中央集権・非中央集権プロジェクトそれぞれのメリットとデメリット

中央集権・非中央集権プロジェクトそれぞれのメリットとデメリット

Hedge Guide記事からの転載です。

ビットコインの誕生を皮切りに、主にブロックチェーン業界で注目され始めた「非中央集権」という概念があります。これまでにその言葉を聞いたことのある方も多いでしょう。

政府や企業といった、ある仕組みの運営母体を担う組織を持たず、ピアツーピア(個人間)でその仕組みを共同運営するというものが非中央集権の思想であり、これに則って運営されるプロジェクトは、中抜きゼロによる低コストの実現や透明な意思決定、破綻によるプロジェクト消滅リスクが無いといった観点で大きく注目を得ています。

しかし一方、非中央集権型にもデメリットはあり、従来の中央集権プロジェクトには対抗できない部分もあるのです。そこで今回の記事では、中央集権・非中央集権プロジェクトそれぞれが有するメリットとデメリットをまとめました。双方の良し悪しを比較しながら投資するプロジェクトを検証できるようにして頂ければ幸いです。

1.中央集権プロジェクトのメリット

非中央集権という概念に対して用いられるようになった中央集権という言葉ですが、これはいわば「明確な事業主体が存在する、通常のビジネスモデル」のことを指します。ここでは非中央集権のプロジェクトと比較した際の、中央集権プロジェクトのメリット・デメリットについてまとめます。

 

1-1.意思決定スピードが早い

中央集権型の大きなメリットは、意思決定プロセスや意思決定者が明確かつ限定されていることから、意思決定に至るスピードが早いということです。特に新たに事業を立ち上げたスタートアップ企業などの小規模な組織では、意思決定が非常にスピーディになります。

現代社会はVUCAとも呼ばれる、非常に不安定で様々な物事やトレンドが急速に変化する環境になっています。ことビジネスにおいては影響が顕著であり、意思決定プロセスが肥大した旧来の大企業や公的機関ではそのスピードに付いていけなくなってきた、という指摘もなされる状況です。

そのため、組織の意思決定スピードが早いということは、そのぶん現代の環境やユーザーニーズに適応し、将来にわたって生存する会社・プロダクトを提供できる実力を有することにも繋がるのです。

後述しますが、非中央集権のプロジェクトではどうしても意思決定プロセスが重くなりがちなため、この点はビジネスにおいては望ましくないと言えます。シリコンバレーなどのスタートアップ企業が怒涛のスピードで事業を展開し、どんどん世の中を便利にするプロダクトをリリースしている状況を鑑みれば、中央集権型のプロジェクトが世間の主流である状況は揺るぎがたいと思います。

 

1-2.意見の対立による分裂の懸念が小さい

また、意思決定者が決まっており、意思決定プロセスも明確であることから、意見の対立によるプロジェクトの分裂や解散といった出来事には繋がりにくいという点もあります。もちろん会議中の対立や、株主VS取締役会の構図が生まれることなどはありますが、基本的には一枚岩としてプロジェクトを進めるべく議論し、一つの方向に結論を収れんしてアクションへと繋がります。

この点、非中央集権プロジェクトを要とするブロックチェーンでは、例えばイーサリアム財団の意思決定に異議を唱えたメンバーが分裂し、新たにイーサリアムクラシックを立ち上げたり、ビットコインのスケーラビリティ問題への対処方法を巡って意見が分かれた結果、ビットコインキャッシュなど様々なフォークコインが誕生したりした背景があり、大きく状況が異なると言えます。

ビットコインキャッシュやイーサリアムクラシックも一定のユーザー数を確保できていることを鑑みると、必ずしもプロジェクトの分裂自体が悪いというわけではありません。しかし事業の観点で言えば、分裂によって人的リソースが分散されてしまうぶん、一つひとつのプロジェクトの成功確率は下がってしまうと考えられます。

元の企業に生じる、分裂による欠員を補充するための採用コストや事業計画の見直し、社内の雰囲気の建て直しといった様々な負担を考えても、中央集権型のほうがそれらのリスクを低減できるアドバンテージはあると言えるでしょう。

 

2.中央集権プロジェクトのデメリット

対して、中央集権プロジェクトのデメリットについても解説します。

 

2-1.母体の破綻による投資価値毀損の可能性がある

これが中央集権型の主なリスクの一つであり、非中央集権という概念が注目を集めた理由でもあります。

中央集権プロジェクトにおいては運営権が運営母体そのものにあるため、例えば母体企業が破産し事業譲渡先も見つからなかった場合には、これまで進めてきたプロジェクトは消滅してしまいます。それに伴い、供託などの資産保全措置が講じられていなければ、その企業が約束していた資産の価値(企業の独自ポイントなど)も消滅してしまいます。

破産に伴う資産の払い戻しを受けられなかった場合、債権取り立てのために訴訟を提起しなければならない可能性もあり、負担は大きくユーザーにのしかかることになります。

なお、母体が破産したとしても事業譲渡に成功していればプロジェクトの運営は続くと考えられますが、企業経営が破綻している状況を鑑みると、譲渡はそう簡単ではないことが分かります。いつサービスが終了するか分からず、元本消失リスクも抱えるのが中央集権プロジェクトのデメリットとなります。

 

2-2.意思決定や組織へのガバナンスにリスクがある

また、意思決定者が限定されていることはスピード感に繋がる一方、十分な監査機能がなければ組織が腐敗してしまう可能性もはらんでいます。トップが私利私欲のために非合理な経営判断を行い、事業を傾かせる話は昔から聞かれるものです。

近年こそコーポレートガバナンスやESG投資といった概念も広まり、大企業を中心に経営の透明性が確保されてきているものの、ブラック企業という言葉が未だ頻繁に用いられる現状を考えると、やはりプロジェクト運営母体のガバナンスに対するリスクは織り込む必要があるでしょう。

 

2-3.ユーザーの不信感に配慮する必要がある

上記で触れたガバナンスへのリスクは、ユーザーに運営母体に対して不信感を抱かせるリスクとも直結します。最近でも役員個人への過剰な利益移動などが大きな批判を呼んだ事例や、経営者が逮捕される事件などが起こっていますが、その結果いずれの企業も大きく株価を下げ、世間の評価を落としてしまいました。

ユーザーに支持されないプロジェクトが長続きするのは難しくなります。そのため、適切なガバナンスが効かない組織である場合は、そのようなレピュテーションリスクも同時に抱えることとなります。真摯な態度かつユーザーや社会によく配慮した事業活動が必要になるのです。

 

3.非中央集権プロジェクトのメリット

では、ブロックチェーン業界を中心に注目を集める非中央集権プロジェクトについて、まずはメリットから見ていきます。

 

3-1.意思決定が民主的で透明である

取締役会など限られたメンバーにおいて意思決定が行われる中央集権型と異なり、非中央集権のプロジェクトでは意思決定権が分散されています。いわば直接民主主義政治のような形で、多数のユーザーによる投票などの合意形成を通じて最終的な意思決定が行われます。

この民主的な意思決定を行うにあたっては、万人に情報公開を行う必要性が生じます。多くのブロックチェーンプロジェクトにおいては、システムの中身であるプログラミングコードを外部に一般公開する「オープンソース」という形態を取ることでこれを実行しています。

こうした形を取っているため、非中央集権プロジェクトは非常に透明性が高くなっており、各ユーザーは意思決定の過程まで明確に把握することができます。この点における安心度は高いと言えるでしょう。

 

3-2.意思決定や組織に対するガバナンスが図れる

上記の透明性により、非中央集権プロジェクトでは運営や開発に携わるメンバーに対して適切なガバナンスが図られます。各ユーザーに開発状況や意思決定がガラス張りになるため、不正はすぐに発覚・追及されるほか、仕事をサボっていた場合にも叱責や不信任決議を受けることとなります。

中央集権型プロジェクトの運営母体が非上場企業であった場合には、上場企業には義務付けられる監査などを行っていない企業が多いため、ガバナンスの観点で言えば非中央集権型の採用は有効です。

 

3-3.運営者の破綻によるプロジェクト停止の危険性が低い

非中央集権プロジェクトはオープンソースで行われることが一般的であり、またユーザー参加型の民主主義的な意思決定プロセスを採用していることから、もし現状の運営が破綻したとしても、新たに運営メンバーになるユーザーが現れ、事業を継承しやすいというメリットがあります。

通常のプロジェクトであればソースコードは非公開のため、運営母体が破産してしまえば、事業あるいは会社が買収されない限りはそのプロジェクトが再び日の目を見ることはまずありません。

しかし非中央集権プロジェクトでは基本的に誰でもソースコードを入手でき、コードの編集(リクエストの送信)を行えたり、ビットコインキャッシュのような「別バージョン」のプロジェクトを立ち上げられたりします。万が一運営チームが破綻しプロジェクトデータを稼働するサーバーが消失したとしても、他のサーバーにソースコードをアップロードしデプロイし直せば、再びプロジェクトを稼働できるのです。

さらにブロックチェーンプロジェクトで言えば、ブロックチェーン上に書き込まれたデータは削除・改変することができないため、例えプロジェクトに使用しているサーバーが消失したとしても、今までの記録が消えるということも原則無いのです。

 

4.非中央集権プロジェクトのデメリット

次に非中央集権プロジェクトのデメリットについて解説します。

 

4-1.意思決定スピードが遅い

上述の通り、非中央集権プロジェクトでは意思決定者が多く、投票制などの民主的な意思決定プロセスを経る必要があることから、中央集権プロジェクトに比べてどうしても意思決定スピードは遅くなります。そのため急速な事業成長を目指すスタートアップ型のビジネスやプロジェクトには不向きです。

ビットコインなどの仮想通貨は、いわばお金と同等の「社会的インフラ」としての側面が強いものです。また特定の個人や起業が事業を成長させ大きな利益を目指すものでもありません。そのため、全員参加型でじっくり、民主的な意思決定を行って徐々にインフラを整えていく非中央集権型を採用できるのです。非中央集権を採用できるプロジェクトの性質は限定されると言えます。

 

4-2.議論がまとまりにくく分裂の可能性もある

これは意思決定が遅いという項目にも被るのですが、どうしても意思決定権者が多くなる以上、議論にはまとまりが付きにくくなっています。これをある程度回避するために、ブロックチェーンを活用した「改ざんできない投票」を行うなどして意見をまとめる形が多くなるのですが、それでも議論が割れ続けることもあります。

プロジェクトを前に進めるには、必ず何かしらの意思決定を行い、その方向に進まなければなりません。例え議論が割れていても、どこかのタイミングで決断し前に進まなければならないのですが、その結果としてビットコインやイーサリアムのハードフォークのような出来事に繋がることもあるのです。

分裂は上述の通りプロジェクトの進歩に必要な人的リソースが削がれてしまうデメリットや、チームの仲違いにより生じるレピュテーション悪化のリスクを持ちます。主権が分散しており自由であるからこそ一つの方向に団結して進んでいくのは容易ではなく、これも従来のビジネスの手法とは相容れない(≒革新的な)特徴となっています。

 

まとめ

上記の比較をまとめると、中央集権型と非中央集権型のメリット・デメリットは「意思決定プロセスの違い」に拠るところが本質であると言えるでしょう。

従来のビジネス手法である中央集権型のプロジェクトであれば、役員などの決まった数名がスピーディに意思決定を行い、柔軟かつ機敏に事業をグロースさせることができる一方、プロジェクトの運営母体が破綻した場合にはサービスがそのまま消失してユーザーにしわ寄せがいく可能性が相対的に高くなります。

他方、ブロックチェーンプロジェクトで多く採用される非中央集権型モデルでは、投票などによる直接民主政治的な意思決定により、スピードは遅くとも透明性の高い意思決定ができることが特徴です。また、オープンソースとユーザー参加型という観点から、運営陣の交代やプログラムの移管が容易なため、プロジェクトの持続性の高さが魅力になります。

このように中央集権プロジェクト・非中央集権プロジェクト双方に良し悪しがあり、また現実には明確に分類して定義するのが難しいプロジェクトも多いため、一概に「中央集権だから・非中央集権だから良いよね」という話はできないのです。

今後、あなたが仮想通貨やブロックチェーン企業などに投資を検討するのであれば、こうした考え方は投資判断の一つの参考になるかもしれません。それぞれの良し悪しを理解した上で、フラットにプロジェクトの可能性を検証頂ければ幸いです。