不動産大家が民泊を行う際の収益性と法的リスクは?事業参入の判断軸

既存の賃貸物件の収益性を高める手段として、「民泊(宿泊事業)」への参入に関心を持つ不動産オーナー様や管理会社様が増えています。

しかし、民泊は「不動産賃貸業」というよりは「宿泊サービス業」の側面が強く、従来の賃貸経営とは全く異なるノウハウが求められます。「儲かりそうだから」という理由だけで安易に参入し、法的トラブルや想定外のコスト増に直面するケースも少なくありません。

本記事では、社内での事業検討に必要な「収益シミュレーション」と「法規制の整理」を簡潔に提示し、民泊事業への参入形態(自社運営か、民泊向け賃貸か)を判断するための材料を提供します。

1. 【数字の比較】一般賃貸 vs 民泊運営の収益シミュレーション

まずは、最も関心の高い「収益性」について比較します。民泊は季節変動などによって客単価や稼働率が大きく左右されるため、固定の賃料収入があることと比べれば「水物」と言えますが、成功した場合の爆発力は桁違いです。

モデルケース:東京都内の1LDKマンション(40㎡)

項目 A:一般賃貸(住居) B:民泊運営(自社)
月間売上(家賃) 150,000円
(固定)
480,000円
(1泊2万円×24日稼働 *稼働率80%)
運営経費(月) -7,500円
(管理委託費5%)※共用部分経費等は除外
-164,000円
(OTA手数料15%、清掃費、光熱費、Wi-Fi等)
手残り(NOI) 142,500円
316,000円
特徴 安定・低リスク・低リターン 高リスク・高リターン(約2.2倍)

※上記はシミュレーションであり、民泊の稼働率や単価は立地・時期により大きく変動します。

このように、経費を差し引いても、民泊運営では一般賃貸の2倍以上のNOI(営業純利益)を生み出すポテンシャルがあります。この「収益性の高さ」こそが、不動産事業者が民泊に注目する最大の理由です。

2. 【法律の壁】「民泊3法」の違いと参入ハードル

しかし、日本の宿泊市場は厳しい法規制の下にあります。どの法律に基づいて運営するかで、収益の上限や参入ハードルが劇的に変わります。

法制度 旅館業法
(旅館・ホテル、簡易宿所など)
特区民泊
(国家戦略特別区域法)
民泊新法
(住宅宿泊事業法)
営業日数 365日可能 365日可能 年度間最大180日まで
※条例により異なる
宿泊要件 制限なし
(1泊からOK)
2泊3日以上
の滞在が必要
制限なし
エリア 全地域の用途地域による
(住居専用地域は原則NG)
認定自治体のみ
(大田区、大阪市など)
ほぼ全自治体で営業可能
(「週末のみ営業可」規定に注意)
ハードル 高い
(ホテル・旅館への用途変更が必要)
中程度
(用途変更不要な場合あり)
低い
(住宅からの用途変更が不要)

参考:観光庁 民泊制度ポータルサイト「民泊制度の概要」

収益を最大化するには「365日営業」が必須ですが、それにはハードルの高い「旅館業法」か「特区民泊」での営業許可を取得する必要があります。用途変更が必要ないぶん手軽な「民泊新法(180日制限)」では、残り半分の期間をマンスリー賃貸などで埋め合わせる必要があり、運営難易度が上がります。

3. 自社運営の課題:法務・税務・組織の「見えないコスト」

シミュレーション上の数字は魅力的ですが、不動産会社が自社で民泊運営(直営)に乗り出す場合、以下の「見えないコスト」を覚悟しなければなりません。

① 組織体制の構築(24時間365日の対応)

民泊はサービス業です。深夜の鍵紛失、Wi-Fiが繋がらない、騒音クレームなどの宿泊客対応を24時間体制で行う必要があります。既存の管理部(9時〜18時営業)のリソースだけで対応するには無理があります。また、最低限英語で電話対応を行えることも必要になります。

② 消費税の課税問題

居住用賃貸収入は原則「非課税」ですが、民泊収入は「課税売上」となります。自社で運営する場合、課税売上割合の変化により、会社全体の消費税納付額や仕入税額控除の計算に大きな影響を及ぼす可能性があります。

特に民泊の場合、AirbnbやBooking.comといった海外プラットフォームを利用することが一般的になるため、消費税の取り扱いについては税理士等への確認が欠かせません。

③ 運営品質の担保

民泊でも、ホテルのように清潔さがなければレビュー評価(口コミ)が下がり、すぐにうまく集客できなくなってしまいます。清掃会社に委託するもしくは専門の清掃チームを確保し、質の高い清掃ができる体制を構築する必要もあります。

また、①で述べたように宿泊客からの問い合わせ対応も適切に行う必要があります。回答まで1時間以上かかってしまう、誤った回答やぶしつけな回答で宿泊客を困らせてしまう等のミスが発生してしまうと、これも評価を落とす原因になります。

4. 第3の選択肢:プロと組む。「運営委託」か「民泊賃貸」か

ここまで見てきた通り、民泊事業は高い収益性を秘めている反面、自社単独での運営(直営)には組織的・法的な負担が伴います。

そこで現実的な解となるのが、民泊運営のプロフェッショナルとパートナーシップを組むことです。関わり方には、大きく分けて「A. 運営委託(MC)」「B. 民泊向け賃貸(ML)」の2つのスキームがあります。

A. 収益最大化を狙う「運営委託」

物件のオーナーは貴社のまま、実際の運営実務(集客、清掃、顧客対応)のみを運営会社にアウトソーシングする形式です。一般的に「民泊運営代行サービス」と称されます。

  • 仕組み:宿泊売上はすべてオーナーに入り、そこから清掃費などの諸経費や「運営代行手数料(売上の15〜20%程度)」を支払います(代行会社が売上から経費を控除して振り込む形式も一般的です)。
  • メリット:売上が上振れた際の実入りが大きく、インバウンド好況の恩恵をダイレクトに享受できます。
  • デメリット:売上が下がった場合のリスクもオーナーが負います。閑散期や災害時などは収支が悪化する可能性があります。運営品質は代行会社によって大きく左右されます。

B. 安定と手離れを重視する「民泊向け賃貸(ML)」

運営会社を「テナント(借主)」として物件を賃貸する形式です(マスターリース)。

  • 仕組み:実際の宿泊売上がいくらであっても、オーナーは毎月決まった「固定賃料」を受け取ります。
  • メリット:運営リスクはすべて借主(運営会社)が負うため、オーナーは安定収益を得られます。事業用として貸すため、居住用相場より高い賃料設定が可能です。
  • デメリット:運営が大成功して売上が爆発的に伸びても、オーナーの受取賃料は固定のままです(アップサイドは取れません)。

どちらを選ぶべきか? 比較表

比較項目 A. 運営委託(MC) B. 民泊賃貸(ML)
オーナーの手取り 売上連動(変動) 固定賃料
リスク オーナーが負う 運営会社が負う
初期投資 家具家電・消防設備などはオーナー負担 運営会社と交渉可能(内装費負担なしのケースも)
おすすめの企業様 多少のリスクを取ってでも利回りを最大化したい 手間をかけずに居住用以上の安定収入が欲しい

このように、貴社の「リスク許容度」と「狙いたい利回り」によって最適なスキームは異なります。

5. まとめ:貴社にとって最適な参入スタンスは?

人口減少時代において、インバウンド需要を取り込むことは不動産事業にとっても命題になります。その取り込み方として最もスタンダードなのが民泊ですが、運営には「直営」「委託」と「賃貸」の3通りがあります。

  • 収益性を重視し、宿泊事業のノウハウを蓄積して新規事業部を作る「自社運営」に挑戦
  • 組織作りなどの手間は省きつつ、民泊の収益性を求めたい
    「プロに運営を委託」する
  • 手間をかけずに保有物件の利回り(NOI)を向上させたい「民泊向け賃貸」を選択

弊社は民泊運営のプロフェッショナルとして、上記のどのパターンにも対応可能です。「自社で運営してみたいがサポートが欲しい」というご相談から、「運営は丸投げして、高い家賃だけ欲しい」というご要望まで、貴社の経営戦略に合わせた最適なプランをご提案いたします。

まずは、お手持ちの物件が「どれくらい稼げるのか?」のシミュレーションから始めてみませんか。

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