民泊と不動産投資はどちらも不動産を使って継続的な収入を得るビジネスモデルであり、管理運営をプロに一任することも可能なことから、よく比較対象になります。
しかし実際にはそれぞれのメリット・デメリットがあるため、自身がどちらに取り組むべきかは、その特徴を踏まえてよく考える必要があります。特に本業を抱える方は少ない時間の中で副業として行わなければならないため、その制約も踏まえてどちらに取り組むかをよく考えなければなりません。
この記事では民泊と不動産投資それぞれ特徴の違いを挙げたうえで比較しつつ、副業としてどちらが適しているかのヒントをお伝えします。
民泊と不動産投資の違い、注意点
民泊と不動産投資の主な違いと、副業として行う際の注意点を以下にまとめます。
収益性
毎月発生する利益やキャッシュフロー、初期投資の回収スピードといった面では民泊のほうが優れています。
中古の戸建物件で比較すると、賃貸では大まかに表面利回り10~20%程度が相場になると仮定できますが、民泊の場合はリノベーションや備品の購入など、初期費用の総額に対して20~50%程度の投資回収を見込めるでしょう(いずれも一概に言えるものではないため、超概算ですが)。
ただし不動産の賃貸は毎月一定の収入が得られるほか、戸建の場合は退去も少なく手間もかかりにくいため、運営が安定しているという大きなメリットがあります。対して民泊はシーズンによって売り上げが大きく変動するほか、騒音リスクや備品の破損リスクなど特有のリスクが大きくなるため、不動産投資のような安定性には欠けます。
資産性
不動産投資では土地と建物という資産があるため、この点において財務的に有利に事業を進められます。 銀行が購入価格と同等以上に担保価値を評価してくれるような物件であれば、上手に買い進めることによってどんどん健全な財務状況を作ることが可能になります。
民泊の場合も土地建物を購入して営業する形を取れば同様ですが、賃借物件で営業を行う場合にはこのメリットを享受することはできず、投資するほどキャッシュアウトし費用も膨らむため財務面でのバランス調整が必要になります(事業拡大のスピードは比較的早くなりますが)。 ただし事業売却の際の収益還元法による評価では不動産投資より高くなる可能性はあります。
運営の手間
不動産投資・民泊ともに、管理運営を管理会社や民泊運営代行会社に委託することでほぼ不労所得のようなビジネスにできるため、本業が忙しい方などでもほとんど手間をかけずに運営できるという大きなメリットがあります。
賃貸用不動産を自身で経営しようとすると、戸数の多いアパートなどでは少々骨が折れるかもしれませんが、戸建一棟のみなど規模が小さな場合にはほとんど手間はかからないでしょう。
対して民泊では、ゲストとのメッセージのやり取りや清掃の手配、料金調整、トラブル対応など、直営で行う場合には不動産投資に比べて手間がかかります。外国語は話せなくてもさほど問題はありませんが、翻訳ツールなどを使ってスムーズにチャットができるようにはしておく必要があります。
民泊も運営の一切を代行会社に委託すればさほど手間はかかりませんが、事業の成否が業者に委ねられてしまうリスクがあるほか、不動産投資に比べるとそれでも若干の手間はかかります。特に代行業者選定は慎重に行ってください。
開業の難易度
物件を取得してから収益を上げるまでの手続きという観点では、民泊の方が難易度は高く手間もかかります。
不動産投資の場合は、購入してから清掃などして人に貸せる状態にしたうえで仲介業者に客付けを依頼すればOKですが、民泊の場合はコンセプト設計から家具備品の選定・設置、写真撮影、そして最も手間がかかる旅館業法の許可もしくは民泊新法の届出の手続きを経る必要があります。
加えて許可を取得してからも、予約の入るリスティングをいかに作成するか、料金調整をどうするかに頭を悩ませる必要があるなど、不動産投資と比べるとハードルは高くなると言えます。
副業をする上での注意点
本業がある方は、不動産投資なら管理会社、民泊なら運営代行会社に業務を委託するなどして、自身が働かなくても収益が上がる状態を構築するのがおすすめです。特に公務員の方は、不動産運営を管理会社に委託すれば、一定規模以内では職場の副業許可を取得せずに事業ができるため、比較的取り組みやすいというメリットもあります。
もちろん自主運営すれば利益率を改善できますが、特に民泊のゲストに関しては平日の日中でも問い合わせがきます。また突然のトラブルに対応せざるを得なくなるケースもあるため、メッセージを確認・返答できない時間が長いのは問題だと言えます。このような場合には運営代行会社への委託が基本になるでしょう。
また、本業以外での収入が生じる場合は原則として確定申告を行う必要があるため、開業届と青色申告承認申請書を提出し、帳簿をつけて確定申告ができる体制を整えておきましょう。なお、副業禁止の職場に勤めていて無断で副業をするという場合は、所得に変化が生じるため年末調整で副業を行っていることが発覚する可能性が高いため、副業は諦めるか転職するのが無難です。
民泊と不動産投資どちらが良い?
民泊と不動産投資どちらを副業として選ぶべきかは、自身の働き方と副業を行う目的によります。
不動産投資であれば民泊に比べて手間がかからないので(いずれも運営管理を全て委託した場合と比較)、本業が忙しい方でも取り組みやすいほか、毎月一定の収入が継続的に入るのでキャッシュフロー計画を立てやすい、資産性のある物件を買えば次の融資や売却に有利になるため健全な財務状況を作りやすくなるというメリットがあります。
購入する物件の目利き力を磨く必要がありますが、良い物件さえ買えれば長期的に安定した資産形成ができます。短期的に大きく稼ぐにはあまり向きませんが、徐々にキャッシュフローを増やして資産形成していきたいという方には不動産投資が向いています。
一方、民泊は不動産投資に比べて手間がかかりリスクも大きい一方で、収益性が高いため、不動産投資よりも短い期間で投資回収でき、大きなキャッシュフローを生むことが期待できます。また物件を購入して民泊を営む場合は不動産投資の特性も合わせられるため、資産性と収益性を兼ね備えたビジネスモデルを構築することも可能です。
ちなみに私は不動産投資と民泊どちらも取り組んでいますが、現在はキャッシュインの総量を増やし、将来的に購入できる物件の幅を大きく広げるために、粗利益をスピーディーに積み上げられる賃借物件での民泊にフォーカスしています。
まずはお金を生む事業を大きくして、やがて貯まった現金と強固なPLをもとに、融資を受けて堅実に不動産を買っていくのが資産形成の王道だと考えています。
まとめ
民泊と不動産投資は、いずれも運営をプロに委託することで手離れよく運営ができ、継続収入を得られるメリットがあるため、副業にうってつけです。
長期的な資産形成や安定したキャッシュフローを求めるのであれば不動産投資、より早く潤沢なキャッシュフローを求めて事業規模を拡大していきたい方は民泊を選ぶほうが向いています。両方合わせて取り組むことでそれぞれの良さを活かすこともできるため、将来的には両立も検討してみると良いでしょう。
まずはじっくりと副業を行う目的を考えたうえで、不動産投資と民泊、あるいはその他の副業、何が最も自分に適していそうかを考えてみましょう。