民泊譲渡(居抜き)案件のメリットと注意点、物件選びのポイント

コロナ禍により民泊の撤退が相次ぐ中で、にわかに居抜き物件の数が急増したのが2020年の出来事です。以降も撤退する物件は散見され、現在でも居抜き物件はたまに見かけます。

弊社も民泊の居抜き物件は契約した経験がありますが、開業までに必要な手間やコストが大きく削減できるという大きなメリットを感じた一方で、検討する際には注意が必要な点もあると感じています。

今回は民泊の居抜き物件のメリットと検討する際の注意点やポイントについて、まとめて解説していきますので、参考にしてください。

民泊居抜き物件のメリット

民泊の居抜き物件は、通常の物件と比べて複数のメリットがあります。

開業準備に手間がかからない

居抜き物件はすでに家具備品や各種掲示物がセットされている状態なので、基本的にそのままの状態でも営業をスタートすることができます。家具や備品の選定から開梱・設置といった作業にはかなりの時間がかかるため、これらの作業を省略できるのは非常に大きなメリットとなります。

通常、民泊物件の入居から開業までには、最低でもおよそ2ヶ月から3ヶ月ほどの期間を見込まなくてはなりません。その中で家具や備品のセットアップにはだいたい2,3週間程度はかかると見ておいた方が良いため、この期間を一気に短縮できるのもありがたいポイントです。

開業費を安く抑えられる場合がある

物件にもよりますが、自身で家具や備品を選定した場合に比べて開業費を安く抑えられる場合もあります。弊社ではファミリータイプの居抜き物件をこれまでに2つ契約しましたが、どちらも自社でセットアップを行うよりも(おそらく)安い費用で造作譲渡を受けることができました。

そうした物件は、特に採算が合わずに撤退する物件の場合に多くみられます。逆に順調に利益が出ていて、その収益をベースに譲渡価格を設定しているような物件の場合は、セットアップ費用よりも譲渡価格の方が高額になる可能性が高いといえます。

営業許可を取れる物件であることが分かる

民泊物件を選ぶ際に気がかりな点は、その物件が本当に旅館業法もしくは住宅宿泊事業法による営業許可(届出受理)を取得できるかどうかということです。特に築古の戸建や雑居ビルなどは現行の建築基準法や消防法に抵触する物件も散見され、実質的に許可を取得できない物件も珍しくありません。

しかしすでに営業実績のある物件であれば、許可が取れるかどうかを心配する必要は基本的にはありません。ただし、後述の通り例外はあるため、建築士や防災業者、行政書士といったプロに確認をしてもらうのが望ましいでしょう。

民泊居抜き物件の注意点

民泊の居抜き物件には様々なメリットがある一方で、注意しておかなければならない点もあります。

収益性が高い物件だとは限らない

居抜き物件の中には、収益性が悪く撤退せざるを得なくなって譲渡に出されているものもあります。収益性の低い理由は様々ですが、その原因がどこにあるのかはきちんと分析して答えを持っておく必要があります。

少し内装を入れ替えるだけでバリューアップが図れ、収益性を確保できると見込める物件なら良いのですが、問題が立地や間取りなど自身では変えることが難しい要素にある場合は、その物件は見送ることになる可能性が高くなるでしょう。

トラブルの種が隠れている場合もある

居抜き物件に限ったことではありませんが、民泊の場合は近隣トラブルのリスクが高いため、その物件の近隣住民とトラブルに発展した経歴があるなど、見えないリスクが顕在化している物件もあります。これらのリスクについて、意図的かどうかにかかわらず、前テナント事業者や仲介業者からの説明が漏れる可能性も十分に考えられます。

あらゆるリスクを根掘り葉掘り確認するのは現実的に厳しいのですが、近隣トラブルや設備関係のトラブル、大家または管理会社との関係性に問題がないかどうかなど、よくあるリスクについてはこちらからヒアリングを行いましょう。

違法民泊物件の可能性もある

居抜き物件はすでに許可を得て運営していた実績があるぶん、許可が取得できるかどうかに気を揉む必要がないと上述しましたが、ここでは例外として、許可取得のために手を加えなければならなくなる事例を紹介します。

住宅宿泊事業法物件にたまに見られるのが、消防法の要件を満たしていない物件です。本来、旅館業も住宿法も、営業を行うには消防法に適合していなければなりませんが、住宿法の届出申請においては、それを証明する「消防法令適合通知書」の提出を義務としていない自治体も多く、「消防署と協議していることを証明するだけ」で通せてしまう場合があるのです。

そのため、本来必要なはずの自動火災報知設備や避難誘導灯などの設置がなされないまま営業されている物件も中には存在するのです。当然、その状態で宿泊営業を行っている場合、消防署員の査察が入ったら一発でアウトになり、営業停止になる可能性もあります。

居抜き物件でも、火災報知設備や誘導灯など、消防法令に適合しているかどうかは確認しておきましょう。カーテンやラグが全て防炎素材であるかどうかもチェックして下さい。

その他、建築基準法違反の物件も散見されます。基本的に再建築不可の物件や接道幅が4m未満の物件では、旅館営業を行うことができません。また非常用照明が適切に設置されていない物件もあるため、こちらも確認が必要です。

民泊居抜き物件を選ぶ際のポイント

上記のメリットと注意点を踏まえ、民泊の居抜き物件を選ぶ際にどのようなポイントに注意すれば良いのか確認しておきましょう。

収支計算と需要予測は綿密に行う

全ての基本ですが、収支計算と需要の予測は綿密に行いましょう。人気物件の場合、前営業者の収支表を見ることができる場合もありますが、鵜呑みにしてはなりません。都合のいいように改ざんされている場合もあるほか、市況も当時と今とでは異なるためです。

前営業者の運営情報において参考になるのは、収支よりもレビューの中身です。過去に運営されていたリスティングを共有してもらい、レビュー点数と件数がどれぐらいあるか、レビューにはどのような内容が書かれているかを確認しましょう。

特に大切なのはデメリットや不満の部分です。一つ一つそれらを洗い出して、現状そのポイントが改善されているかどうかを確認すると良いでしょう。改善がなされていれば追加の投資額は少ないと想定できますし、改善されていなければ、是正することで集客力を上げられる期待が持てます。

リーガルチェックをしっかりと行う

居抜き物件を契約する際には、造作譲渡等の契約条件をよく確認する必要があります。居抜き物件は事業譲渡扱いとなっている場合もあり、その際には譲渡費用のうち「いくらが造作譲渡費用で、いくらがノウハウ等の無形資産に係る費用なのか」を明確に把握することが必要なため、それらの情報が契約書に盛り込まれているかも確認しておきましょう。

条件交渉も怠らない

また、造作譲渡費用などは交渉することが可能です。基本的に中古の備品類を譲渡してもらう形になるので、それらの状態の良し悪しによって、本来の備品等の価値は変わってくるでしょう。実態と比べて譲渡費用が高いと感じたらディスカウントを打診してみるのも大切です。

その他、「この備品はいるけど、これはいらないから処分してください」などのリクエストも通せる場合があるので、交渉してみて損はありません。ただし、あまり要求が多すぎたり厳しすぎたりすると契約を断られる可能性もあるので、「お互いにメリットのある提案かどうか」を意識したうえで交渉範囲を決めておくと良いでしょう。

まとめ

民泊の居抜き物件には、手間と費用のかかるセットアップが大幅に楽になるというメリットがあり、コストパフォーマンスの観点から、居抜き物件を見つけたら積極的に検討したいところです。

しかし一方で、必ずしも現状のまま営業許可が取得できるとは限りませんし、利益が出せる物件である保証もありませんので、なるべくプロに同行してもらった上で現地調査を行い、また収支想定をよく精査し、自身の判断でGOサインを出す必要があります。

居抜き物件は普段ではなかなか見つかりませんが、トランビなどのM&Aサイトや不動産ポータルサイト上で見かけることもあります。もし面白そうな物件が出てきた場合には、この記事も参考にしていただき、検討を進めてみてください。

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