社内通貨・ピアボーナス導入時の報酬設計の仕方・具体例

最近、企業のコミュニケーション活性化ツールとして社内通貨が話題になっており、特にメンバー間で感謝の言葉と共に報酬と交換できるコインを贈り合う「ピアボーナス」という仕組みが人気を博しています。

弊社でも簡単に社内通貨が導入できるツール「GIFT」を提供しているのですが、導入に際してみなさん一様に頭を悩ませるのが「どのような制度設計をすべきか」という点です。

難しい部分ではありますが、社内通貨・ピアボーナスで期待する成果を実現するためには、適切な制度設計、特に報酬体系の設計は欠かせないと言えます。

この記事では簡潔にわかりやすく、社内通貨・ピアボーナスの報酬設計の具体的な方法を具体例をもとに解説していきます。

 

社内通貨・ピアボーナスにおける報酬設計の重要性

社内通貨やピアボーナスを導入する際、それに伴う報酬システムをどう設計するかは非常に重要です。

なぜならこれらの制度は、主に組織のモチベーション向上や人事評価の最適化などに用いるものであり、メンバーに継続的に利用されるような適切なインセンティブが無ければ形骸化してしまう可能性が高いからです。

中には「口頭ではない形で感謝を気軽に伝えられる」という行為自体を面白いと感じ、自発的にコインを送付するメンバーもいると思いますが(弊社クライアントの中に実際に数人いらっしゃいました)、そうした方が多数を占めるという考えは現実的ではないでしょう。

そのため、メンバーに継続的に制度を使ってもらうためには、適切なインセンティブを定め、それを各位に周知させる必要があるのです。

「とりあえず入れてみよう」という考えでは、メンバーの時間的リソースを消耗するだけで終わる危険も生じてしまいます。

しかし一方、インセンティブは多すぎても少なすぎても良くないため、この点においても報酬設計を慎重に考える必要性が生じます。

少なすぎると当然、報酬付与によるモチベーションが薄くなり、制度が使われなくなってしまう懸念があります。

それに比べて「多すぎる報酬」は何が悪いのかピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、実は付与するインセンティブが多すぎると「モチベーションがインセンティブに引っ張られる」という事態が起こってしまうのです。

つまり、適切なインセンティブの下では安定的に制度が利用されるのに対し、一度に大きなインセンティブを与えてしまった場合には、「報酬欲しさに」制度を利用する心理に自然となってしまうのです。麻薬みたいなものですね。

この考えは心理学・行動経済学における「モチベーションのクラウディングアウト」というものです。

難しいのは「どれだけの報酬であれば多すぎる・少なすぎるのかは明確ではなく、さらに人によって基準が異なる」という点ですが、現実には1ヶ月に数百~数千円程度の報酬が生じるように設計している事例が多く、うまく社内通貨・ピアボーナスが機能しているようです。

 

社内通貨・ピアボーナスでの評価ポイントを定める

さて、社内通貨・ピアボーナスでの報酬設計を行うにあたっては、まず「なぜそれをやるのか」という目的から照らして、どの指標を評価ポイントとするのかを考える必要があります。

具体的には以下のようなパターンで評価する方法が考えられます。これらのうちいずれか、あるいは複合して導入することを検討すると良いでしょう。

 

受け取ったコインの量に応じて報酬を付与

最も分かりやすくてスタンダードだと思われるのが、各メンバーが受け取ったコイン(ポイント)を基準に報酬を付与する、というものです。

例えば、月間トップセールスを記録したAさんが他のメンバーから多数の祝福を受け、その月に合計3,500コインを受け取ったとします。これを1コイン=1円のレートに換算し、3,500円を次回支給分の給与に上乗せする、といった具合です。

「コインを受け取る=感謝を集める」行動にモチベーションが生まれるため、業務成績へのコミットや、他者への価値提供をベースにした思考の定着が期待できます。

 

送付したコインの量に応じて報酬を付与

また、各メンバーが送ったコインの量を基準に報酬を付与するパターンもあります。これにより「他人の良い所を見つけるのが上手な人」「他人を素直に褒められる人」にフォーカスが当たることとなります。

他メンバーとの業務上の接点が少なく相対的にコインを受け取りにくい立場のメンバーでも評価されやすくなるほか、素直さやコミュニケーション能力といった要素を把握するのにも役立ちます。

 

送受信されたコインの総量に応じて報酬を付与

各メンバーが送り合ったコインの総量を報酬の対象とする考え方もあります。これは社内通貨・ピアボーナス制度そのものが活発に使われるようになる効果を発揮します。

 

会社の求める基準達成により報酬を付与

メンバー同士がコインとメッセージを送り合うピアボーナスの概念ではなく、「会社の求める基準を満たした場合にコインを付与し、その量に応じて報酬を与える」という社内通貨の仕組みを用いることもできます。

受注1件につき〇〇コインを付与、有給消化率〇〇%以上で〇〇コインを付与、部門の予実達成率〇〇%以上で全員に〇〇コインを付与、といったイメージです。

従来の表彰制度に比べてより細かく達成基準を定義したり、また一つずつの報酬をプールして大きな特典と交換できたり、といった設計に繋げることができるでしょう。

 

社内通貨・ピアボーナス報酬付与の仕方

以上のように、社内通貨・ピアボーナスを導入するにあたっては「どの点を評価対象にし報酬を付与するのか」を考えることがまず大切なのですが、その次に「どのような形で報酬を付与するのか」を考えることも必要です。

以下では代表的な例を3つご紹介します。

 

給与(ボーナス)として支給する

最も簡単でわかりやすいスタンダードな方式です。1コイン=1円のようにレートを指定し、月々の給与やボーナスに反映させるという考え方です。

メンバーにとっては直接お金を受け取れるこの方式が一番報酬を活用しやすく、制度としても理解しやすいと言えるでしょう。

一方、お金はインセンティブとして飽きられやすい傾向がある点には注意が必要です。働いていれば毎月給与を貰えるため、お金というモノ自体に特別感を覚えることが難しいからです(数字だけですし…)

また、給与として支給する場合には給与規定などの変更が必要になる場合もある点に注意が必要です。

 

福利厚生のポイントとして支給する

また、受け取ったコインを福利厚生の特典に使える形にすることも一般的です。カフェテリアプランと同様のイメージで、メンバーは貯まったコインを旅行や食事券など、好きな特典と交換することができます。

特典を用意する手間はかかりますが、数が多いほどメンバーへの効用逓減を防ぐことができるほか、使い道が話題となってメンバー間の交流も増える期待があります。

 

個人で使える経費の利用枠を認める

他にも「コインを受け取ったぶん、特定の経費計上を認める」というやり方があります。

例えばコインの数量に応じて〇〇円まで基本的に自由に使ってもらい、それを福利厚生費で計上する、といった形です。上記のポイント制よりも柔軟な運用にすることが可能です。

また福利厚生費以外の経費枠を認める方法もあるので、社内通貨・ピアボーナス導入の目的に照らして検討することも可能です(クライアントさんに面白い活用をしている企業様がいらっしゃったりします)

 

まとめ

社内通貨・ピアボーナスを導入する際には、まず「導入の目的を明確にする」ことが欠かせません。

そして、それをもとに「目的達成のためには、どの指標をもって評価対象とするのか」「報酬はどのように、どれくらい支給するのか」を考える必要があります。

社内通貨・ピアボーナスのような、従来の業務フローとは独立した制度を新たに加える場合には、何よりもメンバーに使い続けてもらえることが大切になります。

報酬は多すぎても少なすぎても制度が十分に機能しなくなるため、その設計は慎重に行いたいところです。

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