※nemlog記事からの転載です。
現在、NEMを活用した人事評価制度をとある企業に実験導入してもらう話が決まってまして、色々と研究を進めております。
いま提案しているのは評価制度の一部分なのですが、考えてみるとNEMなら広範に人事管理システムを構築できそうだなと思ったわけです。
今回は一つひとつを詳述することはしませんが、「こんな取り組みに使えるよ」ということと、それぞれのメリット・課題について語ろうと思います。
NEMを導入できる人事評価・管理制度の一覧
・人事考課
・360度評価
・有給休暇管理
・社内福利厚生管理
以下、順を追って解説していきます。
人事考課へのNEM導入
従来の人事考課においては「担当管理職が、定期的に社員Aを評価シートに基づき評価、面談する」という形が主流です。
この場合「一つひとつの根拠よりも普段の印象、心証で判断される」「年数回の考課シーズン時点の評価に左右されやすい」「担当者と社員との関係性に大きく左右される」という点が課題になってきます。
これを、NEMを活用して「担当管理職は、社員Aの良い点、悪い点を見つけ次第、モザイクに付記して社員A管理用ウォレットに送付する」というオペレーションに変更します。
管理用ウォレットは担当者と上級ライン、そして人事部のみが確認できる(アドレスを知っている)状態にし、さらにメッセージを暗号化することで、社員による盗み見リスク(部外者含む)をほぼゼロにできます。
なお、「忙しいのに毎回評価なんて送ってらんないよ!」という管理職の声に対しては、「正確な人事評価と認められた分だけボーナス査定アップ」や「送らなければ貴様の評価を下げるぞ」というプラマイ両面のインセンティブ設計が必要になるでしょう。
メリット
・一つひとつの理由をもとに、冷静に社員Aを評価できる
・リアルタイムで精確な評価を付けられる
・上司や人事部も評価理由をつど確認でき、評価の妥当性を判断できる
・コピー代や稟議決裁のコスト、手間の削減
課題
・評価ごとに少量のXEMが必要(コピー代と事務作業代はペイできそうだが)
360度評価へのNEM導入
360度評価とは、「上司⇒部下」と評価するのではなく、社員同士でフラットに評価を行う制度を指します。これを通常の人事考課と併用することで、より多面的かつ精確に評価を行うことが可能になります。
360度評価も通常の人事考課と同様、考課シーズンに社員同士で評価シートを記入・提出する形が多いと思われるため、印象や心証、好き嫌いが優先されがちなこと、考課時点での評価になってしまうことが共通の問題点として挙げられます。
これをトークン化して、社員同士がつどモザイクを送り合うようにすると、今度は各人がリアルタイムに評価ポイントや感謝をメッセージで受け取れることになります。
一緒にプレゼンを行って案件を受注してきた仲間から、「さすがのプレゼン力!ありがとう」とか「ナイス補足説明」というメッセージを添えてモザイクが送られてきたら嬉しくなりますよね。
このように、360度評価にNEMを導入すれば、社員同士が褒め合う文化が生まれ組織のモチベーションアップにも繋がります。
メリット
・社員同士でリアルタイムに褒め合う文化が生まれ、各社員にやる気が芽生える
・管理職や人事部は、モザイクの送受信量とメッセージから社員の性格や社員同士の関係性を推定できる
・評価を数字で確認できることで社員の意欲が上がり、360度評価が活発に行われる
課題
・送付ごとにXEMが必要になる(これもコピー代と事務コスト以下にはなるはず)
・モザイクの配布や集計に手間がかかる
・パブリックチェーンでNEMを導入する場合、個人を特定できたり公にできないメッセージが送れない
・メッセージを暗号化した場合、管理職や人事部が内容を確認できなくなる(各ウォレットのマルチシグ化が必要?)
有給休暇管理
上記の人事評価制度に関連して、有給休暇の管理もNEM上で従来の課題を改善することが可能です。
アナログな有給休暇管理の問題点として「経営者や従業員が勝手に改ざんできる恐れがある」「申請したはずが漏れていて残日数が正確でない」「有給の許可を取るのが辛く、申請がされない」「有給申請を上司が却下してくる」といった点が考えられます。
「改ざん不可能かつ第三者にも権利を証明できる」といったら、それこそブロックチェーンの出番。有給残日数をモザイク化し社員と人事部(上司は介さない!)で送受信することにより、安全・確実・ホワイトな有給休暇管理が可能です。
このNEMを活用した有給休暇管理システムについては、nemlogでもへいうちさんがハッカソンでプレゼンなさっていたり、すでに製品化に着手している「スマート有給」といったツールも存在します。アツい分野ですね。
ちなみに、「これ導入してもブラック企業は変わらないよ」って声もあるかもしれませんが、確かにその通りです。どちらかと言うと、労働組合があったり、上場を目指していたりなどでクリーンな経営を目指す企業が導入するものだと思います。営業ターゲットはそこね。
メリット
・社員が安心して有給休暇を取れるようになる
・人事部(や労働組合)が有給消化率を把握しやすくなり、各部署に指導できる
・パブリックチェーン上で運用することで有給消化率と透明性を外部にPRできる
・法定以上に付与された有給の売買や買取、他の権利との交換なども対応できる
課題
・単体では企業への導入が難しそう?包括的人事管理ツール作成の必要性あり?
福利厚生の管理
福利厚生については、リロやベネフィットワンといった外部サービスではなく、自社で管理する独自の福利厚生制度にNEMが活用できます。
例えば、保養所の利用権やランチ一回無料ボーナスといった権利をモザイクでチケット化するわけです。
いまいち管理が煩雑になりがちな自社福利厚生の管理も、これでカンタンです。
メリット
・社員がどんな権利を持っているのか把握しやすく、福利厚生制度を使いやすくなる
・人事部や上司が約束を忘れたり反故にすることがなくなる
・他の社員に自分の権利を譲渡することも可能
課題
・そもそもニーズがあるのか(妻に意気揚々と話したらズバリ言われて凹んだのはパブリックチェーン上に記録できない)
まとめ
とまあこんな感じで、NEMは人事管理システムにも用いることができるんじゃない?という提案でした。
NEMを活用するポイントをまとめると以下の通りですね。
・情報を改ざんできず、第三者に対しても正当な権利を主張できる
・定期&スポット化しがちな人事評価、360度評価をリアルタイム化できる
・上記4種類を含め、使い方次第で様々な用途に活用できる
情報の改ざんができないこと、リアルタイムに評価を送れることは非常に大きなメリットだと思います。
特に360度評価をNEMで導入することはメリットが大きいかと思います。Uniposなど類似のサービスもいくつか出ていて、拡大の勢いもすごいので、なかなか面白いんじゃないかと。
僕はまだ人事の経験もなければ社員を雇った経験もないので、もっと人事評価制度については掘り下げられるかもしれません。
人事制度に関わっておられる方には特に、ぜひご意見を頂戴したいです!