180日上限は「販売した日数」だけでは判断しにくいことがあります
住宅宿泊事業法に基づく民泊では、年間の宿泊日数に上限があります。原則として、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間で180日です。宿泊者がいる日を数える考え方であり、予約件数や売上額を数える制度ではありません。
ただし、自治体の条例で、営業可能な曜日、区域、期間などが追加で制限されることがあります。そのため、全国共通の180日だけを見ていればよいとは限りません。届出前と年度の切替時には、物件所在地の自治体に確認する必要があります。
実務では、OTA(予約サイト)の掲載・予約データをきっかけに、行政から日数の確認を受ける場合があります。キャンセルや変更の反映時期、複数チャネル間の連携、日付の集計方法などにより、OTA側の集計と事業者側の集計がずれる可能性があるためです。
照会を受けたこと自体は、直ちに違反が確定したことを意味しません。一方で、説明できる記録がなければ、確認に時間がかかります。重要なのは、上限を超えない運用と、日数の根拠を提示できる管理を平時から両立させることです。
最初に分けるべき3つの日数
日数管理が複雑になる主な原因は、異なる意味の日数を同じ表で扱うことです。少なくとも次の3つに分けて記録します。
- 販売可能日数:OTAで予約を受け付けていた日です。空室として公開していた日も含まれます。
- 予約日数:予約が成立した宿泊予定日です。キャンセル、日程変更、ノーショーの区別も残します。
- 実営業日数:住宅宿泊事業として実際に宿泊者を受け入れた日として、事業者が集計する日数です。
販売可能日数が180日を超えていても、直ちに営業日数が超過したとはいえません。しかし、予約日数や実営業日数が上限に近い場合は、公開停止の判断が遅れるおそれがあります。反対に、OTA上の予約日数だけを見ていると、キャンセル済み予約や別チャネルの予約を含めた正確な日数を把握できないことがあります。
予約台帳は「再計算できる形」で作成します
予約台帳は、行政への提出だけを目的にする書類ではありません。日数超過の予防、清掃手配、売上確認、近隣対応の履歴確認にも役立ちます。表計算ソフトでも作成できますが、複数OTAや直接予約を扱う場合は、PMS(宿泊施設管理システム)やサイトコントローラーのデータと照合できる形が望ましいです。
予約台帳に入れる基本項目
- 予約ID、予約経路、作成日
- 物件名・部屋番号
- チェックイン日・チェックアウト日
- 宿泊者名、宿泊者数
- 予約状態(確定、変更、キャンセル、ノーショーなど)
- キャンセル日とキャンセル理由
- 契約の区分(宿泊契約、賃貸借契約として管理する案件など)
- 日数集計への算入・非算入の判断と、その理由
- 関連する契約書、本人確認記録、入金記録の保管場所
特に重要なのは、後から数字だけを修正するのではなく、予約の状態変化を残すことです。たとえば、予約がキャンセルされたなら、元の予約ID、予約期間、キャンセル確定日が追えるようにします。OTAの画面表示は後日変わることがあるため、月次で予約一覧をCSVやPDFで保存しておくと確認しやすくなります。
日数の残枠は余裕を持って止めます
180日近くまで販売を続けると、日程変更や複数チャネルの反映遅れで超過するリスクが高まります。残日数が少なくなった段階で、販売可能期間を絞る運用が実務的です。
PMS等で集計を自動化するメリットは、複数チャネルを横断して確認しやすい点です。反面、初期設定を誤ると、誤った数字を継続して参照するおそれがあります。導入後も、月に一度は予約台帳、OTAの予約履歴、システムの集計値を照合します。小規模運営で手作業を選ぶ場合も、担当者以外が再計算できるルールを決めておくことが大切です。
マンスリー契約は「契約書があるだけ」では足りません
30日以上の滞在を想定する契約であっても、契約書の表題だけで宿泊か賃貸借かが決まるわけではありません。実態に応じて判断されます。賃貸借として扱えるかは、物件の使い方、契約条件、サービスの内容、地域の運用などに左右されるためです。
賃貸借として整理する場合は、契約期間、賃料、目的物、使用目的、貸主・借主、解約条件、光熱費等の扱いを明確にした契約書を作成します。定期建物賃貸借契約を利用する場合には、契約書とは別に必要となる説明や手続もあります。契約類型に応じた要件を確認してください。
OTA経由の予約に別途賃貸借契約書を付けた場合も、当然に民泊の営業日数から外れるとは限りません。予約導線、予約時の表示、提供サービス、利用実態などを踏まえた確認が必要です。短い滞在を形式的に賃貸借とする運用は、説明が難しくなる可能性があります。
マンスリー契約を扱うなら、少なくとも次の証憑を同じ案件番号で保存します。
- 締結済みの賃貸借契約書と、必要な付属書面
- 借主の本人確認記録
- 賃料・保証金・光熱費等の請求書と入金記録
- 鍵の引渡し・返却記録
- 契約変更、更新、解約に関する記録
- 室内利用やサービス提供の内容が分かる資料
この整理には、照会時に説明しやすいメリットがあります。一方で、契約作成、本人確認、入退去管理の事務負担は増えます。長期滞在需要が継続的に見込めるか、通常の民泊運営と区分して管理できるかを検討して選ぶ必要があります。
行政から照会を受けたときの確認手順
照会を受けた場合は、電話口で結論を急がず、対象期間、対象物件、行政側が把握している日数、回答期限、求められる資料を記録します。そのうえで、次の順に確認します。
- 当該年度の予約台帳を固定し、対象期間の実営業日数を再計算します。
- OTAごとの予約履歴、キャンセル履歴、直接予約、PMSの出力を照合します。
- 重複予約、日程変更、キャンセル未反映、部屋の取り違えがないかを確認します。
- 賃貸借として管理した案件がある場合は、契約書と関連証憑を案件別にそろえます。
- 集計方法と差異の理由を、日付・予約ID・証憑番号で追える一覧にします。
- 不明点は推測で補わず、確認中である旨と回答予定を行政へ伝えます。
提出する資料は、求められた範囲に絞りつつ、数字の根拠が分かる順番に並べます。個人情報を含むため、送付方法やマスキングの要否も確認します。保健所や自治体によって確認方法が異なるため、過去の対応例だけで判断しないことが重要です。
物件を選ぶ段階から管理コストを見込みます
所有物件を民泊や長期滞在向けに活用する場合、想定売上だけでなく、日数制限と記録管理の負担を収支計画に入れる必要があります。民泊新法による運営は、旅館業許可による運営とは営業日数の前提が異なります。また、賃貸借へ切り替える方法も、空室期間、原状回復、契約事務、用途地域や管理規約などの条件で適否が変わります。
検討時には、自治体条例、賃貸借契約や管理規約、転貸可否、近隣対応、清掃体制に加え、「誰が、いつ、どのデータを確定するか」まで決めておくと実行しやすくなります。日数管理は事後対応ではなく、物件と運営方式を選ぶための基礎情報として扱うことが有効です。
民泊向けの物件活用や運営方式を検討する際は、条例、物件条件、収支、管理体制を分けて整理すると判断しやすくなります。必要に応じて、物件探しや活用方針の相談先の一つとして当社もご活用ください。
