※個人ブログからの転載です。
所用があり、6日~7日で福岡県に行ってきました。あまりゆっくり滞在できた訳ではないですが、しっかり名物は食べてきましたよっと。
やっぱり福岡は食事がうまいし、空港と中心市街(博多・天神)がめっちゃ近いし、やたらと女性比率が高いしで非常に人気の高い街ということが改めて分かります。
今回滞在したのは福岡市ではありませんでしたが、やっぱり福岡市の活気はすごい。
さて、今回の本題ですが、宿泊した昔ながらの旅館に色々と改善点を感じたので、せっかくだからシェアしようと思っております。
旅館は経営が立ち行かず廃業していく事業者が多い(平均稼働率もホテルに比べてかなり低い)のですが、あえて取った今回の宿もその御多分に漏れなさそうな感じです。
民泊やホテル投資をしたい方にとって、旅館経営の改善すべき部分を見つめ直すのはとても良い機会だとも思うので、つらつらと感じたことを列挙していきます。
集客・マーケティングに関して
僕が今回泊まった旅館は、地方の拠点となる都市にある中心駅前の立地でした。
正直言って衰退著しい街ではあるのですが、かつては工業などで栄えていたこともあり、今でも出張客が訪れる立地です。そうした背景からか、旅館のターゲット顧客は「日本人の出張客」でした。
しかし、この日本人の出張客向けの市場というのは、はっきり言って非常に厳しいと思うわけです。なぜかと言うと、より立地の良い所に、同価格帯でより良い設備と便利なサービスを有したビジネスホテルが何十、何百部屋とあるからです。
経営規模の小さな旅館は、規模の利益が生かせるビジネスホテルにコストパフォーマンスで勝つことは難しいです。新しく便利な設備、高い防音性、ビジネスマンに便利なシャワー付き個室など、昔ながらの旅館で再現するには難しい要素を備えています。
なので、旅館がそういったビジネスモデルと同じ土俵、つまり同じ顧客層をターゲットに据えるのは間違った戦略であり、宿泊客数が少ない上に客単価も安いというジリ貧の状況に陥りやすいわけです。
実際、僕が泊まった旅館は「個室の音がダダ洩れ」「風呂トイレ共同」「ファブリーズとかズボンプレッサーとかも無し」「全身鏡なし」「新聞朝刊なし」といった感じで、ビジネスホテルに比べて圧倒的にビジネスマンの満足度向上に繋がる要素が薄かったです。
こうした旅館はやはりメインターゲットを他の層に変える必要が出てきます。ここで候補として出てくるのは「ゲストハウスで交流したい若者」「外国人観光客」といったものが定番じゃないかと思います。
例えば、旅館ではなく、個室型ゲストハウスとして運営し、ラウンジでのコミュニケーションを楽しみたい若者層を取り込めるようにしてみる。
ゲストハウスは顧客層として宿自体に対する期待値が比較的低い傾向にあるので、音漏れや設備、建物自体の古さもさほど気にならなくなり、宿泊満足度の向上が期待できます。
ゲストハウスならではの交流ができそうな雰囲気、楽しそうな雰囲気をいかに作れるかは課題に挙がりますが、少なくともビジネスホテルを相手取った無理ゲーをするよりは集客の難易度が下がるでしょう。
インテリア・内装に関して
旅館に泊まっていて感じたのは、「古い和風の建物」の良さをうまく活かせていない、ということです。
具体的には、和室なのに普通の白いクロスが壁に貼られていたり、木目が出ている古い木製の扉をペンキベタ塗りにして木目を消しちゃってたり、廊下の壁も漆喰とクロスがそれぞれ存在していたり。
何というか、空間がすごくちぐはぐなんです。「なぜこんな空間作りをした?」って感じで、宿に対して愛着や想いも感じず、居心地もあまり良くありませんでした。
古い物件は、それだけでホテルには無い特別感と歴史があります。ボロくたっていいじゃない。古さをうまく活かすことで、古民家旅館ならではの佇まいが武器になるのに。もったいない。
これはひとえに「物件のコンセプトを固めていない」という所から来ていると思うんです。先代から旅館を受け継いだものの、食べるために事業を続けているだけで、本気で宿の存在意義や価値について考えてないのではと思ってしまいます。
宿としてのコンセプトが固まれば、必然誰に心地良く滞在してもらえるかが明確になるので、そのお客さんが満足できる快適な空間づくりをするはずなんですよね。
明確なコンセプトがあれば、空間づくりに一貫性が出て、かつ心地良い空間が出来上がる。それが、ホテル以上にゆったりとした居心地を提供できうる旅館としての強みを活かす道だと思うんですが、どうでしょう。
っていうか少なくとも、壁の素材がちぐはぐだったり、古い建物がより古くみすぼらしく見える白色の照明だったりはダメでしょう。。。照明を電球色に変えるだけでも、古い物件の趣はだいぶアップします。
設備・建物に関して
建物に関しては、先程も申し上げたように「個室の遮音性がない」というのが致命的だったのですが、これに関しては防音工事する費用の支出が厳しいと思うので、コンセプトをゲストハウスに変えること等でごまかします。
他に大きく気になったのが「建物が傾いている」ってところ。客室でピンポン玉を落としたら一目散に転がっていくほど傾いていて、まっすぐ平行に立てないのでちょっと気持ち悪かったです。
…まあしかし、建物の傾きを直すのもかなりのお金が掛かってしまうので、急を要するといっても現実問題すぐに実行できるわけではなさそうです。
ですが、これは遮音性と違ってごまかしが利かないものなので、必ず直すか営業を終了しなくちゃいけない。となると、閉店は論外として、建物の傾きを直すために、まず経営の傾きを直さなきゃいけないわけですね。
ここはまあ、上述のようにコンセプトを変え、外国人観光客や旅行客にも裾野を広げる形で、OTA経由でガンガン客を連れてきて根性でお金を稼ぎまくるしかないかなと思います。
あとツッコミどころとしては、トイレに換気扇がなく、なのに窓が開けられない。だから臭いがこもるわけです…。
いや、トイレには換気扇か窓どちらかを必ず設置しなきゃいけないんだけど、窓を内側から開けられなかったらまずいんじゃないの。。。法的問題にかかる可能性もあるし、何より臭いがこもるのは最悪です。
どうやら共用部やトイレの掃除は業者さんに任せているみたいだったので、オーナーは気付いてないっぽい。これは論外で、オーナーなら普段からあちこち宿内を巡って、改善ポイントやお客さんの満足度を集めているポイントを探していくべきでしょう。
宿泊業界は成長産業とはいえ厳しい業界なんだから、それくらいの努力を続けなければ小規模な宿は生き残っていけないですよと。これから民泊もさらに増えてくるしね。
サービスに関して
あれ、旅館独特だと思うんですが、来るお客さんのために玄関にスリッパを並べて用意してあるんですよね。
なんか改めてそういう待遇されたら、どうも個人的に違和感があるんですよね。僕だけかも知れないですが、何というか、スリッパに足場の面積が取られていて、踏み場がないから空間が狭く感じてしまうんですよね。
それよりは、玄関からフロントへ歩いていく方向にスリッパ棚を設けて、そこから取って履いてもらった方が見栄えが良いんじゃないかと。スタッフの手間も省けますし。
…てかそれ以前に、お客様の靴は脱ぎっぱなしじゃなくてちゃんと靴箱に入れるか入れてもらうかしましょうね。これもまた足場面積が取られるし、さらには宿のみっともなさを感じてしまいます。
あと、宿は朝食付きだったのですが、特にこだわりを感じない和定食で、味もまあまあって感じでした。価格を考えれば十分満足ではあるのですが、ここもブラッシュアップできるポイントなので、もっと考えるべきかなと。
まず、朝食を提供すること自体はすごく良いことだと思うんです。観光客もビジネス客も夕食は外で摂りますが、朝食はわざわざ食べに行かない(店も少ない)ですからね。
だから必然、朝食付きプランは人気になるわけですが、この朝食をより高いクオリティにすれば、お客さんの満足度は跳ね上がるんじゃないかと。特に朝食はチェックアウト前の最後のイベントなので、終わり良ければ全て良し理論が働きますからね。
で、限りある予算の中で朝食をグレードアップするには、付け合わせとか大胆に省いて「ごはん、味噌汁、地元の名物」だけに絞っちゃえば良いと思うんですよ。あとお茶。
誰しも地方に行ったらその街の名物を食べたいわけで、何の変哲もない和定食を食べるより遥かに満足度がアップします。福岡だったら明太子付けときゃあお客さんは満足するんですよ。好みが分かれるから、他1つ2つのおかずと選択式にしても良いかもですが。
結論、旅館はコンセプトを明確化しよう
色々と泊まった旅館に対しての愚痴を絡めての、旅館ビジネスに対する改善提案をしてきたわけですけども。
結局、まとめると一番言いたいのは「コンセプトを明確化して、ありふれた存在から脱出しよう」ってとこですね。惰性の経営はやめようってことです。
昔ながらの旅館はホテルより設備的に不便だし寒いし音も響くし、立地もサービスもホテルには適いません。だから、そのままでホテルと同じお客さんを狙って勝負するのは、竹やりで戦闘機を打ち落とそうとしているようなものです。
そうではなくて、「近隣のホテルや旅館には提供できない、うちならではの強みは何か?」「うちの宿は、本当はどんな価値があって、それはどのお客さんに喜んでもらえるのか?」っていうのを明確に考え、コンセプトを変更していかなきゃならないんです。
小資本で爪に火を灯すボロ旅館を経営しているならなおさらです。ランチェスター戦略をうまく取り入れて、個性ある宿に仕立て上げなきゃ勝てないんですよ!
一棟貸し宿泊施設(民泊)事業を考えている僕の立場からしても、こうした「明確なコンセプトの設定」というのは常に付きまとうポイントです。
僕が宿をやりたい理由は、街に関わることが好きで、「街と人々を繋ぐ役割を提供できる仕事」であることに漠然とワクワクするからです。だから、僕は「その街の魅力を知り、直に触れられる、街の雰囲気を体現した心地良い宿」を作りたいと決めてます。
もちろん、それだけだと漠然としているので、そのコンセプトは今後の物件の立地次第でさらに煮詰めていく次第です。
例えば、北千住みたいな宿場町だったら、玄関は広い土間と小上がりにして、賑やかな江戸の宿場町っぽい佇まいにするとか。日暮里なら繊維街だから、インテリアをコットン素材に統一したりとか…妄想は止まりません。
こうして明確なコンセプトに基づいて運営できると、空間づくりだけではなく、必然的に集客チャネルも、リスティングの文章や施設写真も、設備や提供するサービスの取捨選択もターゲットに基づいて最適化できるわけです。
古い旅館の経営者には、どうしてもこの目線が足りてないと思うんですよ。お金が無ければ投資は出来ないけど、お金が無くともできる改善プランは五万とあります。
もちろん、実際に事業をやっていると目の前のことでかかりっきりで、こういう改善ポイントには気付けなかったり、なかなか着手できなかったりするもんなんですが、そういう場合のためにコンサルタントとかがいるのだから、できれば頼るべき所ですよね。
…まあ、コンサルも時間単位の報酬を求める人が多いから、払う体力が宿側に無いってのはミスマッチですけども。。。成功報酬でやってくれるコンサルを探すのはなかなか大変かもしれないですね。
というわけで、好きに語ったところで〆たいと思います。お疲れさまでした。