
勝手な意見ですが、鬼滅ファンをターゲットにするのは非常に良い気がしてます。グッズを置くだけなら数万円程度で十分ですし、コミック全巻とかコスプレグッズ(羽織やウィッグとか)を置いてもさほど費用はかさみません。鬼滅コラボしたダイドーの缶コーヒーが売上爆増しているのを鑑みると、版権ギリギリの所で攻めるのもアリかと思います(自己責任でお願いします…笑)。
ちなみにオウンドメディアやSNSでの発信は、時間がかかるうえに民泊自体の明確なコンセプトとターゲティング、そしてSEO対策などの専門スキルが必要になるため難易度が高いのですが、長期的な集客が見込める施策です。ただし、同じコンセプトの貸室を複数運営しているような方でなければ、労力ベースではペイしづらいかなとも思います。ホテル向けの施策ですね。
おわりに
コロナ禍で宿泊施設の二極化が進む中、勝ち組となっているのは「ラグジュアリーなホテル・旅館」と「唯一無二の宿」の二つという傾向です。弊社でも、ジブリ風のインテリアが独特な箱根民泊は堅調な一方、コンセプトを磨ききれていない福岡民泊は厳しい状況になっています。
リッツ・カールトンや強羅花壇(箱根の高級旅館)のような高級宿を目指すには設備投資や教育コスト(営業者自身も含む)が高いので困難ですが、日本人相手にも響く唯一無二のコンセプトは追及する価値があるかと思います。
ターゲット層が求めているものは何か、彼らは民泊での宿泊にどんなものを求めているのか、弊社でもそれを深く考えて、さらに民泊のバリューアップができたらと思っています。最近流行りの言葉でいうUX(ユーザー体験)設計ですかね。がんばるぞい。