紙より低コスト、手間いらず。仮想通貨で作る電子チケットの仕組みとは

最近はイベントやライブにおいて、紙ではなくQRコードを読み取って入場をするような電子チケットを導入するところも目立ってきました。特にビジネス系のセミナーやイベントなんかはPeatixやPassmarketといったサービスで申し込めるところが多くなっています。僕もしょっちゅう使っています。

こうした電子チケットの仕組みは、ブロックチェーンで導入することが可能であり、まだ研究段階ではあるものの、実際にプロダクトも登場してきています。

今回は、独自仮想通貨を発行することで作る、電子チケットの仕組みとメリット、課題について解説していきたいと思います。また、実際に開発されているプロダクトの紹介も合わせて行います。ブロックチェーン活用事例の一つとしてご参照くださいませ。

 

仮想通貨チケットの仕組み

仮想通貨を活用した電子チケットの仕組みは簡単。チケットに相当するオリジナルの仮想通貨(トークンと呼びます)を発行し、お客さんにトークンを提供します。そして入場時にそのトークンを指定のアドレスに送付することで入場が可能になる、というものです。

これ以外にも方法はあるのですが、基本的には上記のようなやり方で電子チケットの仕組みを構築することがスタンダードです(その他の方法で実装している事例は後述します)。

 

仮想通貨チケット導入のメリット

さて、ブロックチェーン技術を使った電子チケットには、果たしてどんな導入メリットがあるのでしょうか。

 

コストを低くできる

紙のチケットでは、数百枚~数万枚といった枚数をそれなりの用紙を使ってカラープリントしなくてはなりません。ラクスルで調べたところ、100部で1枚あたり90.6円というなかなかのコストです。

一方、トークンを電子チケットにする形であれば、そうした印刷費は発生しません。かわりにトークンを作成する費用がかかってくるものの、例えば誰でも簡単に仮想通貨が作れるNEMのブロックチェーンを活用すれば、せいぜい6,000円程度(2019/3/22時点のレート換算)でトークンを作成でき、自由に発行枚数を決めることが可能です。

また紙を補充する手間や印刷にかける時間、お客さんにチケットを郵送したりコンビニなどに情報を共有したり…といった様々な業務も削減でき、これもコスト削減に繋がります。

 

転売防止もしくは転売手数料を設定できる

これがブロックチェーンを活用することの強みです。従来の紙のチケットでは、ダフ屋や一般人による転売が問題視されてきました。正規価格でチケットが手に入りづらくなるからですね。

ブロックチェーン電子チケットでは、他人への転売(送付)を不可能にしたり、転売をする際に手数料を取ったりする機能を簡単に実装可能です。事例の項で触れますが、すでにその仕組みを組み込んだ電子チケットサービスも公開が始まっています。

このことで、ファンが公平にチケットを取得することができるようになります。人気アーティストのライブチケットなんかには助かる仕組みかと思います。

 

キャンセル、払い戻しも簡単

当日急に都合が悪くなってライブ等に行けなくなるお客さんも出てくることでしょう。現状、そうしたお客さんは、発券後のキャンセルや払い戻しを受けられないため、当日会場の前でチケットを買ってくれる人を必死に探したり、Web上で探した買い手と待ち合わせてチケットを渡すことになります。

しかし、トークンはWeb上で簡単に他人へ送付することができるため、従来の紙チケットとは異なり、実際に会わなくてもチケットを渡すことが可能になります。これならお客さんもある程度安心できるのではないでしょうか。

もちろん、これによってWeb上での転売も容易になるため、転売防止策を講じないか、あるいは別途仕組みを考えるかして実装する必要があるでしょう。

 

仮想通貨チケット導入の課題

では、お次は課題について述べていきます。

 

トークン送信ごとに少額の手数料が必要

お客さんが電子チケットを運営側指定のQRコード(ウォレットアドレス)に送信する際、数銭~数円程度の手数料が発生します。この手数料はETHやXEMといった仮想通貨での支払いになるため、お客さんは自分の仮想通貨ウォレットを持ち、手数料分の仮想通貨を所持していなくてはなりません。

NEMは今後のアップデートにおいて、発生する手数料を運営側が負担できる設定を追加するとのことですが、それが実装されるまではユーザー側の手間がかかってしまい、あまり使い勝手は良くないと言えます。特にITリテラシーの低いお客さんに仮想通貨をあらかじめ持っておいてもらうのは困難かもしれません。

 

データ送信の完了までに数秒以上かかる

また、仮想通貨による決済は一瞬で完了するわけではなく、通貨によりトークンの送信が完了するまで数秒~数分かかってしまいます。この待ち時間は現行のブロックチェーンの仕組み上発生してしまうもので、大量のお客さんの入場処理をしなければならない場合などは、この待ち時間が懸念事項となるでしょう。

 

仮想通貨チケットシステムの事例

さて、実際にこの仮想通貨チケットの仕組みを用いたサービスがリリースされています。LCNEM社が提供する「ちけっとピアツーピア」という非常に分かりやすい名称のものが代表的かと思います。

まだリリースされて日も浅いため実験的なレベルではありますが、こちらは上述した通常の仮想通貨チケットのスキームとはまた違うやり方で電子チケットシステムを実装し、「転売不可な電子チケットシステム」として提供を行っています。

簡単に言うと、「チケットをトークンではなく、ウォレットアドレス単位で見る」という形です。詳細は割愛しますが、形は違えど転売できないチケットシステムの導入を行うことができます。また、入場時にお客さんがトークンを送信する必要がない(運営側がQRコードを読み取って認証)ため、入場に必要な時間も2~5秒程度で済むでしょう。

今後、仮想通貨やブロックチェーンの知識がないユーザーでも利用しやすいサービスになれば、転売できない電子チケット発行サービスとして一定の支持を得られるかもしれません。

 

まとめ

仮想通貨を活用した電子チケットシステムについて解説しました。

紙ベースのチケットよりも低コストに運用を行うことが可能だったり、転売を防止できる一方、一般大衆向けに販売するには仮想通貨ウォレットや送金手数料分の仮想通貨を所持していないといけなかったり、入場時の読み取りに時間がかかってしまったりと、まだまだ非効率な部分もあるのが現状です。

今後は「ちけっとピアツーピア」をはじめ、よりアップデートされた便利な電子チケットシステムも出てくることでしょう。はたしてPeatix以上に便利で完成されたプロダクトが出てくるのか、という点はありますが…笑

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