民泊用のインターネットはどれが良い?3種類のメリット・デメリットを比較

民泊にはゲストが利用できるインターネット環境を用意することが欠かせません。特に外国人ゲストの中には日本で使えるSIMを持たず、どこでもインターネットを利用できる環境にない人もいるため、施設内でインターネットを使えることは集客面において必須だと言えます。

しかし、インターネットを導入する手段は数多く、それぞれ良し悪しがあるため、何を選べばいいか迷ってしまいがちです。そこでこの記事では、民泊用のインターネットには何を選ぶべきか、代表的な3つの選択肢のメリット・デメリットやおすすめのプロバイダについて解説します。

これから民泊を開業する方も、新規開業にあたって未だに選択肢に悩んでいる方も、ぜひ参考にしてください。

3つの候補を比較

民泊用インターネットで候補に挙がるのは「モバイルwifi」「固定回線」「5G+対応ルーター」です。まずはこの三つを簡単に比較してみます。

モバイルwifi 固定回線 5Gルーター
回線速度
速度の安定度
価格
導入の手間 ×
主な強み ゲストが持ち運べる 通信が速くて安定 通信が速くて工事不要
主な欠点 通信が遅く不安定 開通までが面倒 非対応エリアが多い

以下、それぞれ詳しく解説します。

モバイルwifi

モバイルwifiは、その名の通り携帯できる小さなルーターが特徴です。日本の通信環境に対応したSIMカードを持たない外国人ゲストでも、これを持ち運ぶことでどこでもインターネットに接続が可能になります。

モバイルwifiのメリット

まずはモバイルwifiのメリットから解説していきます。

ゲストが持ち運べる

モバイルwifi最大のメリットはゲストが持ち運べることです。日本で使えるSIMカードを購入せず、現地でインターネットを使うにはwifiしか手段がない、という外国人ゲストは一定数います。そのようなユーザーに対して、どこでもwifiでインターネットに接続できる環境を提供すれば、ゲストの利便性向上につながります。

Airbnbでは物件のインターネットがモバイルwifiかどうかを選択でき、上記のようなゲストに対して訴求力をアップすることが可能です。

価格が安い

モバイルwifiは工事が不要なので工事費用がかからないほか、月額費用も固定回線やhome 5Gと比べて若干安い傾向にあります。通信制限容量の上限がないプランでは月額4,000円程度が相場なので、キャンペーン割引等も含めた最も安い固定回線の料金よりも安価な水準になるでしょう。

導入が簡単

モバイルwifiは工事が不要で、本体とインターネット一体型の製品、もしくはモバイルルーター本体を購入し別途SIMカードを契約して挿入するだけで、難しい設定や専門知識などは必要ありません。設定変更もシンプルなので難しいことはないでしょう。

モバイルwifiのデメリット

回線速度は遅くて不安定

モバイルwifiは携帯と同じLTE回線もしくはWiMAXを使うため、通信速度が他の二つと比べて劣ります。複数台同時にインターネットに接続する場合や、平日の昼休みなどの回線が混雑する時間帯には、スピードに難があると言えます。

基本的に、ゲストは動画を見たりWeb会議をしたりしない限りは、高速なインターネット回線を求めているわけではありませんので、回線速度の遅さがゲストの心証を大きく悪化させる要因になることはさほど多くはありませんが、Netflixなどを観られる環境を用意するのであれば、レビュー点数に影響するリスクは上がるでしょう。

盗まれる可能性もある

モバイルwifiは持ち運びが可能なため、本体やSIMカードをゲストに盗まれてしまう可能性は否定できません。外国まで持ち帰られてしまった場合、回収するのは困難だと思われるので、ゲストによる盗難被害を補償してくれる保険に加入するといいでしょう。端末紛失時に無料で新たなものを提供してくれるモバイルwifiプランも存在します。

モバイルwifiのおすすめプロバイダー

民泊用モバイルwifiは、「通信制限が緩い」「端末紛失時の費用負担額が少ない」の2点から選ぶと良いでしょう。以下では「民泊用wifi」として販売されているサービス4つを比較します(2022/4/6調査、価格は全て税込)。

サービス名 SPACE Wi-Fi famifi 民泊wifi 民泊レンタルWi-Fi
運営会社名 株式会社スペースエージェント 株式会社ファミリアリンク DXHUB株式会社 株式会社Lucci
キャリア docomo/au/SoftBank 国内複数キャリア LTE回線キャリア SoftBank 4G
通信速度 下り最大150Mbps
上り最大50Mbps
下り最大440Mbps 下り最大112.5Mbps
上り最大37.5Mbps
下り最大165Mbps
上り最大10Mbps
事務手数料 契約時・解約時0円 契約時3,300円
解約時5,500円
契約時4,400円
解約時3,300円
契約時4,950円
解約時0円
月額費用 4,048円 4,378円
※契約初月と翌月は2,728円
3,828円
※通常4,950円
4,950円
通信制限 1日2GBで当日制限 3日で10GBを超えた場合 大量の通信が行われた場合のみ 大量の通信が行われた場合のみ
紛失時の保証 あんしん端末補償: 1台あたり550円/月
故障補償、紛失補償、水没補償
⇒通常44,000円の弁償金が11,000円に
安心保証:月額550円
紛失、破損:11,000円⇒無償
※SIMカード再発行は別途4,400円
安心サポートパック:月額550円
故障:無償
破損:22,000円⇒無償
紛失:22,000円⇒11,000円
安心サポートパック:月額1,078円
故障:無償
紛失:33,000円⇒無償
※別途USIMカード代、送料、手数料

注:下り速度=ダウンロードの速さ。こちらの速度が判断尺度になります。上り速度はファイルのアップロード時の速度です。

費用が安いのは、民泊物件仲介・管理大手のスペースエージェントが運営する「SPACE Wi-Fi」。通信速度(理論値)が速いのは、民泊代行大手のファミリアリンクが運営する「famifi」です。

いずれもLTE回線(4G回線)を使用するため、3大キャリアの携帯通信と同じくらいの速度であると考えると良いでしょう。一人のゲストがスマホ通信用に使用するなら問題ない速度ですが、複数人同時接続や、平日昼休みや夜などの混雑時間帯には少々不便を感じる場合もあるでしょう。

なお、上記4サービスは全て個人・法人いずれも契約可能となっています。

固定回線

固定回線は昔から利用されているインターネット接続方法で、光回線が代表的なものになります。

固定回線のメリット

通信速度が速い

固定回線最大のメリットは通信速度が高速なことです。通常の光回線なら最大1Gbps、NURO光などは最大2Gbpsと、高い理論値を誇ります(下り速度)。

通信速度が安定している

また、他の二つに比べると通信速度が安定しているため、どの時間帯でも比較的高速にインターネットを楽しめるというのもメリットです。

特に回線の混雑が少ない「IPv6接続」にしておくと通信速度が向上し、混雑時間帯でも高速にインターネットを利用できます。また、基本的に棟全体で回線を共有するマンションよりも、単独で回線を引き込む戸建住宅などの方が回線が混雑しないため、快適にブラウジングできます。

この安定した高速通信のおかげで、ゲストが複数台同時にインターネットに接続しても安定した通信を期待できますし、動画視聴やWeb会議、オンラインゲームといった用途にも快適に使ってもらえます。

固定回線のデメリット

工事が必要

インターネットの固定回線を引くには専用の工事が必要です。プロバイダーと契約した後、工事費用を支払って物件にインターネット回線を引き込む工事を行います(既に工事が実施されている物件でも原則として必要です)。

現地での立ち会いが必要になるため時間的拘束が生じるほか、場合によっては物理的に回線を引くことができず契約解除となったり(弊社でも経験あり)、回線を引くにあたって家主の許可が必要になったりするため、少々面倒です。

導入費用が高い

上述の工事には3万円弱の費用がかかるほか、月額料金も4,000~5,000円程度と他に比べてやや高額です(ただし、別途キャンペーン適用によるキャッシュバック等あり)。また無線LANを利用するためのルーターも購入が必要になるため、初期費用はある程度発生します。

なお、初期費用と月額費用を割安にしてくれるキャンペーンを各プロバイダー・代理店が実施しているものの、どこで何を申し込むとお得なのかを調べるのも一苦労です。

一部のマンションでは通信速度が制限される

通常、光回線では通信速度が最大1Gbpsとなりますが、古いマンションなどでは回線設備の関係で100Mbpsまでしか出せない場合があります(「VDSL方式」と呼びます)。その場合、IPv6接続にしないと十分な回線速度を確保しづらくなってしまうため注意しましょう。

インターネットの知識が必要

固定回線はいわば従来式のインターネット接続方法であり、接続できるまでにはインターネットに関する知識が必要になることもあります。

基本的には回線工事が終わった後、モデムとルーターを繋げるだけで無線LANが利用可能になるのですが、場合によってはうまく接続できなかったり、ネットワークカメラとの接続がうまくいかなかったりするケースもあります。その場合はインターネットの設定を見直すなど専門的な知識が必要になるため、少々手間がかかります。

固定回線のおすすめプロバイダー

固定回線のプロバイダーを選ぶのに注目したいポイントは「契約年数の縛り」と「実質的な費用負担」です。

プロバイダーの契約年数は基本的に2年もしくは3年単位となり、携帯電話のキャリアと同じく解約月に解約しなければ違約金を取られてしまいます。そのため、なるべく契約年数が短いものの方が違約金が発生しないタイミングに合わせやすくなります。

また、キャンペーンによるキャッシュバック等も含めて、実質的に初期費用と月額費用がいくらになるかも計算して検討すると良いでしょう。様々なサイトで比較情報が掲載されていますが、どこが一番お得かを調べるのは非常に骨が折れる作業です。

弊社では民泊やレンタルスペースに様々なプロバイダー経由で固定回線を引いていますが、調査を重ねた結果、以下の判断基準を取っています。ベストかどうかは分かりませんが、間違いはないと思います(以下、それぞれキャンペーン内容が良い公式サイト・代理店にリンクします)

回線速度が高速で実質月額料金も安めな「NURO 光」はかなりの優位性があるのですが、工事が2回にわけて行われるため、立会の手間と開通までの時間が必要なこと、建物によっては工事が不可能なこと(弊社も工事段階で断られたことがあり、やむなく別プロバイダに切り替えました)がある点がデメリットです。

その他の選択肢は無数にあるのですが、基本的にはドコモ携帯のユーザーならドコモ光など、使用している携帯キャリアと同じプロバイダを選ぶことで、公式の割引が適用になるため最もお得になる可能性が高いと言えます。

なお、法人契約が可能なプロバイダは限られているため注意が必要です。弊社ではNURO光もしくはSo-netが、実質費用などの面で優れていると考えています。

上記のいずれにも当てはまらない方は、使用している格安SIM等と同じプロバイダを探したり、下記のhome 5Gを検討したりするのが良いでしょう。

5Gルーター

モバイルルーターやホームルーターを使用して、高速な5G回線を利用できるサービスも徐々に増えてきています。

5Gルーターのメリット

通信速度が速い

5G回線は理論値が最大4.2Gbpsと、固定回線すら大きく上回ります(ドコモの「home 5G」。他キャリアはそれより遅くなります)。もちろん、あくまで理論値なのでこれほどの速度が出ることはありませんが、それでも高速なインターネット環境を実現することが可能です。

工事が不要

5Gルーターはモバイルwifiと同じように、プロバイダと契約し、専用ルーターを購入して設置するだけでインターネットを使えるようになるため、固定回線のように工事が発生することはありません。

また、物件を撤退して新たな物件で民泊を始める時などは、引っ越しも可能なため、その点でも固定回線には無いメリットがあります(固定回線では解約に合わせてモデムの返却等が必要なほか、引っ越し先では新設工事が必要)。

5Gルーターのデメリット

非対応エリアがある

東京や大阪などの大都市であればほとんどのエリアで5G通信に対応していますが、リゾート地や郊外などではまだ対応していないエリアが数多くあります。

電波網が整備されるのは時間の問題だとは言えますが、リゾート地などで民泊を行っている方には選択肢から外れる可能性があります。キャリア各社のサイトで電波の状況を確認できるため、事前に必ず確認しましょう。

通信速度は不安定

理論値は非常に早いものの、通信速度にはムラがあり、ピーク時はなかなか期待していたほどの速度が出ないという声も上がっています。そのため、インターネット速度の安定感・快適さという面では固定回線に劣ると言えます。

また5G電波は屋内に弱いという特性もあるため、物件やルーターとデバイスの位置関係によっては、どうしても電波が弱くなって回線速度が遅くなりがちなこともあります。

費用がやや高い

5G対応ルーターの端末料金はまだ高い水準で、2~3万円台と、固定回線の工事費用並みの金額が必要です。また月々の費用も、容量無制限プランだと固定回線よりも高額になるため(キャリア割引を利用しても若干高い水準)、安いとは言えません。

ただし引越しが可能な点においては、固定回線に比べて初期費用面でアドバンテージを受けられるケースもあるでしょう(もちろん撤退は可能な限り避けたいのですが…)。

まとめ

民泊用のインターネットを選ぶ際は、費用とゲストの利便性の二つから考えると良いでしょう。利便性は通信速度の速さと安定性、そして持ち運びができるかどうかが主なポイントです。

安定した高速な通信環境を提供したいのであれば固定回線、大都市で民泊を展開する場合には、高速通信かつ撤退時の手間を省ける5G対応ルーターも選択肢に上がります。そして、安価かつ外国人ゲストがどこでもインターネットに接続できる環境を提供したい場合には、モバイルwifiを選ぶと良いでしょう。

それぞれ一長一短で、プロバイダー選びにも苦戦することがあるでしょうが、この記事を参考に民泊物件のインターネット環境を整備してみてはいかがでしょうか。

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