より簡単に!オークション機能をブロックチェーンで開発するメリット

安全なP2P取引を可能にするブロックチェーンの機能を使えば、オークションのシステムを効率的に導入することが可能です。

仮想通貨の取引台帳であるブロックチェーンには、タイムスタンプ付きで取引履歴を全て記録する仕組みや、その履歴を誰かに改ざんされない強み、プログラミングにより決済や権利の受け渡しの自動化が可能といった様々なメリットがあります。

これらの機能を用いることで、従来はシステム構築が複雑だったオークションの仕組みをより簡単に開発することができるようになります。

 

ブロックチェーンオークションの稼働プロセス

まず、ユーザーはサービスを利用するにあたって会員登録を行い、商品の出品や受取に必要な個人情報の入力+本人確認を行います。その情報をブロックチェーン上に転記することで、暗号化された状態で送信できる仕組みが作れます。

次に、出品者が出品情報を入力し公開します。その際、入札の締切日や即決価格などの情報をもとに自動でスマートコントラクトのコードが生成され、コントラクトアドレス(入金によりプログラムされた契約が作動するアドレス)も生成されます。

ユーザーがその商品に入札する場合は、入札期間内にそのコントラクトアドレスに送金を行います(ETH等の金銭価値がある仮想通貨、もしくは無価値の入札専用トークン)。この際、同時に個人情報の暗号文も送信されます。

落札者が決まると、自動で落札者に連絡が行き、自動生成された送金用のコントラクトアドレスが送られます。落札者がそのアドレスにETHなどの仮想通貨を期日までに入金すれば、商品を受け取るまで自動的にエスクロー(ブロックチェーン上での支払の一時預かり)されます。

同時に出品者は複合化された落札者の個人情報を確認し、指定の配送業者を使って商品を発送。配送番号が落札者に送られます。

その後、落札者が商品を受け取った時点(もしくは一定期間の経過後)でエスクローされた仮想通貨が出品者に着金し、双方にレビュー依頼の連絡が来て取引終了、という流れになります。

 

ブロックチェーンで構築するメリット

上記のようなオークションの仕組みをブロックチェーンで構築することで、例えば以下のようなメリットを得ることができます。

  • 入札や入金といった取引関係のシステムをプログラミング不要で設計できる
  • 管理者不在で自動的にエスクローの仕組みが提供できる
  • 不正ログインされた際の個人情報書き換え、入札や送金の防止がしやすい

まず、ブロックチェーン上での一つひとつの取引(トランザクション)は、それぞれタイムスタンプが付された状態で半永続的に記録され、その記録が後から誰かが改ざんすることは原則として不可能になっています。

この機能を利用して、入札のタイミングや入札数、入札額などの情報を簡単に抽出することができるほか、落札者が確かに入金をしたかどうかという証明も行いやすくなるメリットがあります。

また、落札者が指定のアドレスに入金を行った際には、スマートコントラクトの機能によってブロックチェーン上でエスクロー(顧客資産の一時預かり)を行うことができます。

これはプログラムで自動実行され、この預かり情報も誰かに改ざんされることは原則ありません。つまり、エスクロー情報を管理するスタッフ不在で、安全なお金の一時預かりと商品の受け渡しが可能になるというわけです。

他にも、入札や入金など仮想通貨の送信時には、ユーザーのローカル環境下に保存した「キーストア」等と呼ばれるファイルをパスワード代わりに指定しないと送金できない仕組みになっているのが一般的です。

この場合、もしユーザーIDとパスワードが流出して不正ログインされたとしても、ログインした本人はキーストアファイルを保有していないため入札・入金ができず、配送先を書き換えて勝手に買い物をされたり、売上金を不正送金されたりするリスクを下げることができます。

このように、ブロックチェーンを活用することで、オークションシステムの構築を従来よりも簡単に行うことが出来るようになるのです。工数がかからない分、開発コストも下げられるでしょう。

 

ブロックチェーンオークションの懸念点は?

ブロックチェーンベースでオークションシステムを構築する際に懸念すべきことはいくつか存在します。

  • 仮想通貨の値動きが激しく、日常の取引に適さない
  • 日本では仮想通貨取引の確定申告が複雑で、日常の取引に適さない
  • ブロックチェーンの取引処理混雑中はレスポンスが悪く手数料も高額になる

まず、ETHなど仮想通貨の値動きは非常に激しく、また仮想通貨決済を行った際は為替損益が発生し、面倒な確定申告義務が生じてしまうことから、現状(特に日本においては)では仮想通貨によるオークションサイトが流行する可能性は低いでしょう。

その対策としては、1コイン=1円の独自レートを設定した、そのサービス内でのみ利用できる独自トークン(電子マネー)での取引とすることが考えられます(ただし資金決済法の前払式支払手段に該当する場合があるため、供託金に対する対策が必要です)

また、2018年1月などに起きた仮想通貨バブルの際には、様々なブロックチェーンにおいて取引処理が混雑してしまい、何分経っても送金が承認されなかったり、一回の送金に対して手数料が銀行並みあるいはそれ以上にかかったりするケースもありました。

今後そういった状況にまた遭遇するかは分かりませんが(ブロックチェーンもアップデートしてきていますし…)、ブロックチェーンにはサーバーダウンがまず無い代わりに、そうしたトランザクション混雑リスクがあるという点は頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。

 

オークションサービスは、日本だとヤフオク、海外だと米eBayや英クリスティーズ等の大手事業者が存在し、世界中で活発に取引がなされています。

また、クリスティーズ社など複数社が、実際にブロックチェーンをオークションシステムの一部に活用しようとしていたり、日本でもスタートバーン社がブロックチェーンを用いたアートのオークションプラットフォームを開発したりしている状況です。

特にスタートバーン社は「落札されたアートが転売されるに従ってアーティストにお金が入る」という画期的なシステムを採用しており、これはブロックチェーンのスマートコントラクト機能だからこそ、実現しやすかった仕組みだと言えるでしょう。

今後、オークションシステムに対してもブロックチェーンの注目度は増していくのではないでしょうか。新しいプロジェクトの情報が楽しみなところです。

 

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