アジアに旅行に行くと、よくスポーツブランドなどの偽物が街中の露天商店やショッピングセンターで販売されているのを見かけます。
作りがちゃちくてすぐに偽物とわかるものがほとんどですが、中には一見見分けが付かず、危うく騙されそうになるようなものもあります(台北で多分本物を扱っているアウトレットショップがあったけど、もはやそれも信頼できなくなってしまいますね…)。
こうした偽物の流通は、消費者もメーカー側も頭を悩ませる問題です。その解決策として、ブロックチェーンを活用した製品タグの利用がだんだんと進みつつあります。
adidasがスニーカーに電子タグを導入
世界的なスポーツファッションメーカーであるadidasは、試験的にではありますが、限定発売のスニーカーに「VeChain」のブロックチェーン技術を活用した電子タグを導入しました(参照:BITTIMES「ブロックチェーンで追跡できる「adidasスニーカー」を発表|VeChain×HBO×SBTG」)。
お客さんはスニーカーに据え付けられたタグをスマートフォンで読み取ることで、その製品が本物かどうか、また原産地がどこかを正当に確認することが可能になります。
adidas製品はよく偽物を見かけるブランドの一つなので、今後の検証次第で限定アイテムだけではなく、全てのアイテムにこの電子タグが適用される可能性もあるでしょう。
ブロックチェーンを活用するメリット
ブランド品の真贋証明をブロックチェーンで行うメリットは主に以下の通りです。
- 不正な情報の改ざんを防ぐことができる
- サーバーダウンしないため、それにより「真贋判断ができない時間」が無くなる
- 企業ドメイン下でなくとも運用でき、サーバー負担やハッキングリスクを軽減できる
- SaaSで真贋判定サービスを提供しやすく、世界規模で偽物流通の排除を防止できる
ブロックチェーンには「記録した情報の改ざんに強い」という特徴があるため、信頼性の高い真贋証明が可能です。ブロックチェーンは一台のサーバーではなく複数のサーバーに情報を保管し、整合性を確認のうえ同期するP2Pネットワークを採用していることから、ハッキングによる情報の書き換え耐性が高いのです。
P2Pネットワークを使っている強みはもう一つあります。それが「ブロックチェーンは原則としてサーバーダウンしない」という点です。これにより、お客さんが商品を手に取ってスマホで真贋鑑定をしようと考えた時に、サーバーダウンにより情報を読み取れないリスクも解消されます。
また、情報を書き込んだ当人やサービスの運営者も含めて、記録された情報の修正を行うことはできないため、企業サイトの独自ドメイン下でなくとも、信頼できる真贋判定システムを構築しやすくなります。
そうすれば、企業サイト内に情報を保管する場合に比べてハッキングリスクを軽減することができるほか、SaaSでのサービス提供も可能になるため、事業者側の面倒なシステム開発・導入の手間も無くなります。
なお、こうしたブロックチェーンによる偽物流通防止の仕組みは、食品などの産地偽装や水増し加工の防止を実現できるサプライチェーンマネジメントへの応用とも非常に近いものがあります。
上記の事例で挙げたVeChainは、まさしくブランド真贋判定とサプライチェーン管理の双方をユースケースの中に掲げており、同社発祥の中国をはじめ各分野での実証実験が進んでいます。
ブランド品は単価が高いため、偽物を掴まされるとたまったものではありません。こうした真贋判定の仕組みがどんどん出てきて、偽物の流通が無くなっていくことを期待するところです。