民泊物件、消防法で押さえるべき主なポイント

住宅宿泊事業法による家主不在型民泊や、旅館業民泊を行う際などは、消防法の規定に沿って消防設備を備え付ける必要があります。数十万円以上のまとまった工事費用がかかるポイントですが、物件によってはさらに投資が重くなるため、慎重に進めることが大切です。

ここでは、民泊物件を検討する際に最低限見ておきたい消防法の判断ポイントを解説します。

戸建民泊の消防法のポイント

戸建物件で民泊を行う際には、基本的に2階建て以下の物件を選ぶのが良いでしょう。というのも、二階建て以下で延床面積が300㎡未満の場合は、特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)の設置が可能で、通常の自動火災報知設備に比べてコストが大きく下がるからです。

なお、地下を含む階数が3までの物件であれば、地下階または3階の民泊に利用する床面積が50㎡未満の場合は、以下の条件をすべて満たすことで特小自火報を設置することができます。

  • 建物の延床面積が300㎡未満
  • 全ての宿泊室の出入口扉に施錠装置が設けられていないこと(ただし、非常時に自動的に開錠できるものや屋内から鍵等を使用せずに容易に開錠できるものなどを除く)
  • 全ての宿泊室の宿泊者を一つの契約により宿泊させるものであること(例:全ての宿泊者が同一グループ(一つの契約)であること)
  • 階段部分には、煙感知器を垂直距離7.5m以下ごとに設置すること

階段にも特小自火報を設置する必要があるため若干コストは上がりますが、一組限定の民泊であれば、3階建て物件でも消防設備の投資を抑えることは可能です。

通常の自火報は設置に大きなコストがかかってしまうため、延床面積が300㎡以上の物件でない限りは、設置が必要な物件は避ける方が無難です。

マンション・ビルでの民泊の消防法のポイント

マンションや貸ビルで民泊をやる際には、戸建と少々違う着眼点から消防法の許可が取れるかどうかを確認する必要があります。

すでに自動火災報知設備が設置されているか

マンションやビルには、既に自動火災報知設備や誘導灯などの消防設備が設置されていることが一般的です。ただし、小規模な建物の場合には無いこともあるため、内覧時に確認しておきましょう。

もし設置されていない場合は、原則2階建て以下で延床面積が300㎡未満の場合もしくは300㎡以上500㎡未満の建物においては、特小自火報を民泊部分に導入するだけで足りるケースもあります。それ以外の場合は通常の自火報を設置する必要がありますが、工事には家主の承認が必要です。費用も高額になるため、現実的には開業が難しくなるでしょう。

消防点検がきちんと行われているか

既に消防設備が設置されていたとしても、その建物が消防点検をきちんと行っているものかどうかは管理会社に確認しておきましょう。もし点検に不備があれば、その不備が解消されるまでは消防法令適合通知書は交付してもらえない可能性が高いと言えます(弊社では一度この事態に遭遇しました)。

その他の注意ポイント

築古戸建にはたまにあるのですが、キッチンの壁や天井が不燃素材で出来ていない、あるいは不燃素材かどうかが不明な場合があります。その場合、ガスコンロは火災の危険性が高いため使用が認められません。不安な場合はIHヒーターを導入すると良いでしょう(コンセントの位置も確認してください)。

また、消火器は設置義務が生じない物件も多いものの、大体どこの消防署でも、義務の有無によらず設置を推奨されます。弊社ではそれに従ってすべての物件に消火器を備えつけています(若干、圧があるので、現地査察に来た際に設置してなかった時に当たりがキツくなるのが怖くて…)。大した金額ではないので、予算には見込んでおきましょう。

まとめ

民泊において、消防法は建築基準法と並んで気を使う法律です。建物の設備・構造によって消防設備への投資額が大きく変わり、投資回収期に影響を及ぼしたり、場合によっては事実上民泊の開業が困難になったりする可能性もあるので、物件選びの際は、契約前に消防法令適合通知書の交付を受けられそうか調査することが必要です。

なお、自身での手続きや調査に不安がある場合などは、防災業者に依頼することも可能です。消防設備の設置工事に加えて書類作成や提出、消防署との折衝なども一括して発注できるため、ありがたい味方になってくれるでしょう。

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