ブロックチェーンでエスクローを導入すると良いことと検討事項を解説

ブロックチェーンを用いることで、仮想通貨の取引はもちろん、日本円での取引も円滑にすることが可能です。その取り組みの一つとして注目されているのが「エスクロー」。

今回は、決済機能のある自社サービスを運営する事業者の視点で、ブロックチェーンを活用したエスクローについてメリットと課題を整理します。

 

エスクローとは何か

エスクローとは、商品と代金の受け渡しを売り手・買い手の双方が安全に行えるために、第三者が取引の仲介に入って受け渡しを無事に完了できるようにする仕組みのことです。具体的には以下のようなステップを踏むことで、安全な取引を実現します。

  1. 商品の買い手がエスクロー事業者に購入代金を払い込み
  2. エスクロー事業者が商品の売り手に代金預かりを連絡
  3. 売り手が買い手に商品を発送
  4. 買い手がエスクロー事業者に商品の受け取りを通知
  5. エスクロー事業者が手数料を引いた額を売り手に払い込み

特に高額の取引においては、商品の売り手・買い手ともに「相手が詐欺師ではないか?」「きちんと代金を払ってくれるか?」といったことを気にすることとなり、取引をして大丈夫な相手かどうかを様々な手段で調査してから取引に踏み切ることとなります。

エスクローサービスを用いれば、信頼のある第三者が商品および代金の受け渡しを管理してくれるため、そうした取引リスクを抑えることが可能になります。与信が不安な新設法人との取引や、相手が見えないネット上での個人間取引といった際にはとても心強い味方になってくれるものです。

アメリカの不動産取引ではこのエスクロー制度を使って決済を行うことが一般的になっています。日本においては、ECサイトを開設できるサービス「BASE」や、クラウドソーシングの「ランサーズ」「クラウドワークス」といったサービス等で盛んに利用されています。

 

ブロックチェーンを使ったエスクローの仕組み

上述のようにエスクロー制度では、取引の仲介を行うエスクロー事業者に依頼を行い、一連の取引を進めていく流れとなります。ですが、この仕組みはブロックチェーンを用いることで、より便利なものにすることが可能です。

ビットコインなど複数のブロックチェーンにおいては、「マルチシグ」という機能が搭載されています。このマルチシグというのは「複数人による承認により初めて取引を行える仕組み」を指します。このマルチシグ機能を用いて、従来のエスクローよりも仕組みを簡単にすることが可能になります。

具体的には「買い手・売り手・エスクロー事業者」の三者に取引の承認権限を持ったウォレットアドレス(仮想通貨における口座)を作成し、買い手が仮想通貨をそこへ入金します。売り手が入金を確認したら、商品を発送し買い手からの送金へ承認の署名を行います。買い手は売り手から商品を受け取ったら、送金の承認を行います。

このような流れで三人中二人以上の署名が集まった段階で、買い手から売り手への取引が実行されることとなります。一方、取引が途中で不成立になった場合には送金をキャンセルすることで代金が買い手のもとに戻る、という仕組みです。

なお、買い手に商品が届いたにもかかわらず買い手が取引承認を行わない場合は、あらかじめ契約で決めておいた一定期間の経過後にエスクロー事業者が承認できるようにしたり、エスクロー事業者が売り手から商品の発送情報を共有してもらうようにしたりすることで持ち逃げリスクを押さえられます。

 

ブロックチェーンエスクローのメリット

さて、ではこのようにエスクローをブロックチェーンで実現しサービスに導入することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。

 

既存エスクローサービスより手数料を安くできる

まずは、ブロックチェーンを用いることで、従来のエスクローサービスに比べて手数料を安くできる可能性が高いという点が挙げられます。

従来であればエスクローにあたって日本円の入出金が生じるため、銀行所定の送金手数料(送付ごとに大体108~864円程度)が発生します。ですが、仮想通貨の送受信であれば、手数料はそれよりも安い水準に収めることが可能です(2019/3/14現在、ビットコインの送金手数料は約28円[参照元])。

また、ブロックチェーンを用いることでエスクロー事業者の事務負担も減るため、そのぶん事業者の受け取る手数料も安く設定されることとなります。また、後述しますが、ブロックチェーンに備わるスマートコントラクトという技術を使えばエスクロー事業者が無くてもエスクローサービスを導入することが可能なため、それも事業者の手数料を下げる要因となります。

 

スマートコントラクトで仲介を不要にできる

スマートコントラクトはイーサリアム等のブロックチェーンに搭載されている「契約の自動化」を実現するための機能です。具体的には、仮想通貨の入金などをトリガーにして、あらかじめプログラミングされた契約を自動で実行させることができます。ブロックチェーンに書き込まれた情報は作成者を含め改ざんが非常に難しく、また契約内容(ソースコード)は一般に公開されることとなるため、透明かつ安全に取引を行うことが可能になります。

この機能を用いることで、上記のようなエスクローの仕組みを自動化することが可能になります。これによってエスクロー事業者不在でも安全な商品の取引が可能になり、大幅な手数料の削減やエスクロー導入にあたってのコスト、手間の削減が実現できます。

 

エスクロー導入にあたって検討すべき事項

ユーザーの取引における安全性を確保し、サービス内での取引を活発にするためには、エスクローの導入は大きな効果を発揮します。一方で、エスクローを導入する際には気を付けなくてはならないポイントがいくつか存在します。

 

エスクロー事業者に適用される法規制

従来のエスクローは、安全な取引のために「第三者がお金を預かる」という仕組みでした。それはすなわち、その第三者たるエスクロー事業者が信頼できる存在でなければならない、ということになります。そのため、他人のお金を預かるエスクロー事業者には厳しい法規制が課されています。

具体的に対象となるのは「資金決済法」で、エスクローを行うには主に以下のような条件をクリアしなければなりません。

  • 資金移動業者としての登録
  • 最低1,000万円以上の供託
  • 行政庁による監督
  • 送金時の本人確認義務

1,000万円以上の供託金を積まなければならないのは、規模の小さな事業者にとってはハードルが高いと言えるでしょう。そのため、自社サービスにおいて自社でエスクロー事業を提供することは、それほど容易な話では無いと言えます。

なお、ブロックチェーンを活用したエスクローについては、こうした資金移動業者の規制が適用されるかどうか、明確な解釈はまだ出されていません。「取引に用いるお金を誰かがネコババしないかどうか」というのがこの法規制の本質ですので、それを基準にして行政庁および弁護士と協議する必要があるでしょう。

 

仮想通貨の激しい値動きを抑える仕組み

また、ビットコインやイーサリアム(ETH)といった仮想通貨は、外国為替などに比べて非常に値動きが激しいため、決済や企業経営においてはその高い為替リスクを負う必要が生じてきます。

事業を行う企業が仮想通貨の高い為替リスクをヘッジする手段としては「仮想通貨を入手後、すぐ日本円に換金する」もしくは「1枚1円で換金を保証する独自通貨でやり取りする」といったものが挙げられます。

後者は企業ポイントや電子マネーのような扱いとなります。つまり、ユーザーはサービス内で「1円=1〇〇コイン」のレートで〇〇コインを購入し、商品を買う際はその〇〇コインで支払う。そして商品の販売によって入手した〇〇コインは、同様のレートで好きな時に円へ替えられる、という仕組みを導入する形となります。メルカリポイントをイメージすると分かりやすいでしょうか。

この仕組みは仮想通貨そのままでエスクローを行うのと異なり、ほぼ完全に為替リスクを抑えることが可能です(仮想通貨の送金手数料のみ上下)が、電子マネー等と同様に資金決済法の「前払式支払手段」に該当することとなり、供託義務が発生したり、該当を避けるためにコインに有効期限を設けなければいけなかったりという制約が生じるため注意が必要です。

こうした仕組みを導入することで、仮想通貨の激しい値動きによるリスクを軽減することが可能です。ブロックチェーンによるエスクローを導入する際は、こうした仕組みを組み込めるかどうかを確認すると良いでしょう。

 

まとめ

ブロックチェーンにより、従来の仕組みよりも安価かつ簡単にエスクローサービスを構築できるようになりました。資金決済法などの規制はあらかじめ押さえておく必要がありますが、自社でエスクローの実施が可能であれば検討してみてはいかがでしょうか。

また、ブロックチェーンを用いたエスクローサービスについては、まだ具体的な法的見解が出ていない部分も見られますし、仮想通貨独自の為替リスクの高さなども存在します。

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