現在、コロナウィルスの影響によって企業はテレワーク(リモートワーク)を実施せざるを得ない状況になってきており、「すでに完全リモート勤務になった」という方も珍しくはないでしょう。
昨日の記事では、弊社がチャットツールDiscordを使って世界中のスタッフと一緒に完全テレワークで事業を運営した経験をお話ししました。
企業におけるテレワークでは、専用に作られたSlackをコミュニケーションツールとして利用しているケースが多いようですが、テレワークに必須のチャットツールにはチャットワークやDiscordなどいくつかの種類があります。
この記事では、現在利用しているチャットツールに不満の声が多かったり、そもそもチャットツールを今まで利用してきていなかったりして、リモートワーク用のチャットツールを急きょ検討しているチームの方に向けて、主要なチャットツールの特徴やメリット・デメリットを実際の利用をもとに比較していますのでご参考にしてください。
※この記事の内容は2020年4月時点の情報に基づきます。
なぜチャットツールはテレワークに必須なのか
本題に入る前に、そもそもチャットツールの必要性がわからない、あるいは疑問に思っているという方もいるかと思いますので、なぜチャットツールがテレワークには欠かせないものなのかを解説します。
チャットツールを利用するのは、ひとえに「コミュニケーション量の確保」です。テレワーク環境下では各メンバーが顔を突き合せることがないため、タスクの抜け漏れチェックや認識の齟齬を解消するためにも、チャットツールは非常に大きな助けとなってくれるからです。
チャットが無ければ、昔ながらの「メールと電話」という形で仕事をするようになるでしょうが、これは効率が悪く、そもそもテレワーク環境下でなくても社内連絡手段としては推奨できません。メールは大量に届いて確認も処理も大変ですし、電話だと議事録が残らないうえ、作業の邪魔になったり、いつ電話に出られるかも分かりませんからね。
その点、チャットを使えばすぐに指示や依頼を出したり確認したり、進捗報告をしたり、ToDoの管理をしたり、ファイルを共有したり、といったことを各自任意のタイミング(非同期コミュニケーション)で行えるわけです。食事などで退席する時はステータスを他の人に共有する機能もあるため、「あいつ電話出ないぞ!」なんてストレスも減ります。
他にもチャットツールを利用する様々なメリットがあります。全ては言及しませんが、箇条書きで簡単にまとめてみます。
- タスクの抜け漏れを本人、上長ともに確認しやすい
- 承認、稟議プロセスをチャット上で完結することができる
- 様々なSaaSツールと連携して仕事をより効率化できる
- メールに比べて格段に資料共有やリンク共有が容易
- タイムラインが自然と議事録の代わりにもなる
- 組織体制に縛られずフラットな情報共有が可能
- 音声通話機能付きのツールも多く、文字と音声を併用できる
- 取引先や発注先との円滑なコミュニケーション手段にもなる
- シマの離れた同僚ともコミュニケーションを取りやすい
- 部署、拠点横断的なコミュニケーションが取りやすい
- 無駄な会議やコミュニケーションが省ける
このような数々のメリットがあるため、テレワークにおいてチャットツールを使わない手はありませんし、そもそもテレワークに限らずともチャットツールを社内コミュニケーションに導入する意義は大きいということがわかると思います。
さて、前置きが長くなりましたが、以下からは主なチャットツールについて、その特徴やメリットなどを解説していきます。
ITエンジニア向けに作られた「Slack」
Slackはビジネス利用、特にITエンジニアに向けて作られたチャットツールで、世界的に高いシェアを誇っています。
会社や部署といった単位でアカウントを作成することができ、さらに「○○チーム」「雑談」「日報」「経費精算」といった形でチャンネル分けを行うことが可能です。これによりチームやトピックに分けてチャットができ、情報共有が効率的になります。
また、業務連絡ではどうしてもやり取りが多く発生するため、多くのメンバーが何回も発言することでタイムラインが早く流れ、やりとりのチェックに時間がかかってしまいがちです。これに対応するべく、Slackでは一つの投稿に対してスレッド形式でチャットを行うことが可能となっています。
音声通話やビデオ通話も可能なので、混み入った打ち合わせが必要になった時や、クライアントにプレゼンを行う時にもSlack上で完結させることが可能となっています。
さらにSlackではAPI提供により多数のツールと連携が可能となっており、タスク管理や人事管理、経費精算、ピアボーナス、営業管理など、業務上のほとんどのフローをオンラインで完結することもできます。連携できるツールの数は他のチャットツールに比べて多く、総合業務ツールとしても活躍してくれます。
Slackは直近のメッセージ10,000件までの確認・10個のツール連携・1対1の音声、ビデオ通話までは無料で利用が可能です。有料プランは一人月額850円からで、閲覧メッセージ数やツール数、通話人数の上限解除やサポートの充実といった内容が付加されます。
日本製ビジネスチャット「チャットワーク」
チャットワークはその名の通りビジネス利用に特化したチャットツールで、今回紹介するツールの中では唯一の和製プロダクトとなります。国内シェアは高く、またSlackやDiscord以上にITに疎い方でも使いやすい簡単な画面設計であることが強みとなっています。
「ユーザー一人あたりのアカウント(チャットグループ)登録数」が課金要件の一つとなっており、15個以上のグループ(1対1のチャットも含む)に参加する場合には有料プラン化が必要という形になります。
この仕組みから、チャットワークは社内連絡ツールというよりは外部のクライアント各社との連絡手段として用いることに適しています。先方との対面の会議をチャット化する、という意味合いが強いと言えるでしょう。
またToDoリスト機能がチャット内にデフォルトで組み込まれていたり、検索機能が優秀だったり、発言ごとにリンクURLを発行できたり(Slackもあり)する点で、まさにビジネス利用に特化したツールであると言えます。
チャットワークは現在、私が一番利用しているツールです。クライアントや発注先、顧問各位との連絡はほとんどチャットワークを通しています。とにかく利用しやすいので、どの企業にも使ってもらいやすいという点は非常に心強いポイントです。
リアルタイムコミュニケーションに強み「Discord」
Discordはオンラインゲーマーに向けて作られたチャットツールで、ゲームをやりながら別画面でDiscordを開き、仲間とチャットをするというシチュエーションが想定されているものです。
また匿名で知らない人々との輪の中に気軽に飛び込むことを想定していることもあり、「メールアドレスではなくURL一本でサーバー(アカウント)に参加可能」「サーバーごとに細かく権限設定が可能」「音声チャットに継ぎ目なく移行できる」「複数のサーバーを簡単に行き来できる」「ログイン中ユーザーが離席中かどうか一目で分かる」「個別メッセージが送りやすい」といった特徴があります。
またサーバーごとにチャンネルを複数作成でき、上記の権限設定によって「誰がどのチャンネルを見られるか」「誰がどこまでの管理権限を有しているか」を細かく設定することが可能なため、Slackよりも高度な運用がしやすいと言えます。
ビジネス用チャットではないため、スレッド機能や発言ごとのURL発行機能が無い、検索機能が弱いなどといった制限はありますが、音声も交えたリアルタイムコミュニケーションを重視する場合はSlackやチャットワーク以上の利便性を発揮するでしょう。
あと、Discordは頻繁にアップデートが行われるのですが、通知テキストが毎回やけにフランクで面白いです笑
小規模ならLINE、Messengerもあり
なお、個人間あるいは少人数のやり取りで完結できる場合は、普段から利用しているLINEやFacebookでも十分にチャットで仕事ができます。
私自身もFacebookでクライアントと日常的に連絡を取り合っています。タイムラインでもやり取りをしますが、打ち合わせはメッセンジャーと対面で行います。
LINEは以前の職場(不動産管理の部署)で最大8人ほどで使っていましたが、各々の現場に分かれる中で簡単な情報共有をする程度なら十二分です。定年が近い上司でも問題なく使えていたので、この利便性は代えがたいものでした(余談ですが80過ぎたうちの祖母もLINEを使っています)。
上述した3つのチャットツールに比べるとスマホ利用がより便利という点もあり、ごく少人数での打ち合わせが多くなるフリーランサーや起業家はLINEやFacebookを使う機会も多いのではないでしょうか。
ちなみに、LINEやFacebook、またMicrosoftなどもビジネス用チャットツールを提供しています。私は利用したことが無いのですが、各社のプラットフォームを使う頻度が高いチームは検討の余地があるのではないかと思います。
まとめ
以上について、簡単に「このツールはこんなチームにおすすめ」という私の意見をまとめてみます。
- とりあえず社内で試験的に使いたい→Slack
- クライアント各社とのやり取りを一つにまとめたい→チャットワーク
- リモート環境下でもリアルタイムな交流を重視したい→Discord
- ITに疎い人が多いが社内連絡をチャットに移行したい→チャットワーク
- チャットを軸にビジネスツールを統合したい→Slack>チャットワーク>Discord
- ユーザー参加型のサロンやコミュニティに利用する→Discord>Slack
- チャットが頻繁に行われそうな環境にある→Slack>Discord>チャットワーク
利用する人数が多くなってくればくるほど、チャットツールごとの特徴の違いが労働効率に現れてきます。そのため、どのツールを採用すべきかは情報収集をしっかりと行い、テスト利用もした上で、慎重に判断する必要があります。
基本的にはどのツールも無料で問題なく使えるケースが多いため、お金が発生するものよりも適当に選んでしまいがちですが、既存の業務の仕組みを改善して効率をアップするのは簡単ではありません。「これを使えば、こう作業効率が上がる!」という明確なロジックを掴み、かつ従業員に浸透させる手段も固まるまで意思決定を詰める必要があるでしょう。
ましてやテレワーク環境下で作業効率を確保するための仕組みを構築するのは、オフィス環境下よりも難易度が高くなります。そのため、テレワークでの要のツールとなるチャットについては、「何をどう使うか」をよく考え、かつ利用状況を見ながら常にPDCAを回す必要があります。
このことを前提に、この記事を参考にして頂きながら利用するチャットツールを決めて頂ければ幸いです。ご相談・ご質問はコメント欄にてお気軽にどうぞ。