日本でICO(仮想通貨での資金調達)は可能?検討方法と法規制を解説します

日本でICO(仮想通貨での資金調達)は可能?検討方法と法規制を解説します

新たな事業を立ち上げる際や事業規模を拡大しようとする際には、まとまった資金が必要となります。その際には融資を受けることや株式・社債の発行などを通じて資金を調達することが従来の手段でした。

しかし、最近では新たな資金調達手段として「ICO」を利用した資金調達を行う企業が出始めてきました。一方で、ICOは世界的に法的規制の強化が進んでおり、日本でもこれからのICO実施を一旦様子見としている企業も見られるようになりました。

なおICOとは「Initial Coin Offering」の略で、日本語では「新規仮想通貨公開」とされています。ICOは「仮想通貨を発行し、事業立ち上げや拡大などのための資金を調達する仕組み」となります。

株式を発行することで資金を調達する代わりに、仮想通貨を発行することで資金を調達するものと言えます。ICOは株式発行と異なり経営権を譲渡する必要がないほか、融資のように金利を含めた返済や抵当権を設定する必要もないため、フレキシブルな資金調達手段として世界的に注目を集めています。

しかし、フレキシブルな分、世界的にICOを騙った詐欺が横行したため、金融庁としても新たに規制を検討するなどして警戒している事実もあるのです。

そこで今回は、日本でICOを行うことは可能なのか、ICOに関しての法規制などを紹介していきます。

※こちらの記事は2019年5月執筆時点の法規制をもとに執筆しています。
※記載の内容に基づき事業を行ったことで生じた一切の損害について、合同会社むすびてでは責任を負いかねます。

 

日本でICOを行うことは可能か

結論から申し上げると、日本でICOを行うことは可能です。しかし、これは厳密に言えば「ICOを禁止する法律が存在しない」というだけです。実はICOを日本で合法的に行うためには、いくつかの課題をクリアする必要があります。

その点も含めた、ICOに関して確認すべき法規制などを以下で紹介します。

 

ICOに関して確認すべき主な法規制

実際にICOの実施を検討するに際して確認すべき法規制には、大きく2つのものがあります。ICOで発行するトークンが仮想通貨に該当するのか否か、そして仮想通貨交換業者として登録することが可能なのかどうか、です。

なお、ここで言うトークンは「イーサリアムなど既存のブロックチェーンを用いて発行した、管理主体が存在する独自の仮想通貨」という定義で用いています。管理主体は主にトークンを発行した企業となります(例:弊社独自開発のトークン「KanadeCoin」は合同会社むすびてが管理主体)。

 

仮想通貨に該当するか否か

まず確認すべきなのが、ICOで発行するトークンが仮想通貨に該当するか否かです。仮想通貨は、仮想通貨法とも呼ばれる平成29年4月の改正資金決済法のなかで「1号仮想通貨」と「2号仮想通貨」に分けられており、それぞれが定義されています。

 

1号仮想通貨

  • 物品やサービスの提供を受ける場合に、それらの支払いを行うために不特定の人に対して使用できる
  • 不特定の人を相手に購入や売却ができる財産的価値である
  • 電子的に記録されていて、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
  • 日本や外国の通貨や通貨建資産ではないもの
    資金決済法条文をもとに、弊社にて要約

1号仮想通貨には上記のような定義があり、該当する仮想通貨としてはビットコインがあります。1号仮想通貨は物やサービスの支払いに使え、多くの人が財産的価値であると認めると同時に、ドルや日本円と交換できる仮想通貨、ということなのです。

「オンラインゲーム内の通貨は仮想通貨ではないのか?」と思う方も多いかもしれませんが、ゲーム内の通貨は「そのゲームの中のみ」と使用範囲が制限されているので、不特定多数を対象とするものには当てはまらないため、仮想通貨には該当しません。

 

2号仮想通貨

  • 不特定の人を相手に、1号仮想通貨と交換することが可能である
  • 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

基本的には1号仮想通貨と共通しています。一番大きく違う点としては「不特定の人を相手に、1号仮想通貨と交換することが可能である」というもので、すなわち1号仮想通貨以外の仮想通貨が2号仮想通貨ということになります。

アルトコインと呼ばれる「ビットコイン以外の仮想通貨」が「2号仮想通貨」ということになるわけですね。

 

仮想通貨交換業者として登録が可能か

仮想通貨について、1号仮想通貨と2号仮想通貨が定義されていることを説明しました。その仮想通貨を自社で取り扱うためには仮想通貨交換業者への登録が必要となるのですが、仮想通貨交換業者へ登録するためには金融庁での審査をパスする必要があります。

なお、仮想通貨交換業に該当するかどうかは、資金決済法にて以下のように定義されています。

この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。
一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。

引用:資金決済法2条7項

上記に該当する場合、事業を行うのに仮想通貨交換業者の登録が必要になるのです。

審査は厳しく、仮想通貨の残高チェックが時間単位、仮想通貨担当の専属スタッフの配置、匿名性の高い仮想通貨の取り扱い禁止、資本金が1,000万円以上で純資産が負でない、などが審査の条件となります。これらをクリアすることができれば、仮想通貨交換業者として登録できる可能性があります。

 

ICO以外の仮想通貨による資金調達手段

上記のとおり、平成29年4月の資金決済法において、仮想通貨をめぐる法規制が強化されることとなりました。それによってICOの実施についても大きく規制がかかることになりましたが、今後もICOに対する規制はより厳しくなる可能性があります。

現状では、ICOを行おうと思っても仮想通貨交換業者への登録が難しいため、トークンを開発したとしても不特定多数の人に販売することは困難となります。

そこで、ICOを利用しなくても仮想通貨を資金調達に利用できる方法を以下でご紹介します(実施の際には法規制をよく確認し、弁護士や省庁と協議の上で行うことをおすすめします)。

 

自社持分トークンの売却

自社で開発したトークンをICOで販売するのではなく、トークンを仮想通貨取引所に上場させ、値段が付いたところではじめて自社持分を売却する、という手段があります。

トークンを開発してから、エアドロップ(無償でユーザーにトークンを配布すること)等のプロモーションを行いつつ集客したり、β版プロダクトの開発を進めたりしながらサービスやトークンへの期待を高めておき、仮想通貨取引所への上場後に取引が活発に行われる状況を作っていく、というのが流れとなります。

トークンの販売・資金調達までに時間がかかったり、通常のICOのように固定レートで販売するのではなく市場レートで販売することとなるため、あらかじめ調達額が分かりづらかったりするデメリットはありますが、仮想通貨発行による資金調達を考える時には、このスキームが最も現実的な手段の一つとなっています。

 

プライベートセールを実施する

また、不特定多数の人に対して仮想通貨を販売しない形であれば、仮想通貨交換業の登録がなくてもICOを行うことができます。具体的には、購入希望者を登録制とし、一部の特定の投資家のみにトークンを販売する「プライベートセール」の形を取ることになります。

登録制にあたっての細かい規制は特にありませんが、一般的によく見られるルールとして「最低投資額を設ける」「購入後一定のロックアップ(売却できない)期間を設ける」「身元確認(KYC)」といったものがあります。

こうした条件を付加することで投資家を限定し、不特定多数を対象としないICOが実施されるケースも増えてきました。

プライベートセールには元々の人脈や、投資してもらうための営業が必要になります。資金調達のために金融機関や投資家へ営業回りするのと似たようなイメージですね。

 

前払式支払手段(ポイント、電子マネー)としての発行

自社で開発したトークンが仮想通貨に当たる可能性があるものの、仮想通貨交換業者に登録することは難しい。そうした場合、電子マネーや企業ポイントなどと同様に、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するスキームを活用すれば、資金調達を行うことが可能です。

前払式支払手段とは、事前に現金を電子マネーに換金し(1ポイント=1円などの固定レートを設定)、現金の代わりに商品やサービスを購入できるシステムのことです。

つまり、電子マネーの代わりにトークンを発行し、事前に換金してもらうことで資金を調達することができる、というのが前払式支払手段のスキームです。

ただし、これは厳密には資金調達ではなく、あくまで「売上を先に貰う」プリペイド方式に過ぎないという点は考えておかなければなりません。

サービス終了後には同額のレートでポイントを円にして返済する必要があったり、場合によって預かり資金の一部を供託する義務が生じたりしますので、通常の資金調達とは異なる計画立てが必要になります。

ちなみに前払式支払手段については、「自家型前払式支払手段」と「第三者型前払式支払手段」に定義が分かれています。

 

自家型前払式支払手段

自家型前払式支払手段は「発行者と使用者の間でのみ使用が可能」となっているものを指します。

分かりやすいのがオンラインゲーム内での課金システムです。ゲーム内のみで利用でき、ゲーム利用者とトークン発行者である運営との間でのみ支払いが成立するため、自家型に該当します。

自社サービス専用のトークンを発行し販売する形だとこちらに該当することになります。

 

第三者型前払式支払手段

第三者型前払式支払手段は発行者と使用者の間のみではなく、他での支払いなどが可能となるものです。これには電子マネーが該当するので、例えばSuicaなどをイメージして頂けると分かりやすいでしょう。

なお、第三者型前払式支払手段に該当するトークンは、財務局へ申請を行い登録された場合のみ発行することができます。

 

有価証券としての発行

「有価証券」と言うと株式や債権などをイメージする方が多いでしょう。広義で言うと、有価証券とは「財産(経済的価値)に関する権利や義務を証明するもの」を指します。つまり有価証券を所有していることは、配当や代替的な利益を受ける権利があるということになります。

有価証券としてトークンを発行する場合には、金融商品取引法に従う必要があります。金融商品取引法の中には第一項と第二項があり、第二項は比較的に緩い規制となっています。第一項有価証券については厳しい規制が課されており、第1種金融商品取引業者への登録が必要となります。

有価証券としてのトークン発行は第一項有価証券に該当するため、ICOよりも法規制は厳しくなります。既に金融商品取引業者である事業者が、従来のシステムではなくブロックチェーン上で有価証券を発行したいと考える際には、このスキームが検討に上がることとなるでしょう。

 

まとめ

以上、日本におけるICO関係の法規制を解説しました。

日本でICOを行う場合はまず、発行するトークンが仮想通貨に該当するかを確認しなければなりません。仮想通貨に該当するのであれば、仮想通貨交換業者として登録が必要となります。もし仮想通貨交換業者としての登録が難しい場合は、仮想通貨に該当しないトークンを発行する必要があります。

現状ではスタートアップ企業がICOを行うためには、仮想通貨交換業者への登録審査は非常に厳しいものとなっています。その背景には、ICOを詐欺目的で利用する案件が相次いでおり、金融庁としても一般の利用者を保護するために制限や規制を検討している、ということがあります。

この傾向は世界的なもので、各国で法規制が進んでいます(ちなみに私もICO投資で詐欺に遭ったことが何度かあります…)。

そういった現状から、ICOが難しいと判断した場合は、上場後に自社持分を売却するスキームや、前払式支払手段や有価証券としての発行を活用して、トークンを用いた資金調達をすることもできます。

ただし、それぞれにメリット・デメリットがあり、法規制も異なるので、事前によく弁護士や関係省庁と協議を行う必要があります。

日本でICOを行うことは可能ですが、「禁止はされていない」というだけで、実際にICOを行うためのハードルは高いものとなっています。そうした現状を踏まえた上で、資金調達のためにICOを利用するのかどうか検討する必要があるでしょう。

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