ボロ戸建投資とは?メリット・デメリット、主なリスクと対策を解説

ボロ戸建投資は、主に築古で状態が悪く、ゆえに格安で販売されている戸建物件を購入し、リノベーションなどを行って貸すことで高利回りの実現を目指す不動産投資の手法です。

物件によっては新車を一台買うよりも安い金額で購入することができるため、融資を使わなくても購入ができ、不動産投資初心者からボロ戸建を好んで買い進めるベテラン投資家まで様々な投資家に人気です。

ですが、劣化の進んだ戸建には様々なリスクがあるため、投資を行う際はどのようなリスクが顕在化しそうか、それによっていくらの損失が出そうかを把握し、それをもとに収支計算を行ってゴーサインを出すかどうかを判断する、などの初心者には少々ハードルの高い部分も存在します。

そういったリスクを乗り越えれば、通常の不動産投資ではまず得られない水準の高利回りや、資産価値が買値を大きく上回る物件を入手できる可能性もあるのがボロ戸建投資の醍醐味なのです。

以下では、ボロ戸建投資のメリットとデメリット、主なリスクとその対策方法について解説します。

ボロ戸建投資のメリット

ボロ戸建投資の大きなポイントは「とにかく価格が安い」ということです。これにより、具体的にどのような投資メリットがあるのでしょうか。

高利回りを狙える

上述の通り、ボロ戸建投資で一番のメリットは「高利回りを狙える」というものです。

例えば東京都心の新築区分マンションでは、現在の市況だと表面利回り4%台のものもあり、はっきり言って「購入=失敗」とすら言えるような割高な物件もあるのが実情です。しかし、ボロ戸建投資では表面利回り30%以上も珍しくなく、この点において多くの投資家を惹きつけています。

ただし、表面利回りは不動産投資において重要な指標ではなく、あくまで経費を引いた後の実質利回り(NOI利回り)を重視すべきだという点には注意が必要です。ボロ戸建は後述のように諸経費が重くなる傾向にあるため、実質利回りはそのぶん圧縮されます。

とは言え、経費を引いても依然としてマンションやアパートより高い利回りを維持できることは珍しくないため、目利き次第で効率の良い投資を狙うことができると言えるのです。

融資が引けなくても、現金が少なくても買える

ボロ戸建には資産価値がほとんどないものが大半で、ゆえに格安で購入できます。東京や大阪の郊外でも、軽自動車並の金額で買える物件も散見されるほどです。そのため、融資が引きづらい属性の投資家でも、あまり現金を持っていない方でも買いやすいのがメリットです。

不動産投資も含め、仕事において成長をしたいのであれば、何よりも実際に経験することが最重要です。そのため、価格が安く手を出しやすいボロ戸建投資は、不動産投資家としての第一歩を築く良い機会になるとも言えるのです。

実際、ボロ戸建投資からスタートし、現在では新築物件を開発する規模にまで至った投資家なども存在します。まずは小規模な物件から経験を積みつつ種銭を作り、少しずつ次のステップに進んでいった結果であると言えます。

投資に失敗してもダメージが少ない

ボロ戸建は概して価格が安いので、初期投資額も小さく抑えることができます。そのため現金購入や少額融資での購入が基本であることから、うまく利益やキャッシュフローが出せず投資に失敗したとしても、大きな痛手は負わずに手じまいできるというメリットがあります。

これが数千万円以上の物件であれば、基本的に大部分を融資によって賄った上で購入するのが一般的な選択になります。この場合、投資に失敗してしまった際には残債の返済が重くのしかかることになり、長期間キャッシュフローを圧迫してしまう事態にもなりかねません。

買値より資産価値の高い物件が手に入る場合も

ボロ戸建は基本的に土地にも建物にも価値が乏しいのですが、ごくまれに資産価値(担保評価など)が物件価格に比べて大幅に高い物件も存在します。この場合、購入できれば今後の融資に利用できる良い担保にもなり得ます。

ちなみに地方都市においては、担保評価のベースになることが多い「相続税路線価に基づく土地評価額」が売値を上回るケースも珍しくはないのですが、実際の評価においては、土地の形状などなど様々なマイナス要因を加味して担保評価額が計算されるため、一概に路線価が高くても資産価値が高いとは言えません。

こうしたマイナス要因を鑑みても売値以上の担保評価が見込めそうなボロ戸建があれば、積極的に検討してみるのも良いでしょう。もちろん、収支が合うことや客付けに苦労しないことなど、その他にもゴーサインを出すのに必要な検討は数々あるため、材料の一つという位置付けですが。

ボロ戸建投資のデメリット

メリットが様々にあるボロ戸建投資ですが、主なデメリットには以下のようなものがあります。

リスク精査に手間がかかる

築年の経過した古い戸建には数多くのリスクが存在します(詳しくは後述)。また、価格が安い物件には安いなりの理由があり、多くの場合その原因の解消にはまとまった支出が発生します。

ボロ戸建投資は高利回りを狙えますが、毎月得られる家賃自体は高額ではありません。ゆえに、一度発生したトラブルへの対処で、今まで受け取ってきた家賃分以上の持ち出しが出る可能性も十分に考えられます。

そのため、購入前にできるだけ、その物件にどんなリスクがあるのかを洗いざらい見つけ出し、その対処にどれくらいのお金や期間が必要か、結果として収支は合いそうか、リスクが顕在化する前にどのタイミングで売却や建て替えをすべきか、といった検討が必要になるのです。

しかし、ボロ戸建は非常に足が速く、有望な物件であればポータルサイトに公開された数時間後には買付申込が入ってしまうことも頻繁にあります。そのため、物件を見たら即断即決、最悪の場合は内覧をせずインターネット上の情報だけで投資判断をすることが求められます(申込のキャンセルは可能ですが)。

これは決して簡単なことではなく、十分な建築などの知識や投資経験が無ければ想定リスクの抜け漏れは多くなり、失敗する可能性は上がります。ゆえに不動産投資初心者のうちは焦らずに勉強から入り、複数の物件を内覧しながら目を養いつつ徐々に購入検討を進めていくと良いでしょう。

リノベーションや修繕の手間と費用がかかる

ボロ戸建が安くなる最たる理由として、修繕が必須である、という部分が挙げられます。屋根や外壁が吹っ飛んでしまい、廃墟のような状態になってしまった物件が売りに出されていることもあります。

雨漏りがあったり、傾いていたり、床が凹む箇所があったり、シロアリが巣食っていたり、キッチン台がどす黒くなっていたり、水道管から水漏れしていたり、壁紙が剥がれていたり、砂壁から砂がボロボロ零れ落ちていたり…と、修繕やリノベーションが必要になる部分が多数存在する場合がほとんどです。

中には修繕不要でそのままでも貸せる戸建が格安で売られているケースもありますが、基本的に即売です。加えて、そういった物件でもキッチンやお風呂、壁材など様々な内装・設備が古臭く、相場より安い家賃でなければ客付けが厳しいため、リノベーションが求められます。

これらについてもリスク精査と同様、どんな修繕が必要か、家賃を取るためにどのようなリノベーションをすれば良いか、結果としてどれくらいの利回りにできそうか、といった内容を精査し、工事の見積りと発注も行う必要があるなど、手間のかかる箇所であると言えます。

公開物件はすぐ売れてしまい買いづらい

先述の通り、ボロ戸建で見込みのあるものは、ポータルサイトに掲載されたらその日のうちに買付が入り募集を終了してしまうことがザラにあります。そのため、「購入できるだけの現金」「情報を見たらすぐ内覧に行けるフットワーク」「瞬時にリスク精査ができる能力」そして即断即決に伴う胆力が求められます。物件情報を日々チェックすることも欠かせません。

事業規模の拡大にはあまり向かない

ボロ戸建投資は格安の物件を現金メインで購入し、月数万円の賃料を受け取るという手法です。そのため、数千万円の融資を引いてアパートを購入するといった手法に比べると、事業規模を拡大できるスピードはどうしても劣ります。

事業規模を拡大することが必ずしも良いことではありませんが、例えば不動産投資でアーリーリタイア(FIRE)を目指す方であれば、融資を受けて早く拡大する手法のほうが合っている可能性もあります。

どちらかといえば、ボロ戸建投資はリスクを抑えながら少しずつ家賃収入を積み増していく堅実なモデルのため、高額融資を受けるよりも安定した投資を目指す方向けだと言えます。

ボロ戸建投資の主なリスクと対策

ボロ戸建投資には数々のリスクが存在すると述べましたが、ここでは主なリスクと対策について解説します。リスクは他にも数々ありますが、中でもダメージが大きくなりがちなものを選定しています。

既存不適格・違法建築物件である

築古の戸建物件に多いのが、既存不適格物件と違法建築物件です。

既存不適格とは、法改正によって現行の法令に適さなくなった物件を指し、増改築や再建築の際に制限がかかります。建築基準法にかかる例が一般的ですが、事業用物件では消防法などの法令も関わってくる場合があります。

違法建築は、その建築(増改築含む)時点から法令に違反して建てられた物件を指し、行政から是正指導が入ることがあるほか、融資を受けることは困難になります。建築確認図面とは異なる仕様で施工しそのまま完了検査を通していない場合や、届出せずに行った増築により建ぺい率や容積率がオーバーしてしまった場合が違法建築となる典型例です。

既存不適格物件や違法建築物件は、物件の概要書や重要事項説明書などで明記されているため、そこで確認できます。しかし、たまに重要事項説明で初めて既存不適格や違法性があることを知らされるケースもあり、その場合はその場で契約手続きの撤回をすべきかどうかを判断する胆力も問われます(筆者も実際に経験しました)

既存不適格物件の数は多く、増改築をしなければ大して問題はないケースも多い一方で、違法建築物件はリスクが高いため注意が必要です。中には物件が危険な状態にあり、地震による倒壊リスクや火災などのリスクが高かったりする場合も考えられるため、よく確認しておきましょう。

危険性の高い擁壁や崖の上にある

擁壁や崖の上に建っている戸建物件は多いものです。しかし、特に築古戸建では、そうした物件は避けたほうが良いケースが多くあります。ものによっては崩落リスクが高いためです。また再建築時の造成費用も高額になります。

現代では擁壁にはきちんとした建築基準が制定されているのですが、古い擁壁ではその要件を満たしておらず、脆いものが多くあります。水抜き穴のないブロック積み擁壁や、触ると粉が落ちてくる大谷石擁壁などが典型例です。中には擁壁すら無いむき出しの崖の上に建っているボロ戸建もあります。

擁壁や崖が崩落すれば、当然上の建物も全壊するでしょう。しかし怖いのは、擁壁の崩落は基本的に火災保険では補償されず、家が壊れても保険金はもらえないということです。後には片付け費用や近隣への損害賠償費用だけが残ることになってしまい、今までの家賃収入が丸ごと吹っ飛びかねません。

擁壁や崖の上にある物件を選ぶ際は慎重に考え、なるべく法令に適合した新しい擁壁で、かつ盛り土の高さがそれほど無いものを検討するのが無難です。また、建物に傾きが生じていないかどうか、擁壁に亀裂が入っていないかどうか、などの点も確認しましょう。

屋根、柱、基礎などの躯体の劣化

戸建を構成する躯体である、屋根・柱・基礎の状態は必ず確認しておきましょう。これらは修繕に多大な費用がかかる場合が多いことに加え、そもそも修繕不可能な状態になっている物件もあるからです。

屋根が破損すれば雨漏りで柱や軸組がやられ、耐震性の劣化やカビの発生、水濡れによる壁紙の剥がれなどが生じます。特にトタン屋根や瓦は寿命が短かかったり破損しやすかったりするため注意が必要です。状態確認には実際に屋根へ登ってみる、もしくは業者に依頼するのがベストですが、ドローンで確認したり、軒天や破風の状態から判断したりする手段もあります。

柱はシロアリに喰われることでダメになるケースが一般的です。もし大黒柱をやられていた場合には建物倒壊の危険性がありますし、そうでなくても支柱にダメージがあるほど地震によるリスクは上がります。柱をコンコン叩いて空洞音がするかどうか、段ボールのようにスカスカになっている箇所がないか、床下も含め蟻道が無いかどうかを確認しましょう。

基礎は状態が悪ければひび割れが入ります。物件の外周をぐるっと回ってみて、基礎にひび割れがないかを確認する必要があります。小さなものなら問題ないケースが多いのですが、中に雨水が入るほどの大きさのひび割れや、横に入ったひび割れなどがあったら要注意です。

再建築不可・セットバック等の建築制限

既存不適格の一種なのですが、ボロ戸建によくあるのが、再建築不可もしくは建て替え時にセットバックが必要な物件です。これは物件の前面道路が基準を満たしているか否かで決まり、基本的に物件概要書と重要事項説明書には必ず記載がある(はず)のものですので、内容を含めよく確認しておきましょう。

再建築不可物件は基本的に担保評価が出ないため融資は厳しく、また建物が劣化して使えなくなってしまった場合でも建て替えが不可能なので、何とかリノベーションして使い続けるという選択肢を取ることになります。しかし、基本的に再建築不可物件には十分な接道が無いために車が進入できないので、施工費が高額になってしまうデメリットがあります。

またセットバックとは、建て替え時に全面道路の幅員を所定の広さぶん確保するため、土地の一部を道路として提供しなくてはならない制度のことです。これにより再建築時のプランに制限が出るほか、セットバックに必要な土地面積は資産価値に含まれないケースもあります。

まとめ

ボロ戸建投資は少額で始められて高利回りを狙える魅力的な手法ですが、リスクは多く、きちんと精査できなければ一発退場の可能性が高まるという危険性もはらんでいます。

ここ数年、ボロ戸建投資は多くの投資家から注目を浴びており、良さげな物件がポータルサイトに出るとすぐ売れてしまいます。本来であれば時間をかけてリスクを精査しなければ初心者の方には難しい投資ですが、残念ながらその暇がある物件は珍しいと言えます。

しかし、初心者でもきちんと不動産投資とボロ戸建投資についてあらかじめ勉強し、ある程度のリスクが精査できるようになれば、着手しやすく効率的な投資も狙えるため、取っ掛かりとしてチャレンジするだけの魅力はあると言えるでしょう。

タイトルとURLをコピーしました