2020年5月施行の改正資金決済法、仮想通貨(暗号資産)関連改正内容サマリー

hedge guide記事からの転載です。

3日、金融庁は2019年5月に成立した改正資金決済法等におけるパブリックコメントの結果を公表し、同時に2020年5月1日より再びとなる改正法を施行すると公表しました。今回の改正では仮想通貨に係る広告表示の規制や信用取引に関する規制等が明確に盛り込まれています。

この記事では、今回の改正において、一般の仮想通貨投資家に直接的な影響が生じ得る部分についての内容をまとめていますので、今後の参考にして頂けたらと思います。

※当方は法律の専門家ではありませんのであらかじめご了承ください。また記事中の見解については、法的な正確性及び妥当性を保証するものではありません。

 

1.今回の改正内容サマリー

金融庁の発表によれば、今回の改正法における主な改正等の内容は下記の通りとなっています。

 

(1)暗号資産交換業に係る制度整備
暗号資産交換業の登録の申請、取り扱う暗号資産の名称又は業務の内容及び方法の変更に係る事前届出等に関する規定を整備する。
暗号資産交換業者の広告の表示方法、禁止行為、利用者に対する情報の提供その他利用者保護を図るための措置、利用者の金銭・暗号資産の管理方法等、暗号資産交換業者の業務に関する規定を整備する。
取引時確認が必要となる取引の敷居値の引下げを行う。

(2)暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引に関する規制の整備
暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引を業として行う場合における金融商品取引業の登録の申請、業務の内容及び方法の変更に係る事前届出等に関する規定を整備する。
金融商品取引業者等の業務管理体制の整備、広告の表示方法、顧客に対する情報の提供、禁止行為、顧客の電子記録移転権利等の管理方法等、暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引を業として行う金融商品取引業者等の業務に関する規定を整備する。
電子記録移転権利等に係る私募の要件、有価証券報告書の提出要件・免除要件、有価証券届出書等の開示内容等に関する規定を整備する。

(3)その他
「暗号資産」に関する用語の整理等のほか、投資信託の投資対象、金融機関の業務範囲等について、所要の規定の整備を行う。
金融商品取引業者の自己資本規制における暗号資産の取扱い等に関する規定を整備する。
暗号資産や電子記録移転権利等に関する監督上の着眼点や法令等の適用に当たり留意すべき事項等について明確化を図る。

引用:令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について

今回の暗号資産関連に係る法改正内容の全文は「仮想通貨交換業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」にて確認できます。

なお民間から寄せられたパブリックコメントについては、こちらの資料に質問内容と回答がまとめられています。仮想通貨交換業者などの事業者が業務における疑問点をヒアリングしているものですが、法改正の動きを詳細に把握したい方は合わせてご覧頂くと参考になるでしょう。

 

2.暗号資産交換業に係る制度整備の詳細

前項の(1)では、暗号資産交換業に関する登録申請の手続きや広告表示及び禁止行為の整備、交換業者における顧客資産の管理方法といった内容の改正が盛り込まれており、一般投資家にも大きな影響を与えるものが多くあります。

 

2-1.暗号資産交換業の登録申請等の手続きについて

仮想通貨取引所の運営ライセンス取得要件である「暗号資産交換業の登録申請」についてですが、今回改正では登録申請における事前届出に関する規定が整備され、また取り扱う暗号資産についての詳細明記や経営体制、資産管理の体制といった内容が申請書のフォーマットにも追加されました。

新しいフォーマットでは、取り扱う暗号資産一つごとにその詳細を記載させる形となっています。このことから推定できるのは、今まで日本国内で取り扱いがなかった仮想通貨へのデューデリジェンス(内容の精査)体制が整い、新規申請及び承認がしやすくなったのではないか、ということです。

最近、日本国内の取引所では取り扱いがなかったStella Lumens(XLM)やQuantum(QTUM)の新規取引がスタートしたことも踏まえると、今後は国内取引所で売買できる通貨の種類も徐々に増えていくことが期待できるのではないでしょうか。

 

2-2.暗号資産における広告や禁止行為について

今回の法改正では、今まで問題視されてきた仮想通貨や取引所に関する広告表示の規定や、禁止される行為についての規定が盛り込まれました。これらは株式やFXなど従来の金融商品・投資対象と同じように、誇大広告や明確な根拠のない将来性への言及の禁止、仕手行為やインサイダー取引の規制などを含んでいます。

暗号資産(交換業)に関する広告については、価格変動リスクについての言及、ユーザーの誤解を招くような表現、実際よりも良く見せるような表現などが厳しく確認されることとなります。これは交換業者自らによる広告出稿のみならず、あらゆるメディア(特に個人アフィリエイターの勧誘方法は問題視されました)においても遵守が求められるものであると考えられます。

また、従来では法的に制限されていないことが課題であった相場操縦行為(仕手、風説の流布など)も禁止されました。これにより、特定の仮想通貨に関するデマを流して価格高騰を促したり、内輪の売買や見せ玉などで価格を吊り上げ一般投資家をはめ込む仕手取引が規制され、より健全に仮想通貨取引ができるようになります(※)。

※ただし、あくまで日本国内での法規定であり、各国で規制内容は変わります。ゆえに世界中で取引が行われる仮想通貨の性質上、相場操縦による大幅な価格変動リスクは依然として存在し、今回の法改正における当該リスクの軽減効果は限定的だと考えられる点は留意しなければなりません。

 

2-3.暗号資産交換・管理業者における顧客資産管理について

今までも仮想通貨取引所などでは顧客資産の分別管理が図られ、事業者による顧客資産の不正な流用防止やデフォルトリスクの削減に繋げられていましたが、今回の法改正では顧客の金銭の信託に関するルールや暗号資産の管理方法に関するルールの明文化が行われ、より厳格になりました。

顧客の暗号資産はインターネット非接続のハードウェアウォレットやペーパーウォレットなど安全性の高い方法で管理することを主とし、セキュリティ性に劣るホットウォレットでの保管は、事業の利便性を担保するために必要な場合のみ、資産額全体のごく一部の範囲でのみ可能であるとされました。

さらに、上記のホットウォレット等で保管される仮想通貨については、その同種類・同量以上の通貨を「履行保証暗号資産」として事業者が保有しておかなければならない旨が盛り込まれたほか、顧客資産の分別管理においては監査義務があることも盛り込まれています。

仮想通貨取引所のハッキング被害は過去に何度も聞かれていますが、このリスクから顧客資産を守るために規制は少しずつ厳しくなっているのが現状です。ユーザーにとっては安全に仮想通貨の売買ができる環境が実現されてきたと言えるでしょう。

 

3.暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引に関する規制の整備

デリバティブ取引(先物取引)、信用取引についての規定が投資家に影響する箇所です。こちらも(1)と同様に業務管理体制の整備や広告の表示といった規制が敷かれたほか、仮想通貨が有価証券に該当する場合における有価証券報告書の提出等が規定されました。

信用取引においては、保証金やリスク、ロスカットルールについての説明が義務であることや、未決済勘定や評価損益についての情報提供を定期的に顧客へ実施する義務などが明記されています。

ここで投資家にもっともインパクトがあると思われるのが、「保証金割合(証拠金維持率)が50%を割った場合に取引が継続できないようにする措置を講ずる必要がある」という旨の規定であり、明確にロスカットラインが定められたということになります。

 

4.その他の規定について

今回の法改正により、仮想通貨の法的用語は「暗号資産」である旨が徹底されます(「仮想通貨」と呼称していた箇所がすべて「暗号資産」に修正)。また、仮想通貨交換業と管理業を明確に分ける記述も加わったことから、事業者ごとの規制区分の明確化が進んでいることもわかります。

また、投資信託や有価証券に関する記述において、「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値」や「電子記録移転権利」といった言葉が付記されるようになります。これはブロックチェーンベースのシステムも含む「デジタル証券」の仕組みなど、フィンテック領域の発展を反映する改訂であると言えるでしょう。

 

まとめ

今回の改正資金決済法における目玉は、「暗号資産にかかる広告や禁止行為の規定」「顧客資産の管理体制の整備」「信用取引における規定の整備」といった箇所にあると言えるでしょう。

かねてより問題視されてきたセキュリティや広告表示、相場操縦行為、レバレッジ取引による激しいボラティリティといった箇所にメスが入り、より健全に仮想通貨取引ができる環境が整ったと言えます。引き続き仮想通貨取引所等に対する要件は厳しいものとなったため、一定の基盤を有する大手企業資本のもとでの仮想通貨取引が基本になっていくでしょう。

仮想通貨界隈は未だ変化が激しく、またそもそも国家など従来の枠組みでは対応しきれないシステムであることも否定できません。そのため今後も日本や世界各国で様々な法整備が行われつつ、めまぐるしく状況は変わっていくものと思われます。

日本における仮想通貨取引は法整備の進展により様々な側面で安全性が高まってきているものの、依然として高いボラティリティやハッキングリスクについては否定できませんし、仮想通貨には株式や為替のように理論価格が確立されているわけでもありません。これらのリスクと引き続き付き合いながら、未来を期待する気持ちで仮想通貨投資を行うのが良いのかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました